幼馴染と朝
翌朝、家から出ると基本的に俺より遅く出るはずの結愛が何故かいた。
「あ、蓮おはよー!」
俺が出てきたことに気づいて、いつもの明るい笑顔で俺に挨拶する。
「……っはよ、どうしたんだよ、いつもは俺より遅く出るのに」
「これ」
そう言って結愛は鞄から青い袋を取り出して俺に渡す。なんだこれ……受け取るとなんか生ぬるいというか、手に伝わる温度がほんのり温かい気がする。
「言ったでしょ、お弁当作るって」
あぁ、昨日の話か。はっきり言わなかったからとりあえず作ったって感じかもな。こいつのことだ、昨日も言った通り半分は自分の効率たろ。いつも思ってることだが、こいつに期待したって無駄なのは分かってることだ。でもまぁ、手作りだし……。
「……ん、サンキュ」
お礼を言っておくのは普通のことだろ、最低限の人間のマナー的に。宮と久遠と凛斗になんか言われないといいんだけど……。宮と久遠は基本的に学食派だから、同じ学食組の俺が突然弁当なんて持ってきたらなんて言うか……。あ、でも凛斗は弁当派だったっけ。
「蓮?学校行くよ?」
「分かってるっての」
俺と結愛は2人並んで歩き出す。まぁ俺達が幼馴染ってのは、知ってる奴は知ってるから一緒にいても特に何も言われないからな。歩きながら他愛のない話をする。
「それでその時めぐと美紅がさ恋花に」
めぐと美紅と恋花というのは結愛の友達でフルネームは、月島めぐと、初野美紅と、鏡恋花という。ちなみに俺の友達の宮と久遠と凛斗は中路宮と、綾音久遠と、鏡凛斗。宮は俺とそこそこ似てる、久遠はかっこよくて優しくて紳士的と女子から人気だ。凛斗は名前から分かるように鏡恋花と兄妹だけど、親が再婚して連れ子が恋花で義兄妹らしい。
「あ、美紅だ!じゃあまたね」
初野を見つけると、俺に別れを告げて結愛はかけていった。初野と話す結愛を見送っていると俺にも声がかけられた。
「蓮、おっす」
「宮、おっす」
友人1人の宮が肩を叩いて挨拶してきた。そして俺が向けていた方向を見て問いかけてきた。
「今日花園さんと来たのか?」
「ん、一応」
否定したところでなんにもならないため、正直に応える。これくらいのことは別に否定する必要性を感じないしな。恋人と間違われるのは若干嬉しい……かもしれない。そりゃ好きな奴と恋人とと言われたら、事実はどうであれ嬉しいのは当たり前だろ。
「おはよう、蓮、宮」
「蓮と宮も2人でいたんだな、おはよ」
次に話しかけてきたのは久遠、隣に凛斗もいた。ちなみの話だが、凛斗はかっこよくて大人っぽくて落ち着いてるという理由でモテる。久遠とはちょっと違う理由だ。
「そういえば今日HRで体育で出る種目決めるってさ」
「久遠足速いからリレーとか出れば?」
久遠と凛斗がそう話してて俺も体育祭のこと思い出した。さっきまで体育祭のこと忘れてたわ。まぁ俺は適当になんかやるか。俺は体育は苦手なわけでも得意なわけでもない。久遠は頭もよく運動も出来る。天は二物を与えずというが、かっこよくて優しくて紳士的で、モテていて、頭もよく運動も出来る。確実に二物以上与えられてるんだが。非の打ち所もない完璧イケメンというか……。
「久遠見てると思うけど神様って不公平だよな」
俺がそう言うと宮がコクッと頷く。宮も俺と似たようなもんだから久遠と凛斗には少しながら不公平感を感じてるようだ。まぁ、友達だからそれで距離置くとか、俺も宮もモテたいとか思うタイプじゃないから、恨んだり嫉妬とかするタイプじゃない。不公平だなと思う程度で。
「俺は玉入れとか集団競技に出ようかな……」
そして宮はむしろ注目されることを好んでいない。だからモテたいとか思うことはないらしい。俺は足の速さは平均的だし。リレーとかには向かないかもな。俺も玉入れとかにしようかな。そう思ってると久遠はどこかを見ていた。その方向に目を向けると、結愛と初野、月島、鏡がいた。あぁそういうことか。実は俺達がバラバラなタイプなのに友達でいるのにはひとつ、共通点があるからだ。
「久遠、初野のこと見てただろ」
「まぁね、出来たら好きな子に接触の可能性がある種目に出たいって思わない?」
久遠は初野美紅に恋をしている。宮は月島めぐに、凛斗なんかは妹でもある鏡恋花に恋をしている。凛斗曰く「義理なら問題ない」ということらしい。まぁつまり……全員同じグループの女子に恋をしているということ。だから友達になったようなもんだ。久遠は初野と同じ中学でその時からずっと好きだったらしい。初野を追っかけて、この高校を選んだとも言ってた。
宮は俺と同じように月島めぐとは幼馴染らしい。
凛斗は分かると思うが、どうやら再婚の時の顔合わせで一目惚れしたとのこと。でも久遠と初野なら付き合ったとしてみんな納得すると思う。初野は1年の中で一番可愛いって言われてるし。むしろ初野も久遠に惚れてると思うんだけど……。ここまで両思いっぽいと思えるともう勝ち組だよな、神に愛されてるとしか思えない。
「久遠はそんなんなくても平気だろ」
凛斗がそう話す。うん、俺もそんなんなくても平気だと思う。むしろそんなの必要なのは俺らの方だろ。こっちなんて意識なしだし、宮の場合はバイトしてるからか他校の子が好きなのかと誤解されてるらしいし、凛斗は言わずもがな兄妹という境界線がある。どうやら神は俺らに何か恨みでもあるんだろうか……?




