其の五十九 出世
「どうやら大殿様は猿と懇意にする道を選ばれたようじゃな」
「猿とか。それ程の人物なのかのお」
「聞く所によると猿は元々百姓の出じゃったらしい」
「百姓!?それはまことか!?」
「うむ。うつけに気に入られて家臣となり、数多くの功を挙げて出世の道を歩んできたそうな」
「ううむ・・百姓から天下取りの一番手か・・恐ろしいほどの出世じゃのお・・」
「下剋上の極みのような出世じゃ。戦国の世であるからこそ、このような人物が出てきたと言えるじゃろうな」
「・・ならばわしらにもできるのでは?」
「何がじゃ?」
「天下取りよ。猿にもできるならわしらにもできるじゃろう」
「無理じゃな」
「・・じゃろうな」
「天下取りには多分に運も絡んで居るからのお。まあ、それはよいとして、あの苦労して切り出してきた丸太の山はどうするのじゃ?船は造らぬのか?」
「船を造ろうとは考えておるのじゃが、いざ造ろうとなるとわしとお主だけでは日数がそれなりに掛かってしまう事に気付いてな」
「それは以前わしが言うたはずじゃが」
「じゃから船造りは諦めてしばらくは海岸での釣りに専念するわい」
「何じゃそれは。ならわしの手伝いなど必要なかったではないか」
「いや、必要ではあったぞ」
「何?」
「こうして共に釣りをするという目的に向かって何かをする・・それだけでわしらの絆は深まっていくというもの・・素晴らしい事じゃ」
「よし、蒸し焼きにして木炭にしよう」
「やめてくれええええええ!」




