其の四十五 塩
「前から思うておったが、ここらあたりにはいい飲み屋が無いのお」
「山に囲まれた場所じゃからな。歓楽街はあるが、以前の場所と比べれば規模は小さい」
「うむ。しかも酒の肴の種類も少ない。海沿いにおった時は豊富じゃったが」
「基本は川魚じゃからな」
「それと塩じゃな。やはり海が近くに無い影響か塩が少なく味気の無い物が多い。味噌はあるが、これだけではのお・・」
「味噌があるだけ良かろう。わしはこれさえあれば酒が進むぞ」
「確かに味噌があれば酒は進む。じゃがたまには他の肴で飲みたい時もある」
「それには同意じゃが、ここではどうしようもなかろう」
「そうじゃ。そこでどうしたものかと考えておる」
「・・またよからぬ事を考えておるな・・」
「何か言うたか?」
「いや、何も。しかし今回ばかりはどうしようもない。海の魚を生でここまで持ってくる事はできぬしここでは塩の値段が高い。商売を始めるのは難しいぞ」
「それは分かっておる。じゃからわし自身が楽しむ範囲で何かできぬかと考えておってな。そこで思いついたのがこれじゃ」
「何じゃそれは?」
「梅干じゃ」
「それはわかる。何故水が入った壺の中に入れておるのじゃ?」
「水には塩が入っておる。これを舐めつつ梅干を取り出してそれを食べながら酒を飲む」
「それでは梅干に水分が入り塩味が抜けてしまうじゃろう」
「確かに。しかしここで重要なのは、その抜けた塩分を使うという事じゃ。それを利用して新しい普通の梅を入れ、塩味を付ける。これで水が腐らぬ限り永遠に塩味が楽しめるという訳じゃ」
「・・塩に漬かっておらなんだ梅を塩水に浸せば塩分を吸い込んでいずれ塩味が無くなるのではないか?」
「・・ああああああああ!」




