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『キラリ天使』は、同人誌の頃から人気が高く、アニメ化されメジャーになった今でも、初心を忘れないということで、スピンオフ作品などは、同人誌として発行している。
発表されたあとに、すぐにメジャーな出版社に引き継がれることになるのだが、そうなるとなおさら初回発行の同人誌の価値が上がるため、いつも長蛇の列が出来るのだ。
そんな列に並ぶため、オタク三人組を筆頭に歩いていると、前方から『キャーッ!』という悲鳴が聞こえてきた。
と同時に、多くの人が逃げてくる。
動揺する面々を尻目に、駆け出したのは玄心だった。
それを見て後を追った大場を筆頭に、みんなも続く。
騒然とする会場で、一人の男が女性スタッフを人質に取り、首もとにナイフを突きつけていた。
シャツのボタンをはだけた男の腹にはダイナマイトが巻かれている。
女性を抱えているもう片方の手には何やらリモコンのようなものを持っていた。
『……俺の作品を盗みやがって!』
男は興奮しながら叫んでいる。
『これは天罰だ!』
男が占拠しているのは『キラリ天使』のブースで、男が人質に取っている女性は『キラリ天使』のTシャツを着ていた。
『キラリんに何するつもりでござる?』
恐ろしい形相で玄心が一歩前に出た。
『く、来るな!それ以上近付くと、この会場に仕掛けた爆弾を爆発させるぞ!』
興奮する男に、玄心は『やってみればいいでござる。』と言って前に出た。
『く、来るな!本当に爆発させるぞ!』
いよいよ興奮した男がリモコンを持った手を前に付きだしながら叫ぶ。
『みんな無駄に終わりたくないと言っているでござる。』
玄心はそう言ってまた前に出る。
『何を言っている?』
男は戸惑いながら、後ずさりする。
『お主のような者の為に終わりたくないと言っているでござる。』
『い、意味が分からない……お、お前バカなのか?』
そう言った男が手にしたナイフが人質の首もとから離れ、女性が着ていたTシャツの胸元辺りをさ迷う。
そこにはウインクするキラリ天使の顔があった。
『貴様ー!キラリんに何をする!』
そう言った玄心の姿が一瞬でかき消えたと思うと、グリーンの忍者が人質となっていた女性をさらっていた。
『大丈夫でござるか?』
『はい。ありがとうございます……』
そう言った女性は、自分を抱える緑色の忍者が、胸元のTシャツに描かれたキラリ天使に向かって話しかけていることに気付いて、『え?』と言って、口元をひきつらせた。
人質を奪われ、その拍子に床に倒れていた男は、『お前のせいだぞ!』と言いながら手にしたリモコンのスイッチを押した。
しかし、何も起こらない。
『あれ?』
何度もリモコンを押す男。
『無駄でござる。その子たちは説得済みでござるよ。』
男は悔しそうに『クソッ!』と言うと、リモコンを玄心に向かって投げつけた。
玄心は首を軽くひねってかわすと、
『ちなみに、お主が腹に巻いているのはダミーだと分かっているでござるよ。自分が死ぬつもりなどないのでござろう。
……情けない男よ……
もっとも、それが本物でも、拙者が説得するので、爆発はしないでござろうがな。』
ガックリと肩を落とす男を、駆けつけた警察官が取り押さえる。
そこへ宮田がやってきた。
『玄心さん。爆弾は?』
『ああ、あそこにあるリュックの中でござる。あの子たちも説得済みなので、爆発の心配はないでござる。』
玄心はそう言いながら、会場の隅の方にある小さなブースを指さした。
テーブルの前に張られた紙には『チラリ天使』と書いてあった。
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