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派遣の忍者『月光』  作者: ヒロっぴ
12/35

≪忍者のお披露目≫  ー2ー

『おお、花なんか飾っちゃって、本格的じゃん!』





田中の言う通り、道場がある屋敷の門には、商店街などで新しい店がオープンするときのように、いくつもの贈答品の花が飾ってあった。




中には【警視庁捜査一課有志一同より】




なんてものまであった。






『でも、似合わないな。』





武人がそう言うと、『確かに。』と百合も田中もうなづいていた。





山之内家の古い屋敷は、江戸時代から続くだけあり、古風な作りなので、松明や灯籠が似合いこそすれ、派手な花輪などは不釣り合いなのだ。




門をくぐり道場の入り口に行くと、受け付けブースも設置されていて、中々に盛況だった。




【何でも屋 派遣部隊≪月光≫ 発足記念パーティー】





と書かれた受付には、御祝儀の袋が山積みになっていた。それを見た武人が、





『親父のやつ、御祝儀目当てに、単なるお披露目式じゃなくて、パーティーにしやがったな。』





と言うと、百合は、






『あら、でもお客様をもてなしながら、気分よく御祝儀を出して頂けるんだか、このほうがいいわよ。』






と言った。百合は康人のファンなのだ。





初めて百合と康人を会わせたときは、『こんな親父会わせて大丈夫か?』と不安だった武人だが、意外なことにその日以来百合は『面白い!』と、康人のファンを公言している。






三人が関係者用の芳名帖に記帳していると、





『やぁ!よく来てくれたね。百合ちゃん、田中くん!』





と、康人が道場から出てきた。






『と、殿様?』





本格的な殿様衣装で出てきた康人に、田中が目を真ん丸にして驚いていると、百合は、両手を胸元で握ったポーズで、





『やっちゃん、素敵!』





と、冗談とも本気とも取れない眼差しで言った。



そんな百合を武人は驚いた顔で凝視している。





百合は康人に『俺のことは【やっちゃん】と呼んでくれ。』と言われてから、素直にそう呼んでいる。



自分の父親と彼女の仲がいいのはいいことだが、百合が毒されてしまいそうで、武人は心配だった。






百合に『素敵!』と言われた康人は、満面の笑顔で、





『さすが百合ちゃんは、俺のことが良く分かってる!武人とは大違いだ!』






と言って、百合の手を握った。








康人に連れられて道場のなかに入ると、これまた似つかわしくなく、立食形式のパーティー会場となっていた。



板張りの道場に絨毯を敷き、『クリスマスか!』と突っ込みを入れたくなるような飾りつけが壁や天井に施されていた。


実際、週3で開催している剣道教室の子供達向けに使っていたクリスマス用の飾りつけを転用しているのだ。


さすがにツリーは飾ってなかったが…




『じゃあ、適当に楽しんでってくれ。』





康人はそう言うと、あちこちのグループに出向き、歓談を始めた。




パーティー参加者は、武人達以外にも普段着の人も多く、正装している人との割合は半々だったが、そんな中を殿様衣装の康人がいったり来たりしているのは、やはり目立つ。




あからさまに驚いている人は、康人との関わりが浅く、百合が『やっちゃんらしい』と呟いたように、親しい関係の人ほど、普通に接していた。





『親父さんて、刑事の時もあんなだったか?』





田中がそう言うと、武人は、





『いや、刑事辞めてから弾けたみたいだ。』





と言って苦笑した。







しばらく歓談していると、BGMの曲調が変わり、会場の照明が一段落ちた。





『お、いよいよお披露目だな。』





武人がそう言うと、田中が、




『百合ちゃんデザインの制服も楽しみだな。』




と言った。百合は、




『そ、そうね。』




と言って、視線を泳がせた。




やがて、床の間付近に照明が灯り、康人が挨拶を始めた。




一通り派遣部隊発足の経緯を説明すると、






『それでは、悠久の時を受け継ぐ忍者の子孫達!派遣部隊≪月光≫をご紹介致しましょう!

カモン!ニンジャ!』





と言って片手を上げた。






すると激しい曲が鳴り響き、どこにいたのかあちこちから人影が飛び出てきて、アクロバティックな動きで床の間の前に集まると、ヒーロー戦隊よろしくポーズを決めた。



真ん中に勘介。左右に五人ずつ並び、左右対称でポーズを決めている。




それをスポットライトが浮かび上がらせる。




赤、青、緑、黄色、ピンク、オレンジ、水色、紫、迷彩、黒、白





あんぐりと口を開けている武人を尻目に、田中は、『百合ちゃん?』と小さな声で呟きながら百合を見た。





『し、仕方ないじゃない…あんな色指定と忍者風衣装って言われたら、あれしか出来なかったんだもん。』





と言った。




武人は『百合の歯切れが悪かったのはこれか』と理解しつつも、カラフルな面々に目を奪われている。





『派遣部隊!月光!』




大音量で女性ナレーションの力強い声が響くと、真ん中の勘介がポーズを変えながら、



『赤!勘介!』



と叫ぶと、勘介からみて右、左、右、左…と順に自己紹介していく。




『青!平太!』

勘介と同じ位の体型で知的な顔をしている。



『紫!幻魔!』

勘介より背は高く細めで、妖艶な顔立ちをしている。



『水!利水!』

細身だが、勘介よりは背が低く、目の下にうっすらクマがある。



『オレンジ!万次郎!』

背丈は勘介と変わらないが、腕の筋肉は発達している。



『緑!玄心』

体型は勘介よりやや細く、目付きが鋭い。



『黄!源太!』

部隊一の力持ちで、筋骨粒々背も高い。



『迷彩!佐助!』

一番忍者のイメージに合っている。

背は高く足も長い。





佐助がそう言ってポーズを決めると、武人は『いや、迷彩って…』と独り言のように突っ込みをいれるが、そんなことはお構いなしに、紹介は続いていく。




『ピンク!茜!』

部隊の紅一点可愛い顔立ちなので、アイドルが忍者のコスプレをしているようにも見える。



『黒!飛燕!』

背が高く筋骨粒々だが、スマートに見える。いわゆる細マッチョタイプ。

現代の美的感覚で見れば、部隊一の美少年である。



『白!乱魔!』

部隊一背が低く、細身で表情が読み取りにくい。






最後の乱魔まで終わると、全員一斉にポーズを変えて、




『我ら総勢11人…』



と行ったところで、上部のモニターに漢字の十一と縦に表示され、上の十に下の一が重なり、士という漢字になる。





『…もののふとなって…』





と言ったところで、士の上に『もののふ』と表示された。そして、




『…主君康人殿に使える派遣部隊!

月光!

ここに、誕生!』





と言って、最初の左右対称のポーズを決めた。






それと同時に、煙幕と照明が派手に盛り上げる。





会場からは一斉に拍手が巻き起こった。



招待された近所の子供達は忍者たちの周りを取り囲み、大騒ぎだ。



そんな子供達を抱えあげたり、肩に乗せたり、サービス満点な忍者達を右手で示しながら、康人が、




『彼らがどんな依頼でもお受けします。もちろん、依頼料との折り合いが付けばですが…』





と言って笑うと、会場でも笑いが起こった。





『さぁさぁ、月光の諸君、皆さんをおもてなしだ。』





康人がそう言うと、『はっ!』

と言って、数人が子供達の相手に残り、他は風のように移動すると、各立食テーブルを回って、挨拶しながら、お酌をして回った。




勘介は真っ直ぐに武人達のテーブルに来ると、




『お頭、よくぞおいで下さいました。感無量でござる。』






と言った。






『は?何でまたそのしゃべり方なんだ?』






約半年ぶりに、昔の言葉使いを聞いた武人が聞くと、




勘介は小声になって、




『営業用でござるよ。このカッコをしてるときは、現代語禁止との殿の命でござる。』





『じゃあ、なんのために現代語勉強したんだよ。』





武人がそう言うと、勘介は、





『バイリンガルでござるよ。仕事内容で使い分けるでござる。』




『いや、バイリンガルって、普通外国語だろ。』




武人が苦笑しながら言うと、




『コンナカンジデスカ?』





勘介は流暢な英語を操った。




武人は勿論、百合も田中も目を丸くしてると、勘介は、





『みんな、フランス語と中国語まではマスターしたでござるよ。』






と言ってウインクした。





愕然とした武人が、『忍者ってのは、一体どうなってんだ?』と呟くと、百合と田中も、ウンウンとうなづいている。





その後、地元紙の取材なども入りながら、忍者たちのデモンストレーションを交えて滞りなく式典が進み、無事にお披露目式は終了となった。





武人がカラフルな忍者の面々と一緒にあと片付けをしていると、私服に着替えてきた康人が近付いてきた。




『あんなんで仕事来るのか?』





武人が聞いた。





『まずは存在を知ってもらわなきゃ話にならんからな。最初はボランティアで町の清掃や見回りなんかをして、顔を売っていくしかないだろ。』




『ホントに何でもやるのか?』



『ああ、出来ることはな。』




『出来ないことはどうすんだよ。』




『もちろん、法外な料金をふっかける!』




そう言い切った康人を見て、武人はため息をはいた、



康人は気にせず、





『どのみち、引っ越しの手伝いとか、そんなもんしか来ないよ。最初はな。』




と言って武人の肩を叩いた。




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