其の三十三 懐妊
「懐妊じゃぞ!懐妊じゃ!」
「何じゃ、お役目でも解かれたのか?」
「その解任ではないわ!嫁が身ごもったのじゃ!」
「おお、それはめでたいではないか!良かったのお!」
「うむ、少し時間が掛かったが、ようやく子宝に恵まれたわい」
「家族が一人増えるのじゃ。これからより一層気張らなければならんぞ」
「それはわかっておる。ただ、戦に出る目途が立たんというのがいかんともしがたいが・・」
「大殿様が戦の準備を指示したという話がある。来年にも戦が始まるやもしれんぞ」
「来年か・・子が産まれる前に戦に出る事になるやもしれぬのか・・」
「仕方あるまい。これも武士の宿命じゃよ」
「うむ・・よし、そうなれば、生まれてくる子の為に是が非でも手柄を挙げねばならんのお!」
「その通りじゃ」
「しかし子ができるという事は金銭面でも負担が増えるという事・・また食費が減らされるのか・・」
「・・前々から思うておったが、お主の嫁は食費を削って何に使っておるのじゃ?やはり着物か?」
「着物は前からじゃったが今は帯の収集もしておっての。これも金がかかるのじゃ」
「それでよく金が足りておるな。まさか借金に手を出しておるのでは・・」
「いや、嫁が稼いでおる」
「は?」
「着付けや琴を教えに行っておっての。わしより収入があるやもしれん」
「・・それでは一生頭が上がらんな・・」
「何か言うたか?」
「いや・・何も・・」




