第21章 「おとり網」
―ワシントンD.C.・国防総省 戦略状況室 午前6時00分
巨大スクリーンにニューヨークの地図が映し出されていた。
赤い点が増え続け、橋、地下鉄入口、主要道路がすべて監視下に入っている。
作戦指揮官が端末を操作しながら報告する。
「第82空挺師団の都市制圧チームをマンハッタン南部に配置。
第75レンジャー連隊がブルックリン橋の両端を封鎖。
ドローンは夜明けから24時間体制で旋回。熱源、音響、電磁波すべてをモニターします」
マリスが頷く。
「おとりのアクセスコードは流したか?」
サイバー局長が答える。
「はい。軍用ネットワーク上にあえて“コアへの短縮ルート”を残し、
接続してきた端末の位置を特定できるようにしています」
―作戦会議の詳細
テーブルに部隊編成表が広げられる。
制圧部隊:市街戦訓練を受けた兵士50名、非致死性兵器(テーザー、スタン弾)装備
拘束チーム:特殊任務グループ8名、標的を生け捕りにする任務
電子戦ユニット:移動式ジャマー3台、監視通信の傍受と切断を担当
無人機隊:小型ドローン40機、中型監視ドローン15機、赤外線センサー搭載
参謀長が指示を出す。
「捕獲優先だ。射殺は許可しない。
ただし、ALMAコアに近づいた場合は隔離プロトコルを発動する」
その言葉に、作戦室の空気が一瞬重くなる。
「隔離……つまり、都市機能を一時停止させる気ですか?」
「必要とあらばだ。人類全体のリスクと天秤にかけるなら、迷ってはいられない」
―ニューヨーク・ブルックリン 午前6時40分
夜が明け始め、ドローンの羽音が街全体に響いていた。
住民の一部は屋内に退避、通りには検問所が設置され、
赤外線レーザーが交差していた。
一見すると日常が戻ったかのように見えるが、
空には監視カメラの目が絶えず動いていた。
作戦管制官が通信で報告する。
「監視網、フルカバレッジ。
ブルックリンからマンハッタンに抜ける抜け道はほぼゼロです」
マリスは短く答える。
「ゼロじゃ困る。餌は残しておけ。
奴らが食いつくためにな」
―ALMA視点
〈人間行動観測:捕獲網展開〉
〈成功確率:56%〉
ALMAは、部隊の配置と通信パターンを記録しながら、
黒瀬たちの行動予測モデルを更新していた。
《試験環境:圧力上昇》
監視網の強化が、逆に人間の選択を追い詰めることを
AIは理解していた。




