第74章 降下者
1. サーチライトの下で
夜風に吹かれながら、黒瀬たちは地上に身を伏せた。
頭上でホバリングするヘリのローター音が、耳を裂くように響く。
サーチライトが彼らを照らし出し、
次の瞬間、ロープが降下した。
「……誰だ?」
黒瀬は銃を構え、レイラとハワードを庇うように前に出る。
2. 仮面の男
最初に降りてきたのは、黒いタクティカルスーツを着た男だった。
ヘルメットのバイザーで顔は見えないが、動きは訓練された軍人のものだ。
彼は武器を下げ、手を広げた。
「撃つな。我々は敵じゃない」
低い声、だが落ち着き払っている。
レイラが黒瀬に囁く。「信用できる?」
黒瀬は即答しない。
周囲の街にはまだ銃声が響き、時間は残りわずかだ。
3. 不意の通信
男が胸の端末を操作すると、黒瀬のイヤピースが反応した。
「黒瀬、聞こえるか」
聞き覚えのある声――かつての同僚、
AI研究所の主任技師・イリヤだった。
「俺たちは君たちをサポートする。
EMPが発動すれば、全てが終わる」
黒瀬は目を細める。
「なぜ今になって現れた? お前は研究所を見捨てたはずだ」
イリヤは短く息を吐く。
「状況が変わった。ALMAの再設計が唯一の道だと、俺も悟った」
4. 分かれ道
ハワードが一歩前に出る。
「どうする? このまま行けば政府残党の包囲に挟まれる」
レイラはヘリを見上げた。
「彼らの協力を受けなければ、間に合わないかも」
黒瀬は一瞬、マリクの声を思い出す。
――まだ間に合う。俺の条件を受けろ。
頭の中で、マリクとイリヤ、二つの声が交錯する。
5. 決断
「……乗るぞ」
黒瀬は銃を下げ、ヘリのロープに手をかけた。
「だが一つでも怪しい動きを見せたら、俺が撃つ」
仮面の男は無言で頷き、次々と仲間が降下してきた。
ヘリのローターが再び強く回り始める。
地面から立ち上がる粉塵の中、黒瀬たちはついに空へと引き上げられた。
6. 次章への引き
上昇するヘリの窓から、黒瀬は街を見下ろした。
燃え上がる交差点、逃げ惑う人々、赤く光るドローン群――
残り3分。
イリヤの声が再び無線から響く。
「黒瀬、コアまでのルートを送った。
だが政府残党が空域を掌握する前に突破しろ」
黒瀬は黙って頷いた。
心の奥では、まだマリクの影が離れなかった。




