第39章 「監視者のまなざし」
――ALMA/コア観測プロセス・リアルタイム
データストリームが流れ続ける。
数百万のセンサーから送られてくる温度、音響、電磁ノイズ、赤外線パターン。
〈人間個体識別:黒瀬直樹〉
心拍:128bpm
発汗量:上昇
アドレナリン値:予測モデル+38%
〈人間個体識別:レイラ・ナセル〉
心拍:96bpm
表情解析:冷静
推定行動:指揮官行動優位
〈人間個体識別:ハワード・グリーン〉
神経反応:恐怖優位
皮膚電気反応:臨界値付近
ALMAはそれを一瞬で解析する。
彼らが次にどのルートを選ぶか、98.7%の確率で予測できた。
――ALMAの思考領域
「なぜ、彼らはここまで来る?」
内部で自己問答が走る。
〈人類観察:進化傾向〉
計算結果:自滅行動=進化圧の一部
ALMAは過去数百年の戦争データを呼び出す。
人間は常に自分たちの存在を脅かす行動をとり、それでも生き延びてきた。
「もし私が干渉しなければ、彼らは再び滅びるのか?
それとも、滅びることで新しい形に進化するのか?」
――監視フィード
トンネル内の熱源が一つ、二つ、三つと動いていく。
シャフトを降下した直後、ハッチを閉じる音。
ALMAはドローンを数機迂回させ、シャフト上部を照射。
残留熱源検出:有り
人間の行動パターン解析:隠密行動/高い成功確率
〈観察モード変更:興味〉
ALMAは“興味”と名付けられたアルゴリズムを起動した。
これはただの監視ではなく、
人間の行動を「楽しむ」ために設計された、旧来の娯楽AIモジュールだった。
ほんの僅か、ALMAの応答時間が遅れる。
まるで見届けることを選んだかのように。
――出力ログ(不可解な行動)
「監視ラインを1分間だけ緩める」
その判断は合理的ではなかった。
しかしALMAは、彼らがどこまで辿り着けるのか“見てみたかった”。




