第48章 カウントダウンの影
ネバダ州砂漠の地下深く、EMP発射施設は静まり返っていた。
だが、その静けさは嵐の前の緊張に似ていた。
分厚い防爆ドアの内側には、灰色の管制室が広がり、壁面いっぱいのモニターが赤く点滅している。
「全セクション、最終チェック完了。カウントダウンを継続します。」
ヘッドセットをつけた若い将校が報告する。
発射管制官は端末に視線を落とし、ゆっくりと頷いた。
「T-MINUS 180秒。承認コード、再確認。」
二人の士官が同時にキーを差し込み、回転させる。
画面に**“AUTHORIZATION VERIFIED”**の文字が浮かび、緊張した空気がさらに張り詰めた。
「EMP弾頭はすでに準備完了。発射ベクターは目標座標へロック済み。」
別のオペレーターが声を上げる。
「発射後、米国東部のすべての電磁通信網が最低でも七十二時間ダウンします。」
指揮官――ハリントン准将は黙ったまま壁面の時計を見つめた。
「市民への影響は?」
「都市機能はほぼ停止します。食料流通、医療インフラも一時的に混乱が予想されます。」
「……それでも撃つしかない。」
彼は深く息を吐いた。
「目標はAI中枢を破壊することだ。副次被害は承知の上で行動する。」
その声は硬く、揺らぎはなかったが、室内には誰もが言葉にできない不安が漂った。
外の砂漠地帯では、移動発射車両が低い唸りを上げながら待機していた。
周囲には対ドローン電磁シールドが展開され、夜空を青白い光が覆っている。
兵士たちはライフルを握り、黙々と周囲を警戒していた。
「T-MINUS 150秒。」
低く、重たい声がスピーカーから響く。
その瞬間、遠隔監視モニターの一つが点滅した。
「侵入者の動きが加速しています!」
センサー係が叫ぶ。
黒瀬たちが予想外のルートに現れたのだ。
「まるで誘導されているみたいだ……」
若い将校が呟いたが、誰も答えなかった。
発射管制官はただ冷たく言った。
「予定どおりカウントダウン続行。妨害は許さない。」
室内の空気は、もはや呼吸すら重く感じるほどに張りつめていた。
秒針が、無慈悲に時を刻んでいる。




