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幼馴染と夏の終わり

夜空に上がるたくさんの花火を結愛と俺は眺める。みんなはどこにいるんだか……。でもこういう時は下手に動かないのが一番だ。下手に動いたさらに厄介ことになりかねない。俺と結愛がはぐれたり、入れ違いになったり、さらに距離が遠くなったり。なら動かない方が賢い選択だろう。


「ふぅ……暑……」


そういえばさっきから結愛は飲み物を口にしてない。

のど渇かないのか?いや、渇かないはずないよな……夏だし。


「結愛、のど渇いてないのか?」


「渇いたけど……」


そういえば巾着に入り切らないから、射的で取ったやつを手に持ちっぱなしで……。脇に挟むとか……。


「脇とかに挟めば?」


「交渉中……」


何にだ。身なりに?


「左手に?」


「取り出しやすさに!」


確かに袖が開いてるから取り出しにくくはなるのかもしれない。しょうがないな。俺は結愛が右手に持ってたペットボトルを取り、キャップを開けた。逆に俺のは脇に挟んだ。


「ほら、夜でも熱中症なるぞ」


「あ……」


結愛はペットボトルを受け取る。


「ほら、箱」


いくらなんでも、子供みたいにキャップを閉めてもらうのは結愛も嫌だろうし。


「……あげないからね?」


「返品不可の方向で、それに返されても困るだけだっての」


そう軽口を叩きながら、俺に箱を預けてくる結愛。

それにしても、本当に浴衣似合うな……、普通に見たらモテる容姿だし……。意地悪ばっか言う俺なんて本当は結愛に釣り合うわけないのかもしれない。


「蓮この間彼氏とかの話、したよね」


したはしたけど、なんで今その話を持ち出すんだ?


「なんで今?」


「私さ、ワガママだし不良品だから」


俺の返品不可の方向とかでかけてきてんのか?結愛らしいというか、なんというか……だな。


「欠陥品だし貰い手なんて見つからないと思うし……」


この時に、貰い手がないならもらってやるとか……言えたら苦労しないよなぁ。


「んなわけねーって」


そう言うと、俺の小指に自分の小指を絡めてくる結愛。さすがに少し動揺をするけど、頑張って平静を保つ。結愛をちらっと見ると目を逸らしている。


「でも幼馴染としても、返品……とか不可だから……」


「……誰にも譲る気なんてないから……俺は」


勢いあまって告白しそうになったその時、電話の着信音。あれ?まさか花火終わった?


「も、もしもし!?めぐ!?」


月島に感謝するべきか恨むべきなのか……。その後凛斗達がいる神社の方向に行き、全員で合流すると河川敷の方に行って花火をすることになった。


「俺らと逸れてる間にちゃっかりお前は告白しやがって……こっちはほぼ進展無しだぞ」


「宮、宮、本音が漏れてるぞ」


凛斗が宮の本音が漏れてることにツッコむ。宮安心しろ、俺なんて6年間進展なしだったんだから。4年くらい片思いしてて進展0なんてまだいい方だ。自分でも拗らせてると自覚はしてるんだよ。


「あの、最後みんなで線香花火誰が長いか勝負しない?」


初野が、話しかけてきた。


「美紅ちゃんがそんな提案するなんて珍しいね」


久遠がそう言うと初野はちらっと目をやる方向には、あの3人。


「提案はめぐから……」


うん、初野より月島の方が言いそうではある。それにしても誘ってくるのは珍しくはあるけどな。まぁ、それもいいかもなと思って俺たちもそっち行く。


「そういえば線香花火って落ちなかったら願い事が叶うって言うよね」


俺の隣で線香花火をしながら結愛が言う。そんなんで叶ったら苦労してないと思うけどな。


「それ迷信な」


「それでもいいじゃん、夢叶えるモチベは上がると思わないわけ?」


モチベなぁ……。そう話して少しすると結愛の線香花火の炎の小さい玉が落ちた。


「あ、落ちちゃった……」


少し悲しそうな顔をするが結愛は俺の線香花火の光を見つめる。結構続いてる方だと思う。結愛の顔を見ると、俺の線香花火の淡い光に照らされてる。なんか……その横顔、思い出す。忘れるわけない、俺が結愛に抱いてる気持ちが恋だと、そう気づいたあの日を思い出すんだ。あの夕焼けに染まった結愛の横顔で……いいや…違うな。その姿に、恋だとその時やっと気づいたんだ。


「蓮は願いごとないの?」


「んー……今は特にないし」


恋の成功率を願うなんて、ありきたりだとは思うけど……ただの迷信であれどそんなものに頼る気はない。だから……。


「……結愛の願いごとが叶いますように……てことにしとくよ」


「それ、私が努力しなきゃいけないじゃん」


「応援しといてやるよ」


そう話してると俺の線香花火の火が自然に消えた。


「お、蓮が一番だな」


気づくとみんなの火はもうとっくに落ちていたようだ。心の中で話して結愛と話てたから気づかなかった。あとほとんど俺の火しか見てなかったし。それにしても、6年越しにまた俺は結愛への想いを再確認した。再確認しなくたってわかってたのにな。結愛が好きだって……。そんなの再確認しなくなって分かってるっつの。もう少しで夏が終わる……。夏休みが明けたら2学期か……。


「よし、みんな帰ろっか」


久遠のその声を合図にみんな、解散になった。と言っても浴衣返した後にだけどな。終電前には間に合うから大丈夫だ。

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