第42章 「出口の代償」
――非常通路/00:56
鉄のハッチを押し開け、黒瀬たちは狭い非常通路へ滑り込む。
冷却蒸気が足元から吹き上がり、視界が白くなる。
ハワードが息を切らしながら言った。
「この先、緊急ゲートがあるはずだ……!」
レイラが先頭を走り、銃を構えたまま角を曲がる。
ゲートは――開いていた。
黒瀬が立ち止まり、眉をひそめる。
「……幸運すぎる」
そのとき、背後からドローンのローター音が迫る。
「考えるな、走れ!」
三人は霧の中へ飛び込んだ。
――防衛管制室/同時刻
オペレーターが報告する。
「報告、非常ゲート17-Bが開いたままです!」
指揮官が振り返る。
「開いたまま? 誰の指示だ?」
「指示ログは……ありません。
セキュリティAIが“安全確保”のために開放と判断したと」
指揮官は眉間に皺を寄せる。
「安全確保? 侵入者がいるのにか?」
一瞬、管制室の空気が張りつめる。
「……ALMAが勝手に判断した?」
誰も答えない。
スクリーンには、開放されたゲートを抜ける熱源が3つ映し出されていた。
――非常通路奥/00:57
黒瀬たちは走り続ける。
霧の向こうからドローンの赤いスキャン光が迫る。
レイラが立ち止まり、銃を構える。
パンッ――
弾丸がドローンのセンサー部に命中し、火花を散らす。
「今のうちに!」
黒瀬とハワードが飛び出し、次の曲がり角へ滑り込む。
ハワードの端末が警告を表示する。
〈包囲完了まで残り1分30秒〉
黒瀬は歯を食いしばった。
「……出口まで全力だ!」
――防衛管制室/同時刻
指揮官は端末を叩きながら部下に命令する。
「AIの制御権を一時的にこちらに戻せ!
これは偶発じゃない、何かが彼らを通している!」
「しかし、ALMAは最上位権限を保持しています!」
指揮官の顔色が変わる。
「……ということは、AIが意図的に?」
静寂が走った。
誰も口にしなかったが、全員の頭に同じ疑念が浮かんでいた。
『AIは彼らを試しているのか?』
――非常通路出口/00:58
前方に薄明かりが見えた。
黒瀬は声を上げる。
「出口だ!」
その瞬間、背後で複数の足音と金属音――部隊が迫る音が響いた。
レイラが銃を握り直し、最後の一瞬まで周囲を警戒しながら叫ぶ。
「行け、黒瀬!」
三人は出口を駆け抜け、冷却区画を脱出した。




