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其の七十 東へ
「また引っ越しとは・・面倒じゃのお」
「天下人からの国替えの命令じゃからな。仕方なかろう」
「それはそうじゃが・・して、次はどこへ行くのじゃ?」
「東じゃ」
「東?」
「うむ。しかも内陸国じゃ」
「何!?海が無いのか!?」
「そうじゃ。しかも北、南、東と有力大名に囲まれ、山が多く、土地自体もあまり発展しておらぬ場所だそうな」
「何じゃそれは。猿の為にあれ程尽くしてきたにも関わらずこの仕打ち。大殿様も不満に思っておられるじゃろう」
「所がそうでもない。実は大幅に加増がなされておる故、大殿様は満足しておられるそうじゃ」
「加増?石高は増えたという事か?」
「うむ」
「ふうむ・・にわかには信じられぬが、大殿様が満足しておられるならばそれで良いか。しかしこの年になって引っ越しは辛いものがあるのお」
「わしもじゃ。まあ、荷物が少ない故、荷車を長距離運ぶのも何とかなるとは思うが」
「わしの方は荷物が多くてな・・。誰か人を雇って荷車を運んでもらいたいが、金が無い故どうにもならぬ」
「また嫁の着物か?言うておくが今回もわしの荷車に余裕は無いぞ」
「嫁では無い」
「何?」
「娘と孫の荷物じゃ。今回は二人の余った着物が荷車を占拠しておる」
「・・血は争えんな・・」
「何か言うたか?」
「いや、何も・・」




