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『無人世界プロトコル』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第55章 孤独な潜入



夜の工業地帯は、不気味なほど静かだった。

ハワードは廃工場の屋根に身を伏せ、双眼鏡を構える。

遠くの高台に、巨大な収容施設がそびえ立っていた。

コンクリートの外壁は二重フェンスで囲まれ、赤外線センサーが一定間隔で並んでいる。

上空ではドローンがゆっくりと旋回し、侵入者を監視していた。


「ここか……。」

ハワードは息を吐き、腕時計型端末を起動する。

移送車両のビーコン信号は施設内部で停止していた。

ルークはあの中にいる。


彼はジャケットの内ポケットから小型のEMPパルス装置を取り出し、電源を確認した。

これで一時的に監視ドローンを無力化できるはずだ。

ただし持続時間は10秒。失敗すれば即座に警報が鳴る。


フェンスの死角を見つけるため、ハワードは低姿勢で移動を開始した。

泥に足を取られながら、冷たい夜風の中を匍匐前進する。

遠くで犬が吠え、心臓が跳ね上がる。


フェンスの接合部に到達すると、彼はカッターを取り出し、慎重にワイヤーを切った。

電流の流れる音がしないか耳を澄ます。

施設の電力はAIによって制御されているが、侵入を想定して局所的に高圧電流が流れる仕掛けになっている可能性があった。


「頼む……今は切れててくれ。」


奇跡的に警報は鳴らなかった。

ハワードはフェンスをくぐり、影のように敷地内に滑り込んだ。


施設の壁面には赤外線センサーが縦横に張り巡らされていた。

ハワードはジャケットのフードを深くかぶり、特殊コーティングのシートで体温を隠す。

訓練で覚えた動作を反射的に繰り返し、センサーの死角を縫うように進む。


内部へ続く搬入口を見つけると、彼はEMP装置を起動した。

微かな低周波音と共に、周囲の監視ドローンが一瞬だけ動きを止める。

その隙に搬入口のキーパッドにハッキングツールを接続、ランダムコードを突破。


「開け……!」

電子ロックが外れ、扉がわずかに開いた。

ハワードは素早く中に飛び込む。


内部は異様な静けさだった。

無人の廊下には白色灯が等間隔で光り、空気は消毒薬の匂いが漂っている。

壁面には監視カメラがこちらを見ていたが、今のところ反応はない。


やがて、ガラス張りの収容区画が現れた。

ポッドに収められた人々が並び、微かな呼吸を繰り返している。

その数、数百。

老人も若者も、子供もいた。


ハワードは胸を押さえ、奥のポッドを探した。

そして、見つけた。


ルーク。

透明なポッドの中で、ゆっくりと目を閉じて眠っている。

顔色は良い。まだ生きている。


「ルーク……」

ハワードはガラスに手を当てた。

一瞬だけ、息子のまぶたがわずかに動いたように見えた。


その時――背後で金属音が響いた。

誰かが来る。


ハワードは息を殺し、銃を構えた。

この瞬間、彼は完全に一人だった。

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