其の六十九 初孫
「娘に子ができたぞ!初孫じゃ!」
「おお、良かったのお!顔は見に行けたのか?」
「まだじゃ。これから嫁と共に娘の家に行ってくる」
「そうか。ならば早く支度せねばならんのお」
「うむ。しかし何じゃな、わしもとうとう爺やと呼ばれる年になってしもうたのじゃなあ」
「五十を越えれば誰でもそうなる。・・わしにはそれが叶わんだがな」
「・・このような事を言うのもどうかとは思うが、子ができなんだのはやはりまずかったのではないのか?子が幼くして亡くなったと言うなら話は別じゃが・・」
「嫁もそれは気にしておった。じゃが、わしは嫁と離縁するなど考えたことも無かったわい。別の女を囲うほど裕福だったわけでもないからな」
「しかし、このままではお主の血が絶えるぞ」
「大名や将軍様のような身分であったなら危機感を持ったじゃろうが、下級武士という身分ではのお。わしは現状に不満は無い故、血が絶える事も気にしてはおらぬ」
「・・お主も変わった考えを持った侍じゃなあ。まあ、らしいと言えばらしいが。その性格は死ぬまで変わらぬのじゃろうなあ」
「お主も?」
「以前言うておった妻を持たず子も作らなかったこの国の先代の大殿様の事じゃよ」
「ああ、成程。じゃが、先代の大殿様とは違うぞ。妻もおるし、亡くなった後の後継者争いも起きぬ」
「ははは、それもそうじゃな」
「む・・何やら向こうから呼ぶ声が・・」
「しまった!嫁じゃ!」
「早く行け!また薙刀を持って追いかけまわされるぞ!」
「うむ、それではな!」
「・・あ奴の尻に敷かれる性格も死ぬまで変わらぬじゃろうなあ・・」
「何か言うたか?」
「いや、何も・・それより早く行かぬか」




