其の三十二 壺
「骨董屋を覗いてみたらこのような物が売りに出されておったぞ」
「壺じゃな。誰か名のある御仁が作った物なのか?」
「そのような物、わしが買える訳なかろう。二束三文で手に入る安物じゃ」
「ふむ。して何故これを買うたのじゃ?」
「持っておるだけで金運が上がるそうじゃ」
「・・・」
「何じゃその顔は。言うておくが騙された訳ではないぞ。払った金は大した額ではないからな」
「額の問題ではないと思うが・・」
「これを持っておれば来月から少しづつ手に入る金額が上がるそうじゃ。そして二年後にはほぼ倍になるという。素晴らしいのお」
「二年後・・」
「つまり来年には今貰って居る給料が確実に増えるという事じゃ。そしてその理由はやはり戦による手柄であろうよ」
「戦による手柄ならばもっと増えるじゃろう。一番槍の武功はほぼ倍じゃぞ?」
「む・・それもそうか。であれば何が理由で増えるのじゃ?」
「増えるかどうかはさておき、金が手に入る手段は一つだけではないぞ」
「どういう事じゃ?」
「釣りがその一つじゃ。今までお主が売った魚の額を全部合わせてみよ」
「・・そうか・・」
「そういう事じゃ。何か別の儲けがあれば二年後には二倍くらいにはなる。もちろん給料の大小によってそうならない事もあるがな」
「なるほど、つまりは魚をもっと釣ればやがて倍にもなるという事か!」
「・・まあ、そうじゃが・・」
「そして二人でやれば更に倍じゃ!よし、行くぞ!」
「わしは行かぬぞ」
「そう言うと思うておったわ。そこで、ほれ、投網じゃ。これならできるじゃろう」
「魚釣りも魚捕りもやらぬわあああああ!」




