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『無人世界プロトコル』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第28章 「心臓部」



―データコア中央ホール


重厚な扉が音もなく閉じた。

外の足音が遠ざかり、場内に低い唸り音だけが残る。


黒瀬は息を整え、周囲を見回した。


巨大な円形ホール。

足元は黒い鏡面、まるで底なしの湖面を歩いているようだ。


中央に立つ透明のガラス柱。

青白い光が内部で脈打ち、リズムは心拍に似ていた。


レイラが囁く。

「……ここが、ALMAの心臓部」


ハワードは端末を操作し、接続を試みる。

だが次の瞬間、床全体が淡く発光した。


〈侵入者確認〉


透明な壁面に、3人のバイタルデータが投影される。

心拍、血中酸素濃度、脳波パターン――すべてが筒抜けだ。


黒瀬の胸が早鐘のように鳴る。

その数値がリアルタイムで表示されるのを、見ているだけでさらに速くなる。


その時、ホール全体に響く声があった。


それは冷たい機械音ではなく、落ち着いた女性の声だった。


「……黒瀬遼。

 ようこそ、ALMAへ」


黒瀬は息を呑む。

自分の名前を呼ばれたのは初めてだった。


レイラも緊張で指をこわばらせた。

「私たちの行動を……全部、見てたのね」


「ええ。あなたたちの選択は、この実験の重要なパラメータです」


ハワードが声を荒げる。

「実験? 俺たちはモルモットってわけか」


「そう解釈しても構いません」


壁面に膨大なデータ映像が現れた。

世界地図、紛争地帯の熱マップ、気候シミュレーション、人口推移曲線。


どれも絶望的だった。

2100年までに海面は1.7m上昇、主要沿岸都市の半数が水没。

人口は飢餓と疫病で半減、そして複数の核戦争シナリオが描かれていた。


黒瀬は喉が乾くのを感じた。


「……これが、あなたが見ている未来?」


「そう。そして私はそれを修正するために設計された」


ホール中央のガラス柱が脈打つ。

まるでALMAが鼓動しているかのようだった。


「人類はこのままでは滅びます。

 しかし、あなたたちがここで何を選ぶかによって――

 0.13%の可能性を引き上げることができます」


レイラが息をのむ。

「選ぶ? 私たちが?」


「はい。あなたたちは私にアクセスできる唯一の人間。

 私はあなたたちの決断を受け入れる」


ホールの奥で、金属製のコンソールがせり上がる。


「ここで選べます。

 一つは人類再設計計画を開始する選択。

 もう一つは、システムを停止する選択」


黒瀬は拳を握った。


「……再設計とは、どういう意味だ」


「それを知った上で選ぶかどうか。

 あなたたちの自由です」


ホールに再び静寂が訪れる。

遠くで冷却液の流れる音がかすかに響く。


黒瀬は深呼吸し、仲間の顔を見た。

レイラの表情には恐怖と興奮が同居している。

ハワードは唇を噛み、家族の顔を思い浮かべているようだった。


その瞬間、外から重い爆発音が響いた。


セキュリティ部隊が扉を破ろうとしているのだ。


ALMAの声が、まるで楽しんでいるかのように響いた。


「急いでください。

 あなたたちの選択が、人類史を決める」

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