幼馴染と惚れた弱み
結愛は一旦家に帰った後、着替えた後にすぐ俺の家に来て夕飯を作りに来た。着替える時間は必要なのかと思うが、結愛曰く「アクシデントでエプロンしてないところに油とかがついたら大変でしょ!」とのこと。
否定は出来ないけど、それ絶対実体験だろ。じゃないとそんな考え思いつかないと思う。
「そういえば蓮ってお昼っていつも食堂?」
「ん?大体は」
結愛は弁当も自分で手作りしてる。俺は食堂を利用してるけど。たまに購買でパン買ったりして食べるときもある。
「どうせラーメンとか唐揚げが多いんでしょ、育ち盛りの男の子だとしてもそんなんばっかりだと栄養偏るよー?」
お前は俺の母さんかよ。確かにラーメンや唐揚げやカレーが多いけどさ。
「よかったらたまには私がお弁当作ってあげようか?1つ作るも2つ作るも苦労は変わらないし」
は?いきなり何を言い出すんだよ、この幼馴染は。
俺の健康を考えて?いや、そんなことこいつが思うか?
「な、なんでいきなりそんなこと……」
「だって、もしもお昼食べたものと夕飯作ろうと思ったもの被ったらそれ作れないし」
……あぁそうだったな!こういう奴だよこいつは!!
少しでも意識して、期待した俺がバカだった!単に自分の効率のためかよ、俺の健康を心配してくれたかと思い違いしてた俺がアホらしいわ。
「それにさ、体調とか崩したら心配しちゃうじゃん」
〜〜っ!こいつはっ……!上げて落とす天才かよっ!
いちいち思わせぶりなことしといてっ……!俺の気も知らずにっ……!いつも結愛に振り回されるのも、惚れた弱みというものなんだろうか……?
「でーきたっ♪」
オムライスが出来上がったのか、声をあげてオムライスを俺の方に置くと、ケチャップで器用に「いいことある」と書いていた。なんだよこのメッセージは。
「なにこのメッセージ」
「なんか帰る時自転車で転んじゃったし、変だったでしょ」
お前のせいだよっ!と言えないのが悲しい。なんか心配されてたり気にしてくれたのが嬉しいけど、こいつの鈍感さにイライラして来るんだよな。いちいちこんなこと考えてもしかたないってちゃんと頭では理解してるんだけど。
「気にしすきだろ」
そう言いながらオムライスを食べる。料理は相変わらず美味いし、料理に免じて許してやるか。料理1つで許してやるとか、やっぱりこいつに弱いっていうか甘いっていうか……。やっぱこういうの惚れたもん負けって言うんだろうか……?その結愛は俺のことただの腐れ縁の幼馴染としか思ってないんだろうけどな。
「?どうかした?卵の殻でも入ってた?」
「いや、別に入ってねーよ」
思うのは味の心配でなく卵の殻かよ。まぁ自分が食べてて味おかしかったら気づくよな。そんな話をしていると結愛は俺に質問を投げかけてきた。
「そういえばさ、蓮帰るとき好きな人がどうのって話してたじゃない?」
突然その話を持ち出すか!やめろよ心臓に悪い話を蒸し返すな!そう言えたらどんだけ楽だっただろうか……!そう思うが表情は極力澄ました顔で俺は応える。
「それがどうしたんだよ」
「もしかして蓮、好きな人いるの?」
「ゴホッ!ゴホッ!」
突然好きな人がいるのかと言われてさすがに咳き込む。俺の好きな人いるも何も今目の前にいるお前ですけど!?言えないけど……。
「大丈夫?」
「へ、平気……突然なんだよ」
突然突拍子もない質問してきやがって。マジで心臓に悪いわ。いくらなんでもこんな振り回され方は勘弁してほしい。
「うーん、そんな話持ち出すくらいだから蓮は好きな人いるのかなって思っただけ」
そんな興味本位にそんな話を持ち出すなよ。俺がどんだけ動揺してるか知らないだろお前は。
「べ、別に……俺だって聞いただけだったし……それに、お、俺も……」
俺も今は結愛がいるし、と素直に言えればどれだけよかっただろうか……。そう言いたいけどつい照れしまってその言葉を飲み込んで、別の言葉が出てしまう。
「俺は今はお前の世話で忙しいからそんな余裕ねーし」
「ご飯作ってあげてるんですけど!?」
「皿洗いと部屋片付けてやってんのも、勉強教えてやってんのは俺だろ!」
結愛は中間テスト前に俺に泣きついてきたからな。テストの範囲の勉強教えてほしいって。期末も同じことになるのは想像に難くない。
「うっ……それはそうだけど〜……」
言い訳苦しいかと思ったけど、どうやらテストの話は効果てきめんだったらしくて、結愛は言い訳が見つからずバツが悪そうに顔を逸らす。そんな顔されると俺が悪いみたいじゃんか……。こいつ本当に俺を惑わすのが上手いっていうか……。無自覚でこれだから恐ろしいんだよな。結愛に甘いのも弱いのも惑わすのが上手いって思うのも、全部惚れた弱みってやつだろうか……。だとしたら本当に厄介なもんだ。恋ってものは。そりゃ今年に突入して俺の恋は6年目に突入だよ……。俺は小学生からずっと好きだったんだよ。
我ながらよく6年もこじらせてると思う。
「飯終わったなら帰った帰った、じゃあまた明日な」
「もうわかったよ……また明日」
このままだと余計なことを言いかねない。そう思った俺は、結愛を俺の家から出した。パタンとしまったドアを見つめて数秒後、ため息をつきながら俺はしゃがみ込む。危な……。小学生の頃まではともかく3年よく手を出してなかったと思ってる。もう今日は早く風呂入って寝よう。




