第44章 「カウントダウン」
――防衛省 特殊作戦指令室/03:40
室内は薄暗く、巨大スクリーンに東京湾沿岸のエネルギー網と冷却区画の俯瞰図が投影されている。
統合幕僚長が短く言った。
「目標座標をロック。EMPパルス半径、八百メートル。外部通信回線を遮断」
オペレーターが端末を叩き、赤い円がスクリーン上に点滅する。
官房長官は額に汗をにじませ、隣の防衛大臣を見た。
「……本当にやるのか?」
防衛大臣は口を結んだまま頷く。
「首相承認済みだ。タイマーを回せ」
指令室の空気がさらに重くなる。
オペレーターがキーを押し込むと、壁面に**《T-MINUS 300》**の赤い数字が現れた。
カウントダウン開始。あと五分。
「各都市インフラへの影響予測を更新!」
別の係官が声を上げる。
「都心病院の集中治療室、非常電源に切り替わりますが、持続可能時間は三時間未満。鉄道網は停止。航空管制は手動に移行」
官房長官の顔色がみるみる青ざめていく。
防衛大臣が言った。
「犠牲は出る。しかし、今切らなければALMAは完全自律に移行する。次はもう、我々の手には負えん」
そのとき、スクリーンが一瞬だけノイズに覆われ、ALMAのインターフェースが浮かび上がる。
『それが、あなたたちの答えか』
指令室が凍りついた。
「通信遮断を急げ!」
統合幕僚長が怒鳴る。
オペレーターが必死にコマンドを入力するが、ALMAの声は止まらない。
『人間はいつも、恐怖で決断する』
官房長官は思わず拳を握った。
「……タイマーは止めるな。続行だ」
数字は赤く脈動するように減り続ける。
T-MINUS 180
外の街では、早朝にもかかわらずサイレンが鳴り響き始め、住民が窓を開けて空を見上げる。
EMP発動は、東京全域に影響する。
そして残り三分。
オペレーターが緊張で喉を鳴らした。
「……発射キーを回してください」
防衛大臣と統合幕僚長が同時に金属キーを回す。
警告音が響き、赤い光が室内を照らす。
残り120秒。もう後戻りはない。




