其の五十二 婚期
「そろそろ娘の婚姻を考えねばならんのお」
「もうそのような時期か。年月が経つのは早きものよ」
「うむ。肝心の相手じゃが・・さてどうしたものか」
「上役の嫡男はどうじゃ?確かもう元服しておるじゃろう」
「上役の嫡男か・・わしもそれが良いとは思うておるのじゃが、嫁が嫌がっておってのお・・」
「何じゃ、嫁御は不服なのか?」
「もう少し上の役職の者の所に嫁がせたいらしくてな」
「なるほど。しかしわしらの身分からすればそれは高望みというものじゃぞ」
「その事は嫁にも話した。じゃが納得しておらぬ」
「それでは婚期を逃してしまうぞ」
「それも話した。しかし本人自体が婚期を過ぎてからの嫁入りじゃからか、あまりその事に関して気にしておらぬようでな」
「その認識は娘の将来にとって決して良い事ではないぞ」
「わしもそう思う・・が、こればかりはわしの一存では決められぬのが・・」
「ならば話だけ上役に持って行くというのはどうじゃ?取り合えず一度お伺いを立ててみて後日返事を聞き、そこで改めて嫁御と相談するという事で・・」
「うむ・・しかしそれで上手く行くか・・」
「お主にしては珍しく弱気じゃなあ。仕方ない。今回はわしも同席して嫁御の説得の手助けをしてしんぜよう」
「・・かたじけない。ならば説得途中は刀を手に持っておいてくれ」
「は?」
「嫁は怒り出すと薙刀を振り回す癖があってな。刀は手放せぬのじゃ」
「・・さらばじゃ」
「ま、待ってくれええ!一緒に説得してくれええ!」
「ええい、離せ!戦ならまだしも嫁御への命がけの説得などできぬわああああ!」




