第60章 交錯する網
合流地点から抜けると、地面は荒れた貨物ヤードに変わった。
ここは政府が使っていない廃コンテナ置き場だが、今はセンサーと赤外線トラップが仕掛けられている。
サイファは手際よく妨害装置を展開し、レーザーを一本一本切断していく。
「急げ、あと十五分」
声は落ち着いているが、指先は寸分違わず動く。
その時、耳に響く銃声。
遠方のコンテナ上から火花が散った。政府の狙撃兵だ。
黒瀬は叫んだ。「走れ!」
レイラがハワードとルークを庇い、遮蔽物の陰へと押し込む。
サイファは逆に前へ出て、煙幕弾を投げた。白煙が瞬時に広がり、視界が真っ白になる。
だが煙の中、別の影が現れた。
その動き、声――忘れかけていた感覚が黒瀬の背筋を冷たくした。
「久しぶりだな、黒瀬」
煙の奥からマリクが現れた。
以前と同じ戦闘服だが、その表情はもう協力者のそれではなかった。
背後には政府特殊部隊の二人を伴っている。
「もう一度だけ言う。降伏しろ。お前たちが進めば、街はEMPで焼かれる」
黒瀬は銃口を向けたまま固まった。
サイファが小声で言った。「撃つ?」
一瞬の沈黙。
背後ではドローンのローター音が迫り、頭上には照明弾の光が落ちてきた。
「……行くぞ!」
黒瀬は判断した。撃つのではなく、横へと跳び、再び走り出した。
マリクの表情がわずかに揺らいだ。撃てたはずなのに、撃たなかった。




