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群星のヴェルシェリア  作者: セイ
第二部 交錯する星々

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再開する銀金の研究者

 魔導騎士団本部の廊下に、軽やかな足音が響いていた。


 その足音の主は、王立魔導技術院の研究員、フィオナ・リュミエールだった。


 肩のあたりで切り揃えられた淡い銀金色の髪が、歩くたびに揺れる。


 紫色の瞳は、廊下の装飾にも、すれ違う騎士たちにも向けられていなかった。


 彼女が見つめているのは、手元の資料だった。


「……廃棄された検査装置の番号が、異なる二つの検査記録に使われている。しかも、回収された部品には後から追加された回路……」


 小さく呟きながら、紙をめくる。


「面白いですね」


「……何が面白いんだ?」


 突然、頭上から声が降ってきた。


 フィオナが顔を上げる。


 そこには、大柄な男が立っていた。


 鍛え抜かれた身体。


 顔に刻まれた傷。


 そして、威圧感のある外見とは裏腹に、どこか人懐っこい笑み。


 魔導騎士団長、ガルド・ヴァレンシュタインだった。


「お前が、技術院から来た研究員か?」


「はい。フィオナ・リュミエールです」


「おう! 俺はガルドだ!」


「存じています。団長」


「そうか!」


 ガルドは豪快に笑った。


「で、何が面白いんだ?」


「こちらです」


 フィオナは資料を差し出した。


 ガルドは受け取ると、眉間に皺を寄せた。


「……細かい字だな」


「検査記録ですから」


「それは分かる」


「では、こちらの番号をご覧ください」


 フィオナが指さしたのは、二枚の記録に記された同じ識別番号だった。


「この番号の装置は、すでに廃棄されたことになっています」


「ああ。その話は聞いてる」


「ですが、廃棄されたはずの装置の番号が、別々の検査記録に残っています」


「……誰かが、勝手に使ったってことか?」


「その可能性はあります」


 フィオナは頷いた。


「ただし、番号が同じだからといって、同じ装置が使われたとは限りません」


「……どういうことだ?」


「検査装置そのものではなく、識別番号だけが流用された可能性もあります」


 ガルドは少し考えた。


「つまり、実際には別の装置で検査して、書類だけ偽装したかもしれねえってことか」


「はい」


「なるほどな」


 ガルドの表情が引き締まる。


「それなら、単なる故障じゃ済まねえ話だ」


「まだ故意かどうかも分かりません」


 フィオナは落ち着いた声で言った。


「ですが、調べる価値は十分にあります」


「おう。そういうことなら、遠慮なく調べてくれ!」


 そのとき。


「団長。廊下で立ち話をされていたのですか」


 聞き慣れた声が響いた。


 振り向くと、白い長髪の騎士が歩いてきていた。


 ユリウス・フォン・エーデル。


 魔導騎士団副団長であり、ガルドを支える白銀の騎士。


 フィオナは、その姿を認めると表情を和らげた。


「ユリウス副団長。お久しぶりです」


「フィオナさん」


 ユリウスも微笑んだ。


「クレイヴェル領での一件以来ですね」


「はい。あのときは、お世話になりました」


「こちらこそ。あなたの解析がなければ、あの転送門への対処は難しかったでしょう」


「副団長たちが魔物を食い止めてくださったおかげです」


 フィオナは小さく頭を下げた。


 ユリウスは、その様子に懐かしそうな表情を浮かべる。


「また一緒に仕事をすることになるとは思いませんでした」


「私もです」


 フィオナは手元の資料を見下ろした。


「ですが、今回の回路は非常に興味深い構造をしています」


「……相変わらずですね」


 ユリウスが苦笑する。


「研究のこととなると、目の色が変わる」


「そうでしょうか?」


「ええ」


 そのやり取りを見ていたガルドが、二人を交互に見た。


「何だ。知り合いだったのか?」


「はい。以前、クレイヴェル領で共に任務に当たりました」


「ほう!」


 ガルドは感心したように頷いた。


「なら、話が早えな!」


「団長」


「何だ?」


「話が早いのは結構ですが、まず研究室へ移動しましょう」


「……おう」


 ユリウスの静かな一言に、ガルドは素直に頷いた。


 フィオナは、その様子を少し不思議そうに眺めていた。


     ◇


 研究室には、北区の工房から回収された金属板が並べられていた。


 細かな溝が刻まれた板。


 焼け焦げた接続部。


 そして、何かの装置に取り付けられていたと思われる小さな金属片。


 フィオナは手袋をはめ、慎重に一枚を持ち上げた。


「……なるほど」


 表面を光にかざす。


「……これは」


 彼女の表情が変わった。


 ユリウスが問いかける。


「何か分かりましたか?」


「まだ断定はできませんが……」


 フィオナは金属板を机に置いた。


「この回路は、単に魔力を測定するためのものではないようです」


「……どういう意味ですか?」


「魔力の一部を、別の経路へ逃がす構造があります」


 彼女は図面を広げた。


「ここが通常の測定回路。そして、こちらが追加されたと思われる部分です」


 細い線が、主回路から枝分かれしている。


「この経路を通れば、測定器が読み取る魔力量を変化させられる可能性があります」


 ガルドが腕を組んだ。


「つまり、検査の結果をごまかせるってことか?」


「理論上は」


「……理論上?」


「はい。実際にどのような働きをしていたのかは、まだ分かりません」


 フィオナは続けた。


「それに、この回路にはもう一つ、気になる部分があります」


「何ですか?」


 ユリウスが尋ねる。


「逃がした魔力を、別の経路へ戻せるようにも見えるんです」


 研究室に、短い沈黙が落ちた。


「……戻す?」


 ガルドが聞き返した。


「はい」


「何のために?」


「分かりません」


 フィオナは即答した。


「ただ、もし検査中に魔力を逃がし、その後で戻していたとすれば……」


 そこで言葉を止めた。


 紫色の瞳が、金属板の細い溝を追う。


「……いえ。まだ仮説が多すぎます」


 ユリウスは静かに頷いた。


「確証がない段階で、結論を急ぐべきではありませんね」


「はい」


 フィオナは顔を上げた。


「ですので、お願いがあります」


「何でしょう?」


「この部品が回収された工房の、詳しい見取り図を確認したいんです」


「見取り図ですか」


「はい。部品単体では、装置全体の構造が分かりません」


 フィオナは机の上の金属板を指さした。


「この部品がどこに取り付けられていたのか。それによって、考えられる用途が大きく変わります」


 ユリウスは少し考えた。


「分かりました。捜査資料を確認しましょう」


「ありがとうございます」


「ただし、資料には捜査上の機密も含まれます。必要な範囲に限らせてください」


「もちろんです」


 フィオナは頷いた。


 その返答を聞いて、ユリウスは扉の方へ向き直った。


「アイリス」


「はい」


 扉の近くで待機していた女性騎士が、一歩前に出た。


 鮮やかな青い髪は、短く整えられたショートウルフ。


 凛とした青い瞳が、ユリウスを見つめる。


「フィオナさんの資料確認を手伝ってください。必要に応じて、工房の捜査記録も整理していただきたい」


「承知しました」


 アイリスは一礼した。


 そして、フィオナへ向き直る。


「アイリス・フェルディアです。今回の調査では、資料管理と現場との連絡を担当しています」


「フィオナ・リュミエールです。よろしくお願いします」


 二人は、軽く頭を下げ合った。


 その直後。


「……綺麗な青ですね」


 フィオナが言った。


「……え?」


「髪の色です」


 アイリスは思わず瞬きをした。


「……髪?」


「はい。とても鮮やかで」


 フィオナは真面目な表情で続ける。


「魔導染料で再現しようとしても、なかなか難しい色合いだと思います」


「……そ、そうか」


 アイリスは少し戸惑った。


「ありがとう」


「いえ。事実を申し上げただけです」


 フィオナは柔らかく微笑んだ。


 その笑顔を見て、アイリスはなぜか視線を逸らした。


「……では、資料室へ案内する」


「はい。お願いします」


 二人は研究室を出ていった。


 ガルドは、その背中を見送った。


「……変わった研究者だな」


「ええ」


 ユリウスは小さく笑った。


「ですが、腕は確かです」


「お前がそう言うなら、期待できそうだな!」


 ガルドは豪快に笑った。


 ユリウスも微笑んだ。


 だが、その表情はすぐに引き締まる。


「……団長」


「ん?」


「今回の件、単なる設備事故ではない可能性が高くなってきました」


「ああ」


 ガルドは頷いた。


「誰かが意図的に、検査の結果を変えようとしていたかもしれねえ」


「はい」


「……面倒なことになってきたな」


 その声には、先ほどまでの軽さはなかった。


     ◇


 同じ頃。


 王立総合学園の研究棟では、シオンたちが測定装置の改良を続けていた。


「……よし!」


 エリオットが声を上げた。


「今度は、かなり安定したよ!」


 机の上には、小さな魔導装置が置かれていた。


 通常の星晶石から流れる魔力を記録するための補助回路。


 前回の実験では、記録回路そのものが余計な反応を生み出していた。


 そこで三人は、測定回路と記録回路を分離し、互いの影響を減らすよう改良した。


「……前より、ずいぶん綺麗な線になったな」


 シオンは記録紙を見つめた。


「ええ」


 リシアが頷く。


「ただし、まだ試験回数が足りないわ」


「分かってるよ」


 エリオットは笑った。


「でも、少しは喜んでもいいだろ?」


「……それは、まあ」


 リシアは小さく微笑んだ。


「いいと思うわ」


「やった!」


 エリオットが両手を上げる。


 シオンは苦笑した。


 だが、その気持ちはよく分かる。


 何度も失敗し、原因を探し、少しずつ改良してきた。


 その結果が、ようやく目に見える形になってきたのだ。


「……次は、記録の比較だな」


 シオンが言った。


「そうね」


 リシアは資料を広げた。


「南区と西区の事故記録。それから、学園で確認された異常反応の記録」


「ただし、同じ現象だと決めつけないようにしないと」


 シオンは頷いた。


「……ああ」


 似た反応があるからといって、原因まで同じとは限らない。


 それを忘れてはいけない。


 シオンは記録紙を見つめた。


 魔力の流れ。


 わずかな揺れ。


 目に見えない変化。


 それらを正しく読み取ることができれば、何かが分かるかもしれない。


 だが。


(……焦るな)


 シオンは自分に言い聞かせた。


 答えを急いで、間違った判断をすることだけは避けたい。


 そのとき。


「シオン」


 エリオットが声をかけた。


「これ、見てくれる?」


「……何だ?」


「ここの記録なんだけど」


 エリオットは、二枚の記録紙を並べた。


「通常の星晶石で測ったものと、前回の異常反応を再現しようとしたときのもの」


 シオンは目を細めた。


「……少し、違うな」


「だろ?」


 エリオットが頷く。


「異常反応の方は、一度魔力が弱くなってから、少し遅れて強くなってる」


 リシアも記録紙を覗き込んだ。


「……確かに」


「でも、これが何を意味するのかは分からない」


 エリオットは肩をすくめた。


「単なる測定誤差かもしれないし」


 シオンは黙って記録紙を見つめた。


 一度、弱くなる。


 そして、遅れて強くなる。


 どこかで聞いた話と、似ている気がした。


(……いや)


 シオンは首を振った。


 似ているからといって、同じ原因とは限らない。


 それに、前回の異常反応は再現実験の中で生じたものだ。


 実際の事故とは条件が違う。


「……もう少し、試してみよう」


 シオンは言った。


「同じ条件で、何度か測ってみたい」


「賛成!」


 エリオットが頷いた。


 リシアも資料を整理し始める。


「では、条件を記録しておくわ」


 シオンは小さく息を吐いた。


 まだ、何も分からない。


 だが。


 分からないことを、分からないままにしておくわけにはいかない。


     ◇


 夕方。


 魔導騎士団本部の資料室では、アイリスとフィオナが工房の見取り図を広げていた。


「……こちらが、北区の工房の内部構造です」


 アイリスが説明する。


「入口は一か所。奥に作業場があり、その隣に小さな保管室があります」


「なるほど」


 フィオナは図面を覗き込んだ。


「この壁の部分は?」


「そこは、すでに調査済みだ。特に異常は見つかっていない」


「……そうですか」


 フィオナは少し考えた。


 そして、図面の端を指さした。


「では、こちらは?」


「……床下の配線用通路だな」


「配線用通路?」


「古い工房だから、床下に魔導線を通すための空間がある」


 フィオナの瞳が、わずかに輝いた。


「……なるほど」


「何か気になるのか?」


「はい」


 フィオナは、回収された金属板の図面を重ねた。


「この部品は、単体で使うには少し不自然なんです」


「……不自然?」


「はい。回路の接続部分が、途中で切れています」


 彼女は指先で線をなぞった。


「もちろん、取り外した際に破損した可能性もあります。ですが……」


 フィオナは床下の配線用通路を指さした。


「もし、この部品が床下の別の装置と繋がっていたとしたら?」


 アイリスの表情が変わった。


「……まだ、見つかっていない装置があるかもしれないということか」


「可能性の一つです」


 フィオナは頷いた。


「ただ、工房には罠が仕掛けられていたと聞いています」


「ああ」


 アイリスの声が低くなった。


「副団長と団長が調査した際、床の仕掛けが作動した」


「なら、床下にはまだ危険な回路が残っているかもしれません」


「……そうだな」


 アイリスは図面を見つめた。


 あの工房は、すでに封鎖されている。


 だが、回収した部品の解析が進んだ今、新たに確認すべき場所が見えてきた。


「副団長に報告する」


 アイリスが言った。


「再調査の必要があるかもしれない」


「はい」


 フィオナは頷いた。


「ただし、もし調査するのであれば、私も同行したいです」


「……何?」


 アイリスは顔を上げた。


「危険だ」


「承知しています」


「罠が残っている可能性があるんだぞ」


「はい」


 フィオナは真剣な表情で答えた。


「だからこそ、回路の構造を理解している人間が必要だと思います」


 アイリスは言葉に詰まった。


 確かに、理屈は分かる。


 だが。


「……それでも、危険な場所へ研究者を連れていくわけには」


「アイリスさん」


 フィオナが、静かに名前を呼んだ。


「私は、危険を軽く考えているわけではありません」


 紫色の瞳が、まっすぐにアイリスを見つめる。


「ですが、危険だからといって、何も調べなければ……」


 そこで、少しだけ言葉を探した。


「……同じような事故が、また起こるかもしれません」


 アイリスは黙った。


 南区。


 西区。


 すでに、複数の場所で異常が発生している。


 原因が分からないままなら、次はもっと大きな事故になる可能性もある。


「……分かった」


 アイリスは小さく息を吐いた。


「同行できるかどうかは、副団長の判断になる」


「はい」


「それと」


「何でしょう?」


「もし同行することになったら、必ず私たちの指示に従ってくれ」


 フィオナは微笑んだ。


「もちろんです」


「……本当だな?」


「はい」


 アイリスは少しだけ眉をひそめた。


 なぜだろう。


 この研究者の返事は、妙に不安になる。


「……無茶はしないでくれよ」


 思わず、そんな言葉が口をついて出た。


 フィオナは一瞬だけ目を丸くした。


 そして、柔らかく笑った。


「ありがとうございます」


「……何が?」


「心配してくださって」


「……いや、任務だから当然だ」


「そうですか」


 フィオナは、どこか嬉しそうだった。


 アイリスは、なぜか少しだけ居心地が悪くなった。


     ◇


 その夜。


 魔導騎士団本部の執務室では、ユリウスが新たな報告書を読んでいた。


「……床下の配線用通路、ですか」


「はい」


 アイリスが頷いた。


「フィオナさんの見解では、回収した金属板が別の装置と繋がっていた可能性があります」


「なるほど」


 ユリウスは図面を見つめた。


「確かに、前回の調査では床下まで十分に確認できていません」


「はい」


「ですが、罠が設置されていた場所です。慎重に進める必要がありますね」


「同感です」


 ユリウスはしばらく考え込んだ。


 そして。


「……明日、技術班と協議しましょう」


「承知しました」


 アイリスが一礼する。


 そのとき。


「おい、ユリウス」


 執務室の扉が開いた。


 ガルドが顔を覗かせる。


「まだ仕事してんのか?」


「……団長」


 ユリウスは顔を上げた。


「報告書を確認しているところです」


「そうか」


 ガルドは部屋に入ってきた。


 そして、机の上に積まれた書類を見た。


「……また増えてねえか?」


「必要なものですので」


「お前、昨日も遅かっただろ」


「……昨日は、少し」


「少しじゃねえだろ」


 ガルドは腕を組んだ。


「無理すんなって言ったはずだぞ」


 ユリウスは小さく息を吐いた。


「……覚えています」


「なら、今日はもう終わりにしろ」


「ですが」


「ですが、じゃねえ」


 ガルドは机の上の書類を一枚取った。


「残りは明日だ」


「団長」


「何だ?」


「……あなたも、まだ仕事が残っているのでは?」


 ガルドは一瞬、黙った。


「……おう」


「でしたら、私だけ帰るわけにはいきません」


「……そう来たか」


 ガルドは苦笑した。


 ユリウスも、わずかに微笑んだ。


 その様子を見ていたアイリスは、静かに一礼した。


「では、私は失礼します」


「ああ。お疲れさまです、アイリス」


「おう! 明日も頼むぞ!」


「はい」


 アイリスが部屋を出る。


 扉が閉まると、ガルドは大きく息を吐いた。


「……まったく」


 そして、ユリウスの机に向かい合うように椅子を引いた。


「仕方ねえ。俺もここで仕事するか」


「……団長?」


「お前だけ残すのも、気分が悪いからな」


 ユリウスは、少し驚いたようにガルドを見た。


「……ありがとうございます」


「礼なんかいらねえよ」


 ガルドは笑った。


「さっさと片づけて、飯でも食いに行こうぜ」


 ユリウスは、静かに微笑んだ。


「……はい」


 その声は、いつもより少しだけ柔らかかった。


     ◇


 同じ夜。


 王都の北区。


 封鎖された古い工房の前に、一つの影が立っていた。


 周囲に人影はない。


 影は、扉に貼られた封鎖の札を見つめた。


「……まだ、調べているのか」


 低い声が、夜の空気に溶ける。


 影は懐から、小さな金属片を取り出した。


 そこには、細い線と点が刻まれていた。


 北区の工房で見つかった部品と、よく似た印。


 影はしばらくそれを見つめたあと、静かに握りしめた。


「……余計なことを」


 そして、何事もなかったかのように、その場を去っていった。


 工房の扉は、閉ざされたままだった。


 だが、その奥にはまだ、誰も知らないものが残されているのかもしれない。


 王都の夜は、静かに更けていく。


 その静けさの下で、見えない歯車が、少しずつ動き始めていた。

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