其の二十八 東の大名
「祝言が無事に終わって良かったのお」
「うむ。これで心置きなく戦に臨める」
「そうじゃな。武具の準備は万端整えておるし、後は出撃命令を待つのみじゃ」
「それじゃがな、実は一つだけ気がかりな事があっての」
「気がかりな事?」
「東の大名家の存在じゃ」
「ああ・・関東で圧倒的な勢力を誇ると言われる大名家の事じゃな?」
「そうじゃ。その大名家がすぐ東に存在する事は我らにとっては大きな脅威よ。さてそこで問題となるのは何か分かるか?」
「・・そうか、留守を狙う可能性か」
「そう。もしかしたら此度の戦に我らは参加できぬやもしれん」
「うーむ・・城を新たに造ったのも東の脅威に対抗する為、か。ならばその可能性が高いな」
「武具の準備を整えておくのは良い事じゃが、此度はあまり期待せぬ方が良いかもしれんな。残念じゃが」
「なれば一つ、敵情視察を敢行するというのはどうじゃ?」
「は?」
「漁師に化けて東に向かい、さりげなく敵兵の出入りを観察するのじゃよ」
「言うておくがあちらに行くには関所を通らねばならんぞ。あからさまに怪しい漁師姿の我らでは門をくぐる事さえできぬ」
「それはわかっておる。そこで使うのが海路じゃ!」
「・・あそこに見える筏を指さすな」
「行くのは夜じゃ。二人で夜釣りと称して敵陣近くまで漕ぎ出すぞ」
「わしは行かぬ」
「丁度二人分の釣り竿と漁師服がある。いざ敵陣へ!」
「行かぬと言うておろうがあああああ!」




