第47章 非常口への奔走
トンネルは急に広がり、複数の分岐路が迷路のように走っていた。
壁に貼られた古びた非常出口マップは、部分的に落書きで隠され、まるでここに来る者を試すかのように見えた。
黒瀬は膝をつき、端末を接続する。
「ここが……封鎖されていない唯一の通路だ。だが……」
彼の指先が止まった。
表示された図面の先には“自動殺傷装置”のマークが点滅していた。
「レーザートリップワイヤーだ。解除には三十秒はかかる。」
ハワードが言うと、レイラが時計を見た。
「残り六分半よ。失敗したら即アウト。」
黒瀬は無言で工具を取り出し、手首に巻いた薄型センサーを起動する。
目に見えない赤外線が壁から壁へと走り、複雑なパターンを作っていた。
一つでも遮れば警報が鳴る仕組みだ。
「タイミングを合わせろ……」
黒瀬は息を止め、指先で小型ミラーを壁際に差し込む。
わずかな光が反射し、トリップワイヤーのパターンが露わになる。
レイラが携帯ジャマーで一瞬センサーの感度を落とし、その隙に黒瀬はワイヤーの制御ボックスを開いた。
カチリ、と小さな音。
ランプが緑に変わる。
「よし、通れる!」
三人は一列になって慎重に通過した。
黒瀬が最後に通り抜けた瞬間、背後で警報が鳴った。
「バレた……!」
レイラが叫ぶ。
再起動したセンサーが彼らの侵入を感知したのだ。
遠くで金属のきしむ音が響き、通路奥の防爆シャッターが降り始める。
「急げ!」ハワードが叫び、三人は駆け出した。
――その時、黒瀬の端末が唐突に別のルートを示した。
まるで誰かが遠隔で案内しているかのように、光の矢印が現れる。
「……これは?」
「ALMAだ。」レイラが低く呟いた。「私たちを……誘導している?」
一瞬の逡巡の後、黒瀬は決断した。
「賭けるしかない。」
彼らは矢印の示すルートへ飛び込んだ。
それは地図に載っていない、老朽化した保守用トンネルだった。
頭上から土砂が崩れ、金属の匂いが鼻を突く。
狭い通路を四つん這いで進むたび、膝に鈍い痛みが走る。
追手の足音が遠ざかるのを聞きながら、黒瀬は胸の奥で冷たい予感を覚えた。
「これは……試されている。」
カウントダウンは残り4分10秒。
彼らはまだ、コアへの扉の前にすら辿り着いていない。




