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派遣の忍者『月光』  作者: ヒロっぴ
24/35

ー3ー






『あの黄色い忍者は誰だ?』




昨日のニュースを見た人々の間で話題になり、派遣部隊月光の事務所は朝から問い合わせの電話が殺到していた。





地元の人間は月光のお披露目式のニュースを知っているので、すぐに分かったらしい。




そこから派生して、月光のことを知らないメディアの耳にも入った結果がこの問い合わせの量だった。




『おたく、昨日は私を無視したテレビ局の方ですよね?』




康人が電話口でそう告げると、相手がひたすら謝っているような雰囲気が、他の電話の対応をしている武人にも伝わってきた。




『そこまで言うなら、仕方ないですな。今後は私を無視しないように頼みますよ。』



康人は満足げにそう言うと、静かに受話器を置いた。





『明日の記者会見に来るらしいが、奴らの席は一番後ろだ。』





昨日の事件はあまりにも反響が大きかったので、明日一斉に取材を受けることになっていた。




月光のお披露目式に来てくれた地元のマスコミが一番前ということで話を着けたらしい。





昨日のニュース報道では、使われなかった一般の人々のスマホ映像等が、今日のワイドショー番組などでは使われ、益々話題になっていた。



その映像は暴走する車を写したもので、ブレまくっていたが、女の子をはねる直前で黄色い影が横切り、女の子はいなくなっていた。




また、黄色い忍者が素手で車を壊して運転手を救い出す映像は、間近から写されていた。




コメンテーター達は口を揃えて、『彼は一体何者ですか?』と言っていた。








 翌日。




元山之内流本部道場では、デシャブが起こっていた。




お披露目式の時と全く同じシチュエーションで忍者の紹介が行われたのだ。



もちろん、派手なスモークや照明も使われ、単なる記者会見だと思っていたマスコミの目の前で、忍者達はポーズを決めていた。





お披露目式の時はここで盛大な拍手が沸き起こったが、今回は最前列の地元のマスコミ各社と、手伝いに来ていた忍者研究会の面々から拍手が起こるものの、後列の記者達は目を見開いて固まったまま、声も出せずにいた。





『ノリが悪いなぁ、皆さん。拍手くらいしたらどうですか?』






康人がそういうと、我に返った記者たちからパラパラと拍手が起こる。





康人が手を上げるとポーズを取っていた忍者達はサッとポーズを解いて片ひざをつき、次の指示を待つ体制に入った。





その後ろで、忍者服を着た忍者研究会の部員達が折りたたみ椅子を並べていく。




横一列に11脚。



その前の中央に1脚置いて、テープルをしつらえ、テーブルの上にはマイクを置いた。




康人が中央の椅子に座って振り向き、『お前たちも座れ。』と言うと、『はっ!』と言って、忍者達は椅子に座った。





椅子に座る忍者。




中々シュールな光景である。






『さて、質問にお答えしますよ。』





手のひらを組んでテーブルに両肘を着いた康人が、記者たちを見渡した。



後列の記者達はまだ呆然としているなか、最前列の記者が手を上げる。




『どうぞ。』



康人が発言を促す。



『ニュースの黄色い忍者は、源太さんでよろしいですか?』




記者は手にしたメモを見ながら聞いた。




『いかにも。』



康人はそう言ってから、後ろを振り返り源太を呼んだ。



『はっ!』と言って立ち上がった源太は前に出ると康人の隣に立った。




『彼が今回のヒーローです。』



源太は軽く頭を下げる。




今度は後ろの記者から手が上がる。



『源太さんに質問よろしいでしょうか?』



『どうぞ。』



『映像での身のこなし、常人では考えられないんですが、何かスポーツをやられてますか?』




間の抜けた質問だ。




『忍術を少々……』




源太の答えに武人は吹き出しそうになった。




前列の記者たちもクスクスと笑っていた。





『あー、地元のマスコミの皆さんはこの月光の発足式の時にもいらしたのでご存知だと思いますが、彼らは本物の忍者です。山奥で忍術の修行に明け暮れておりましたので、常人には計り知れない能力を持っております。』



『その能力とは?』




『今回彼が示した力は、その能力のほんの一部です。その他の能力は後々明らかになるでしょう。ただし……』





康人がパチンと指を鳴らすと、隣にいた源太を始め、全ての忍者が目の前から消えた。




ざわつく記者たち。




『彼らの技術はマジックと一緒で種明かしは出来ませんので、今後もどうやったのかなどは聞かないで頂きたい。』





康人がそう言って記者たちの上を指差す。



記者達が上を見ると、先程のカラフルな忍者ではなく、黒い衣装の忍者達が天井からブラ下がっていた。



百合がデザインした新作衣装だ。




作りは同じだが、色は黒に統一され、首回りのスカーフと、額の『月光』、左胸の『忍』というデザイン文字が、それぞれの忍者のイメージカラーに対応していた。




康人が再び指を鳴らすと、天井の忍者は消え、いつの間にか康人のテーブルの前で記者たちに向かって片ひざをついたポーズを取っていた。




康人はゆっくりと立ち上がる。



『派遣部隊月光は、基本的に依頼を受けて任務をこなす何でも屋です。その任務内容によって、どちらの忍者服を着るか決まります。あるいは私服や作業服などのこともありますが、今回のように町の平和を守るために働くときは忍者服です。彼らの活躍を報道するときには、月光の名前をお忘れなく。』





康人がそう宣言すると、忍者達は立ち上がり、懐から煙玉を取り出して床に叩き付けた。



爆音と共に辺りに煙が広がり、やがて煙が消えると、康人も忍者も消えていた。




記者達がキョロキョロしていると後ろから声がかかる。





『お帰りはこちらでーす。』




振り返ると、忍者服を着た学生らしい面々が愛想よく出口を示していた。




記者達はぶつぶつと文句を言いながら出口へ向かう。




『お疲れさまでした。これ、お土産の月光饅頭です。』



『ま、まんじゅう?……』




狐につままれたような面持ちで外に出た記者達は、首を傾げながらも帰っていった。





事務所の陰からそれを見送る武人は、



『親父、いつの間に饅頭なんて作ったんだ?』




と、隣の康人に聞いた。




『月光グッズはまだまだあるぞ?お前もいるか?』




『いらん!』






.



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