其の七十二 戦の終わり
「案の定、じゃったのお」
「うむ。我らやお主の娘婿は戦に出る事叶わず、国境警備を厳重にせよという命令のみじゃったわい」
「西の方で我らと志を同じくする一派が兵を挙げたが、一日で壊滅し、戦が終わってしもうた。これにより我らは圧倒的に不利な状況に立たされておる」
「良くて減移封、最悪の場合は当主切腹の上、改易処分、か・・」
「改易されれば我らは露頭に迷うのかのお」
「運が良ければ召し抱えられるじゃろうが、わしらのような五十過ぎの侍は誰も相手にせぬじゃろうな」
「そうか・・やはり負けるという事は全てを失う事と同義なのじゃなあ」
「それもこれで終わりじゃろうがな」
「勝ち負けが無くなるという事か?」
「うむ。戦国の世はこれで終わりじゃろう」
「ふむ・・そう言われるとちと寂しい気もするが、娘や孫が安心して生きていけるのならばそれで良いな」
「お主もそう思うか」
「当然じゃろう。もう我らはまともに戦働きができる状態ではないからな」
「それもそうじゃな」
「よし、ならば川にて戦じゃ!」
「釣りの事か・・」
「釣りでは無い!鰻取りじゃ!こうして魚籠を持って中腰に・・はうっ!」
「・・どうした?」
「こ、腰が・・」
「・・我らにはもう家で茶でも飲んで居る事しかできぬようじゃな・・」
「・・な、何か・・言うたか?」
「いや、何も・・ほれ、肩に掴まれ、家に連れて行くぞ」
「うう・・かたじけない・・」




