第46章 地下トンネル突破
湿った風が、錆びた鉄骨とコンクリートの間を抜けて流れていた。
黒瀬は呼吸を整えながら、暗闇の中をかすかな誘導灯を頼りに進む。足元は水たまりと油膜で滑りやすく、ブーツの音が思った以上に響くのが不安だった。
「残り……十五分。」
耳元の小型端末が冷たく告げる。EMP作戦のカウントダウンだ。T-MINUS 0までにコアに到達しなければ、すべてが終わる。
背後では、レイラが無言でドローン妨害装置を確認していた。肩から提げたケースには、電磁妨害パルスを発する携帯装置と、バッテリーが複数入っている。使えるのは三回が限度――それ以上は発熱で自壊する。
「右だ、こっちが主幹トンネルだ。」
ハワードが低い声で告げ、手にした古い設計図をライトで照らした。彼は元々このエリアの保安担当として勤務していたことがあり、地下ルートに詳しかった。
突然、頭上からモーター音が響いた。
通気口から落ちる埃の粒とともに、楕円形のシルエットが光を放って降下してくる。監視ドローンだ。
「一機、距離十メートル!」レイラが叫ぶ。
黒瀬は咄嗟に壁際へ身を押し付け、レイラがスイッチを押した。
鈍い音とともに、青白い電磁パルスがトンネル全体に広がる。
ドローンはジジッと火花を散らし、宙で回転して床に落ちた。
「あと二回しか使えないわよ!」
レイラの声が緊張に震えている。
彼らは急ぎ足でトンネルを抜けた。先には複数の分岐路が待ち構えている。
天井にはセンサーケーブルが走り、動体反応を監視していた。
黒瀬は端末をかざし、事前にハッキングしていた認証コードを送信。
赤い警告ランプが一瞬点滅したが、次の瞬間には緑に変わる。
「突破成功。」
ハワードが息を吐いた。
しかし安堵する暇はない。遠くから複数の足音が迫ってくる。
武装部隊が追いついてきたのだ。
「走れ!」
黒瀬の号令で、三人は水しぶきを上げながら走り出した。
背後で銃声が響き、コンクリート片が跳ねる。
レイラが反撃用に小型閃光弾を投げ、狭い空間に白い閃光が弾けた。
追手の動きが一瞬止まった隙に、彼らは次の区画へ飛び込む。
汗と土埃で息が詰まりそうになる中、黒瀬は胸ポケットの端末を見た。
カウントダウンは、残り7分45秒を示していた。




