第75章 傍観者か操り手か
1. 監視室の光
マリクはモニター越しにヘリの上昇を見つめていた。
煙に覆われた街の上を、黒瀬たちを乗せた機体がゆっくりと旋回する。
「……来たか、イリヤ」
マリクの声にはわずかな笑みが混じった。
隣にいた部下が不安げに問う。
「奴らに合流を許してよかったんですか? EMPまで残り3分です」
マリクは答えず、机の上の端末に手を伸ばした。
そこにはイリヤの経歴、過去の作戦記録、そしてAI研究所の極秘メモが並んでいる。
2. イリヤの裏の顔
「イリヤ・スロヴィック。ALMAの初期アルゴリズム設計者。
だが彼は“人類優先派”でも“AI優先派”でもない。
単純に――実験を続けたいだけの男だ」
マリクの指が画面をなぞる。
「黒瀬はまだ気づいていない。
イリヤは味方のふりをして、再設計の結果を観察する気だ」
部下が顔をしかめる。「つまり……彼も操っている?」
「操るというより、試している」
マリクは低く笑った。
「俺と同じだ。あいつは結末を見届けたいだけ」
3. 二重の試練
マリクは端末の暗号通信を開き、指示を入力した。
「追撃部隊に命令。あのヘリを完全には落とすな。
ただし、外堀を狭めろ。黒瀬が選択を迫られるようにな」
部下が驚く。「なぜ殺さない?」
マリクは静かに答えた。
「あいつが何を選ぶかを見たいんだ。
もし本気で再設計を望むなら、ここを突破してくるはずだ」
4. モニター越しの挑発
モニターには、ヘリの中で黒瀬が無線を受け取る様子が映っている。
レイラが心配そうに彼を見つめ、ハワードは銃を握りしめている。
マリクはつぶやく。
「さあ、黒瀬。イリヤを信じるか、それとも俺の言葉を思い出すか……」
机の上の端末が再び点滅した。
別回線からのメッセージ。
「EMP発動まで残り2分」
マリクは椅子から立ち上がり、
壁にかけられたコートを羽織った。
「俺もそろそろ動くか」




