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其の二十一 魚
「魚を釣ってきたぞ!」
「早速釣ってきたのか」
「うむ。しかも大漁じゃ」
「確かに大漁じゃが、珍しい魚とやらは釣れたのか?」
「いや、無理じゃった。やはり船で沖まで出張らぬと難しいわい」
「じゃろうな。で、この魚はどうするつもりじゃ?」
「取り合えず市場に売りに出す。二束三文じゃろうが、金が入らぬよりましじゃ。嫁と食べるにしても多すぎて腐らしてしまうしの」
「それが良かろうな。しかしお主がこれだけ釣れるとは。案外釣りの才があるのやもしれんぞ」
「釣りの才があってものお・・。できれば戦の才が欲しいのじゃが」
「武士じゃからな。後は剣術の才か」
「剣の才は欲しい。弓もできればなお良しじゃ」
「人は欲張りなものじゃな」
「うむ。という訳で明日も釣りに出るぞ」
「何が『という訳で』じゃ。明日からお役目が始まるぞ」
「知っておる」
「なら明日は釣りに出れぬではないか」
「出れぬ、と思うから出れぬのじゃ。出よう、と思うから出れるのじゃ」
「何を訳の分からぬ事を言うておるか。出ねば上役から叱責され、出世にも響くぞ」
「むむ・・それは困る。いやしかし・・」
「・・お主、もしや釣りが楽しゅうて仕方なかったのではないか?」
「な、何を申すか!ぶ、武芸を楽しむことこそ本物の武士じゃぞ!そのような事がある訳なかろう!」
「・・図星か・・」




