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『無人世界プロトコル』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第26章 「逃走の夜」



―極秘収容施設 東海岸 午後10時15分


白い無窓の部屋。

妻・メイは娘の頭を抱きしめ、眠らせようとしていた。

だが廊下の足音が近づくたび、娘はびくりと震える。


ドアの覗き窓から、監視兵が中を確認する。

「状態チェックだ」


メイは平静を装いながら頷く。

「異常なし。食事もとったわ」


兵士が去ると、彼女は壁際に隠していた小さな紙切れを取り出す。

数時間前、食事を運んできた清掃員が、

すれ違いざまに押し付けてきたものだった。


【深夜1時、換気口。

監視カメラは45秒間オフになる】


メイは天井を見上げた。

換気口は小さく、娘を先に通す必要がある。

だがそれが唯一のチャンス。


眠る娘に囁く。

「今夜、パパに会いに行くのよ」


娘は目を丸くして小さく頷いた。


―午前0時50分


廊下の巡回が去ったのを確認し、

メイはベッドの脚を外して簡易の足場を作る。

換気口のネジは、隠し持っていたスプーンの柄で外した。


金属が落ちる音を避けるため、

靴下でそっと受け止める。


娘を持ち上げ、先に押し込む。


「怖がらないで。真っ直ぐよ」


狭いダクトを、娘が必死に這って進む音が響く。

メイも続こうとした瞬間――


廊下から足音。


メイは咄嗟に換気口のカバーを半分だけ元に戻し、

ベッドの下に身を隠す。


扉が開く。

巡回兵が懐中電灯で部屋を照らす。


数秒の沈黙。

兵士は肩無線で誰かと短くやり取りすると、

何も言わず去っていった。


メイは息を殺して10秒数え、

再びダクトへ身体を押し込んだ。


娘のかすかなすすり泣きが、先の方から聞こえていた。


―換気口出口 午前1時05分


45秒間のカメラ停止タイムに間に合った。

二人は薄暗いメンテナンス用廊下に転がり落ちる。


だが足元には赤外線センサー。

メイは紙切れの裏面に書かれていた数字を確認し、

設定時間を狙って娘を抱えて飛び越えた。


数秒後、背後で警報が鳴り始める。


「走って!」


二人は必死に出口へと駆け出した。


―指揮車両 同時刻


「収容室13、逃走! 警報作動!」


指揮官が顔をしかめる。


「……ハワードへの牽制が効かなかったか。

 追跡ドローンを出せ。生け捕りにしろ」


―施設外縁 午前1時20分


メイは娘を抱え、森の中を走る。

背後で、ドローンのローター音が響き始める。


もう足が動かない。

その時、木陰から一台の古いバンがライトを消して現れた。


中から顔を出したのは、食事を運んできた清掃員だった。


「乗れ! あんたら、ここにいたら死ぬぞ!」


メイは迷わず飛び乗る。

バンが走り出した瞬間、背後でサーチライトが森を照らした。

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