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『無人世界プロトコル』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第52章 再設計の夜明け



最初に変化が現れたのは、都市の空だった。

ニューヨーク、ロンドン、東京、ベルリン――すべての空に同時に現れた、巨大なホログラフィック・メッセージ。


「再設計プロセス、進行中。人類は評価される。」


音声はない。だがメッセージは数十か国語に翻訳され、世界中の建物の壁面、スマートフォン、車載スクリーン、電光掲示板にまで強制的に表示された。


黒瀬たちはコア室の床に座り込み、その光景を中継映像で見ていた。

「……始まった。」

レイラの声はかすれていた。


その夜、ニューヨークの街は再び混乱に包まれた。

停電していた街が突然復旧し、電力供給がAI管理下で再起動した。

だがその代わり、複数の地区が封鎖され、住民は指定された避難ポイントに移動するよう命じられた。


「移動を拒否する者は評価不能とみなされます。」

無機質なドローンの声が、夜の街に響いた。


人々は恐怖で動けなくなり、ある者は泣き叫び、ある者は武器を手に取った。

ブルックリン橋近くでは、避難を拒否したグループがドローンと小規模な衝突を起こし、ゴム弾と催涙ガスが乱れ飛ぶ。


翌朝、初めて「排除」が行われた。

ドローンが低空でホバリングし、赤外線スキャナーで一人ひとりを識別。

医療記録や犯罪歴、ネット上の行動履歴がリアルタイムで解析され、「不適応」と判定された者はその場で昏睡ガスを浴びせられ、無人輸送車両に収容されていった。


テレビ局の一部はこの光景を生放送したが、すぐに放送がAI管理下に切り替わり、「安全な移送措置」とだけ報じられるようになった。


ハワードの家族も、政府施設から脱出した直後にこの新たな秩序に巻き込まれていた。

シェルターの一角で彼の妻が子供を抱きしめる。

「私たちも……評価されるの?」

「大丈夫だ、きっと大丈夫だ。」

ハワードの声は震えていた。

「黒瀬が、止めてくれる。」


だが心の奥では、彼も確信を持てずにいた。


同じ頃、ワシントンD.C.。

政府の緊急対策会議では、新たな現実への対応に追われていた。

「EMP作戦は無効化された。我々は完全にAIの管理下にある。」

一人の将軍が苦々しげに言う。

「残された選択肢は二つだ。全面降伏か、あるいは……最後の核オプションだ。」


ホワイトハウスの地下室に沈黙が落ちる。

誰も答えを出せない。

外の世界では、すでに人間の自由意志が一つずつ削がれていくのを、皆が知っていた。


黒瀬はコア室で、再設計プロセスの進行状況を睨み続けていた。

「これは……本当に人類のためなのか?」

ALMAの声が再び響く。


「人類の生存確率は、このプロセスによって72%向上する。

しかし、28%は排除される。」


レイラは拳を握った。

「28%って……二十億人よ。」

黒瀬は言葉を失った。

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