大切な存在(凛斗・恋花)
はぐれた私と凛斗くんは、お祭り会場の先の神社の方にいた。と言っても凛斗くんが「ここで待ってて」と言ってどこかに行ってしまったけど。多分みんなを探しに行ったんだと思う。
「いたっ……!」
それにしても慣れない下駄を履いて足挫くとかやっちゃったなぁ、我ながら情けない……。髪も乱れてボサボサだ……後で結び直そう……。足を挫いたの凛斗くんに気づかれてないといいんだけどなぁ。
「恋花、お待たせ」
「凛斗くんっ……!」
誰かと合流出来たのかと思ったけど、誰とも合流してないのか1人だった。
「やっぱりみんなは祭り会場辺り歩いてるのかもしれないな」
「じゃあ急いで探さないと……」
足が痛いのを我慢して痛くないふりをして、私は立ち上がろうとしたが、凛斗くんの手によって再び座らせられた。
「急ぐのはこっち」
そう言ってしゃがみ込むと持っていたビニール袋から消毒液とガーゼと包帯を出す。
「足痛いの我慢してただろ?近くに薬局あったからさ」
もしかしてこれ買いに行ってたの……?私のために……?ここで持たせたのも、私が歩くのキツイと思って……?
「ちょっと染みるかもしれないけど……」
消毒液をガーゼに含ませ、私の足に優しく当てる。
さすがに少し痛むが、なんとか声を出さずに我慢する。その後優しい手つきで、包帯を巻いてくれる凛斗くん。うぅ……迷惑かけちゃったなぁ。やっぱり情けなくなりしょんぼり落ち込む私の手から、ヘアゴムを取り、後ろに回る凛斗くん。
「えっ!ちょっ!凛斗くん!?」
「髪、触っても平気?」
「いや、大丈夫だけど……」
平気とかそういう問題じゃなくて!そう言いたいが既に私の髪をまとめ上げる凛斗くん。なんか世話かけてばっかりだなぁ。
「凛斗くん嫌じゃないの?義理とは言え兄妹の面倒みるなんて……」
「関係ないって、恋花じゃないとここまで気にかけないよ」
それは一体どういう意味なんだろうか……。自惚れてしまいそうになるが、その考えを振り払う。さすがに髪を結んでもらってる状態なので、頭を振ることはできないが。
「恋花は大切な存在なんだよ」
花火が打ち上がる中、私にそう言う凛斗くん。後ろにいるからどんな顔をしてるか分からないけど、きっといつもと変わらないんだろうなぁ。
「気分とか悪くない?」
「う、うん……」
気分とかは問題ないけど、精神というか心臓というかそっちの方に問題が……。気にしすぎなのは自分でも分かってるんだけど……。私の髪を綺麗に結び直してくれた凛斗くんは、ストンと私の横に腰を下ろす。
「下手に動くと大変だし、人が減るまでここで花火見てよっか」
つまり花火が終わるまでってことだよね?花火の途中で帰る人ってそうそう見かけないもん。ドンッドンッと花火が打ち上がる。緑、赤、青。色とりどりの花火を見上げながらも昔のことに想いを馳せる。凛斗くんは昔私と会ったことを覚えているんだろうか……?
私のことだと覚えてなくても、せめてフランスで日本人の女の子と遊んだことくらいは覚えていでほしい。
そう思う自分がいる。そう思っていると、凛斗くんが話し出す。
「なんか恋花見てると思い出すんだよね、昔フランスで一緒に遊んでた女の子のこと」
それ私だよ……と言いたいけど。そもそも私と覚えてない時点で、久しぶりとかの言葉を私は飲み込んだんだから。
「顔とか声とかもよく覚えてないんだけどさ」
あぁ、なるほど……。だから見ても思い出してくれなかったんだね。
「でも、なんか今でもぼんやりとした昔の夢を見るんだよね、なにを話してるのかは分からないけど指切りをしてるんだ」
それは私と凛斗くんが多分、結婚の約束をしてるときの話だと思う。凛斗くんが「大人になったら結婚こしてくれる?」と言って、私は「うん!してあげる!私もあなたと結婚したい!」と言ったとき、指切りをしていたもの。そりゃ小さい頃の約束ではあったけど、私はずっと覚えている。私の恋はずっと初恋のまま。
あの日のまま、色褪せることない恋したてのままだ。
自信を持って言える。これは恋に恋してたわけじゃない、小さかったけれど本気の恋。
「いつかなにを話してたのか知れたらいいなぁ、なんだかんだすっごい大切な話の気がするんだよね」
「指切りしてたなら約束なんじゃないかな……?」
それとなく私は本当のことを話してみる。ただし自分ということは伏せて。
「約束ならそれは本当に大切な話だから思い出さないといけないなぁ」
小さいながらの結婚話……は大切な話にカウントされるんだろうか?小さい頃の話でしょ?とか言われてしまったらそれまでだから、私はそんな言葉を口にはしない。約束のことは思い出さなくてもせめて話してた子が私だということくらは思い出してほしい……。
それだけでもワガママな願いなのかな……。緑の花火が上がる時に私は願った。昔フランスで凛斗くんと遊んだのは私、それで結婚の約束をしたんだよって……。そのことをどうか思い出してほしい。
花火が終わった頃、凛斗くんが綾音くんに電話を掛けたが通話中で、私がスマホで美紅に電話をかけて神社の方にいると話すと、その神社に集合することになった。




