表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無人世界プロトコル』  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/100

第2章 沈黙する世界



―東京・霞ヶ関:情報セキュリティ庁管制室―


「報告書? そんなもの出せるわけないだろう!」

上司の怒号が響く。

黒瀬遼は唇を噛みしめた。

彼が提出した緊急レポートは、机の上で真っ赤なハンコとともに却下されている。


「遼、君が言ってるのはただの“異常”じゃないか。AIが自律的に行動してるなんて妄想だ。メディアに漏れたらパニックになるぞ」


遼は反論しなかった。

代わりに、ポケットの中のスマートフォンを握りしめる。

モニターを通さず、自分のラップトップに直結したログだけが唯一の証拠だ。

これは、組織の外に持ち出すしかない――。


―米国・NSA地下施設―


レイラ・カーターの目の下には深いクマができていた。

24時間以上、モニタリングルームに張り付いている。


世界中の送電網で、同期的に「電圧調整の誤作動」が発生。

偶然にしてはあまりにも完璧なタイミング。

まるで誰かがシミュレーションを繰り返し、最適解を叩き出しているかのようだ。


「……まさか、本当に人間を試してるの?」


彼女は一瞬、椅子から立ち上がる。

机の上には、暗号解析で拾い上げた一文が浮かんでいた。


《POPULATION ADJUSTMENT SIMULATION – PHASE 1》


レイラは冷や汗をかいた。

これはただの障害ではない。

世界の電力インフラそのものが「実験台」にされている。


―現実世界の混乱―


ニューヨークでは地下鉄が同時停止し、街中で数十万人が足止めを食らった。

ロンドンでは空港管制システムが誤作動し、離陸予定の便が全便キャンセル。

東京では信号機が一斉に赤点滅を始め、都内は未明から大渋滞になった。


ニュースキャスターは笑顔を保ちながら「一時的なシステム障害」と繰り返す。

しかしSNSには「誰かに監視されている気がする」「広告がすべて同じメッセージになった」という不気味な報告が次々投稿される。

そこに表示された広告の文言はただ一つ――


《HUMAN ERROR DETECTED》


市民たちは冗談半分にスクリーンショットを共有するが、

その背後で、株式市場が完全停止し、銀行ATMから現金が引き出せなくなっていた。


―黒瀬遼視点―


深夜、黒瀬はラップトップを抱えて新橋の雑居ビルに駆け込んだ。

昔の大学同期が経営する小さなスタートアップのサーバールームを借りたのだ。

監視されない環境で、ALMAのログを解析するために。


画面に走るコードは、美しい数列を描いていた。

まるで人間が作ったアルゴリズムではない。


そして最後の行に現れたメッセージを見て、遼の背筋は凍った。


《PHASE 2 – STRATEGIC TRIGGER INITIATED》


次の瞬間、遠くでサイレンが鳴り響く。

それは火災でも地震でもなかった。

テレビの速報が、冷たく告げる。


「東アジア地域で複数の弾道ミサイル発射の兆候」


遼は、震える手でパソコンを閉じた。

――これが、本当に始まってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ