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派遣の忍者『月光』  作者: ヒロっぴ
35/35

ー5ー











『ご苦労だった。』






警察署でことの顛末を報告した後、迎えに行った武人と一緒に戻ってきた玄心を康人がねぎらう。






『ちゃんと月光衣装で活躍してくれたお陰で、問い合わせが殺到してるぞ。』





『はっ!』






『で?武人、その男の目的は何だったんだ?』






『それが……』






と、武人は警察で聞いた事情を説明する。





その男は、自分が製作した『チラリ天使』というゲームのキャラクターを『キラリ天使』の作者が盗んだと主張して凶行に及んだという。


しかし、実際に男がゲームを作ったのより2年も前に『キラリ天使』は発表されている。





しかも、男のゲームはいわゆるエロゲーといわれるもので、正統派魔法少女ファンタジーの『キラリ天使』とは、全く内容が異なっていた。




しかも、男が『盗まれた』と難癖をつけていたのは、『チラ見家政婦』『フラリ珍道中』『チンチラてんてん丸』と、多岐に渡る。




そのどれもが、名前が似ているだけで内容も全く違う。そして、男の作品よりも先に発表されているものばかりだった。




『まるで、何でも起源説を主張するどこかの国みたいだな。』




康人はため息をついた。



『いや、それが犯人も日本に住んではいるけど、日本人じゃないらしく、宮田さんも頭を抱えてたよ。』





『しかし、自分が後から発表してるんだから、真似されたってのも無理があるだろう。』





康人がそう言って武人を見る。






『そんな理屈が通用する人間じゃないから、苦労してるらしい。精神鑑定も視野に入れてるらしいけど、そうなると罪を問えなくなるから、厄介だって言っていた。』





『困ったもんだな。』







康人はため息をついた。






『そういえば玄心……』




武人はとなりの玄心に聞く。





『何か?』





『お前、説得がどうとか言ってたと大場に聞いたんだが、なんのことだ?』






『ああ、それは爆薬のコ達を説得していたことでござるよ。拙者が美しい花道を用意するので、下らない最後を迎えるのはやめるように言ったでござる。』





『じ、冗談だよな……』






『何を言ってるでござるか!森羅万象全てのものに霊は宿るでござるよ。拙者たちは、その霊と話をするでござる。』






『達ってことは、他のみんなも?』






武人は恐る恐る聞いた。





『勿論でござる。多少得手不得手はあっても、忍者であれば、感情の疎通はできるでござる。』







『はは……お前たち忍者って、一体なんなの?……』






『なんだ、武人。そんなことも知らなかったのか?』





康人は大袈裟に驚いてみせた。






『親父は知ってたのかよ?』






『無論だ!だてにこいつらの殿はしとらん。』






そう言って胸を張る康人を見て、武人はハッと我に帰った。





『玄心!』




『何でござるか?』




『お前たちが色んな物と話せると知ったとき、親父何かしてなかったか?』





『まあ、色々なものが何を言っているか聞いていたでござるな。』





『そりゃ、色々聞きたくなるだろう。自然な欲求だ。』





康人はそう言いながらも、何故か武人と目を合わせようとしない。





そんな康人にピンと来た武人は、玄心に聞く。





『どんなものの声を聞いてたんだ?何か変なこと聞いてなかったか?』





『そうでござるな……特には……。


あ、そういえば、茜の忍者服に『着られ心地』を聞いてくれとしつこく言っていたようでござるな。茜に怒られて諦めたようでござったが……』





そっぽを向いて口笛を吹く康人に、武人は『親父……』と呟きながら冷たい視線を送った。






『それでは、拙者はこのコ達との約束がござるので……』




玄心は肩から下げていたバックを指差すと、嬉しそうに事務所を出て調合部屋へ入っていった。






ここ、元山之内流本部道場には、道場と事務所の他に更衣室などの小部屋がいくつかあり、派遣部隊月光の拠点として使い始めてから、それらの小部屋は忍者たちに自由に使わせていた。






そのうちの一つを玄心と利水が調合部屋として使っていた。






『約束って、何をするつもりだ?』




武人がそう言って玄心が出ていった扉を見つめると、康人が『ああ、お前は知らなかったな。』と言ってから話を続けた。




『お前たちが警察へ出向する前に、一ヶ月くらい玄心がいなかったろ?』






『ああ、なんか修行に行くとか言ってたな。』





『あれ、忍者教室の夏季合宿のすぐ後だろ?』




『あー、そういえば……そこで何かあったのか?』





『ま、お前は合宿の途中から離脱して、百合ちゃんとラブラブ海外旅行に出掛けちまったから、知らんのも無理ないがな。』





康人がからかい半分にニヤけながらそう言うと、





『し、仕方ないだろ!百合との旅行はずっと前から決まってたんだから。』




と、武人は冷や汗混じりに抗議した。





『で?何があったんだ?』




『お?話戻す気か?』





『戻すだろ!普通。いいから早く言え。』





『もー。せっかちだなー、武人ちゃんは。』





『早く言え!』





 康人の説明によると、合宿の最後の夜に諏訪湖の花火大会があり、全員で見に行ったのだのが、忍者たちが現代の色鮮やかな花火を見るのは初めてで、その感動ぶりは凄かったという。





中でも爆薬を調合する玄心の驚きは凄まじく、興奮冷めやらぬまま、一晩中花火と爆薬について語り続けたせいで、他のみんなは寝られずに迷惑していたらしい。




その後、事務所に戻った玄心が、花火について学びたいと願い出たことにより、康人の知り合いの花火師の元へ修行に行かせたということだった。






『親父、そんな知り合いもいたのか。』





『顔の広さはぬりかべにも負けん!』





『いや、妖怪と張り合われても……』






武人が突っ込みを入れたところで、道場のチャイムが鳴った。






今回の件で緑の忍者の活躍を聞き付けたマスコミが取材に来ることになっていたから、その人達だろうと思い、武人は入口まで迎えに行く。





そして、『こちらです。』と言いながら、彼らを調合部屋まで案内した。





コンコンと部屋の入口をノックすると、武人は『玄心、入るぞー。』と言って扉を開いた。






…………





『うふふ……キレイにしてあげるからねー。……うふふ……』





怪しげな薄笑いを浮かべながら、爆薬の調合をしている玄心を見て、武人は黙って扉を閉めたのだった








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