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派遣の忍者『月光』  作者: ヒロっぴ
14/35

≪初仕事≫  ー2ー







作戦開始から一週間ほどたったある日。


いつものように学園側の公園のベンチで読書をしながら見張っていた武人は、茜の数十メートル後ろを続いて公園に入っていく男に目をつけた。



ニット帽を目深にかぶり、分厚いマフラーを首に巻いた男は厚手のロングコートを着ていた。


武人の恋人である百合は、武人にはファッションセンスが無いと言ってよくからかうが、そんな武人が見ても、今通り過ぎていった小太りな男には似合わないセンスの服装だった。


ー怪しいー



茜が公園の奥へ入っていくと、その男もなんとなく周囲を伺いながらそのあとを続く。



武人はインカムで男の容姿を勘介に伝えると、その男の姿が見えなくなってから、ゆっくりと公園の奥へと進んでいった。




武人から連絡を受けた勘介が木の上で待機していると、茜の姿が見えてきた。数十メートル後ろを武人から聞いた通りの男が着いてきている。


まず茜が勘介の潜んでいる木の下を通り過ぎた。


そして、多少歩くスピードを上げたとみられる男が木の下を通りすぎる。



勘介は黙って見届けた。



すると男は巻いていたマフラーを鼻先まで上げると、小走りに茜の横を通り過ぎた。そして振り向きざまにコートの前を開いた。

全裸だった。



『キャーッ!』




茜は悲鳴を上げると脇道へと走っていった。




ギリギリ視線に入る距離で木の影に身を隠しながら着いていった武人は、その様子を見ると、走りだした。




『手荒な真似どころか、あの時と一緒じゃんか。』



武人は走りながら、武人の着替えを見て悲鳴をあげた茜を思い出していた。




脇道に入った茜は、公衆トイレの個室へと駆け込んだ。

あとを着けた犯人も公衆トイレへと入っていく。



それを視線の先に捕らえながら走ってきた武人が、勘介の潜んでいる木の下あたりに来たときに、ようやく勘介は飛び降りてきた。




『何やってんだ勘介!茜が……』




と言って勘介の横を走り抜けようとしたとき、勘介に手を捕まれた。





『まぁまぁ武人どの、見ているでござるよ。』





すると、『うわぁ~!』という男の悲鳴が聞こえ、腰を抜かした男が尻餅をついたまま後ずさりしてトイレから出てきた。


それに続いて出てきたのは……




『茜?……』




武人は息を呑んだ。


制服の胸元をさらけ出し、スカートをまくりあげて太股もあらわに出てきた茜はキセルを片手に煙を吐くと、



『そんなお粗末なもんで、このアタシに何をしようってんだい?』



と、恐ろしいほど妖艶な眼差しを男に向けた。



そして男の股間に視線を移すと、





『おやおや、ますます縮こまって。

赤ん坊のほうがまだましだねぇ……』





そう言いながら男に顔を近付けると、キセルの煙を顔に吹きかけた。

次の瞬間、




『男磨いて出直してきな!』




と、ものすごい形相で一喝した。




男は小便を漏らすと、焦点の定まらない目をして、口をパクパクさせている。




『汚い男だねぇ。』





そう言ってまたキセルをふかした茜は、呆然と見ていた武人に気付くと、近付いてきた。




『あら旦那見てたのかい。嫌だねぇ。

アタシのこと嫌いにならないでおくれよ。』






そう言いながら武人にしなだれかかる茜を見た勘介は、やれやれと首を降ると、茜の両肩を持って揺すりながら、




『茜!おい!茜!』




と、声をかけた。やがて……





『あら?勘介?……』





と言って自分の体に視線を移した茜は『キャーッ!』と言って、胸元と股間を隠しながら後ろを向いた。




そして慌てて倒れている犯人を飛び越えるとトイレの個室へ入っていった。




『どういうことだ?』





目の焦点が定まらないまま独り言のように武人が言うと、





『あれが茜の術でござるよ。キセルに仕込んだ薬等を使って自らに術をかける。それがさっきの茜でござる。


……かわいそうに、あの男は二度と使い物にならないでござろうな。』





あの状態の茜に一喝されると、男は完全に自信を無くし、不能となってしまうらしい。




武人も憐れみの眼差しで犯人を見た。







 武人が、家で待機していた康人に連絡をすると、知らせを受けた警察官があらわれ、犯人を連行していった。





一件落着!と帰ろうとした頃、茜がもじもじしながらトイレから出てきた。






『……あ、あの……武人さん……』




『お……おお……茜ちゃん……』






武人もなぜかドギマギしている。







『わ……わたし……わ、わたし自身は、その……まだ経験もなくて……え、えと……処……女?……なんだけど、……その……今回は……太夫たゆうの術を……』




『だ、大丈夫だよ……茜ちゃん。……見てない……見てないから!胸の谷間とか見てないから!』




武人がそう言うと茜は真っ赤になって『武人さんのバカー!』と言いながら走って行ってしまった。





『武人殿、本来の茜はウブでござるから、谷間はマズイでござるな……』



『いや、そんなこと言ったって……』




実践カラテ三連覇の猛者も形なしである。








 道場兼事務所に帰った武人達が康人に報告をしている間、茜は顔を赤くしてそっぽを向いていた。


報告を聞いた康人は膝を叩いて大笑いしながら、



『いやー、俺もその茜ちゃん見てみたかったな~』





と言った。茜はますます顔を赤くして『もうっ!』と言って武人を睨んだ。





『ええっ?俺?』





武人は冷や汗をかいている。






報告が終わり、康人が



『じゃあ今日はご苦労だった。あとは好きにしていいぞ。』



と言うと、勘介と茜は事務所を出ていった。




二人が出ていったのを見届けた武人は、




『俺が茜ちゃんの胸元に見とれていたのは、百合には内緒に……』



と康人に耳打ちした瞬間、





『なんだ!やっぱり見てたんじゃないか!』




と言われ、『しまった!』と思ったのも後の祭りである。





それから数日後、百合とのデートの最中に『茜ちゃんの胸、綺麗だった?』と聞かれ、必死に言い訳をする武人の姿があった。




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