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グリーンの花火(久遠・美紅)

まずいな……。みんなと確実にはぐれた……。不幸中の幸いで初野さんは俺の隣にいるけど……。どうしたもんかなぁ。下手に動くと俺達もはぐれかねないし……、電話を試してみたけど電波が混み合っていて繋がらないみたいだし。俺としては2人っきりになれて嬉しいとも思ってしまうけど、初野さんはそうでもないと思うし。空を見上げると赤や青や黄色。様々な色の花火が上がっている。


「……花火、綺麗だね」


初野さんが花火を見て言う。初野さんはやみくもに動き回ると危険だと判断したのかもしれない。


「知ってる?グリーンの花火に3回願い事をすると叶うっておまじない」


流れ星は聴いたことあるけど、花火は正直初めて聴いたなぁ。グリーンの花火か、俺が花火を見上げると丁度グリーンの花火が上がった。


「……願い事……ないの?」


そう言われると……、俺は静かに言う。


「初野さんといる事……もう叶ってるし……」


「えっ……!」


初野さんに少しでも気づいてもらいたい……。そう思うと自然に俺は口から言葉が出ていた。会ったことを気づいてもらいたくて。


「俺さ、幼稚園の頃苗字とかクォーターで目の色も珍しかったからいじめられてたんだ、俺はその頃は口下手でさ、でもいじめられてたとき助けてくれた女の子がいるんだ」


初野さんは静かにその話を聞いてくれてる。君が「いじめなんてやめて!」と、そう言ってくれた言葉を覚えていてくれるなら。


「いじめっ子の前に飛び出してさ「いじめなんてやめて!」って言ってくれたんだ」


「くお……くん……?」


「くおくん」それは、俺の幼稚園の頃のあだ名。いじめっ子は「あやねちゃん」とからかっていたが友達は「くおくん」と呼んでくれた子が多かった。覚えていてくれたんだね。


「初野さん、ううん、美紅ちゃん……あの時助けてくれてありがとう、俺すごく助けられたんだ」


これでやっと、君に伝えられる、君への想い。伝えるなら今しかない。例え断られたって構わない。


「は、花火!まだ1回しかお願いしてないよ!?それにその願い事……勘違いしちゃうから……」


「勘違い……してもいいよ?多分、勘違いじゃないし」


このチャンスは絶対に逃さない……。ズルくてごめん、逃げ出せない展開で告白するなんて卑怯かもしれないけど……。それでも今しか伝えられない。


「美紅ちゃん、あの時からずっと君が好きです、付き合ってください」


グリーンの花火の他にも、黄緑や黄色が上がる中、俺は美紅ちゃんに告白をした。ムードとしては申し分ない……。後は美紅ちゃんの返事次第……。


「っ!」


俺の言葉を聴くと美紅ちゃんは口を押さえて顔を赤く染める。その後に目を逸らして「えっと……その……」ともじもじとして中々答えが聴けない。蓮や宮や凛斗には散々ほぼ両思い確定だと言われているけど、答えを聴くまではやっぱり緊張してしまう。


「美紅ちゃん、今返事が決まってるなら……聴かせてくれないかな?」


凛斗みたいに余裕な感じがあれば、急かすようなことは言わないだろうけど、生憎俺はそこまで人間ができているわけではない。完璧イケメンだとか、王子だとか、そんなのは見てくれだけで、中身は王子やイケメンとは程遠い。


「……あ、ありがとう……すごく嬉しい……それでその……」


もしその言葉に続く言葉が「ごめんなさい」であっても、俺は美紅ちゃんに恋してよかったと心から思える。絶対に後悔なんてしない。俺は確かに救われたし、10年持ち続けてきた想い。この想いは大切だと思っていたから。


「私でよければ……お願いしますっ……」


「っ!〜〜〜〜〜はぁっ……!」


その言葉を聴いて俺はついしゃがんでしまう。返事を聴くまで脚が震えていたのは気づいてたけど、まさかここまで緊張していたとは……。正直びっくりしている。それにびっくりして美紅ちゃんが俺に駆け寄ってくる。


「く、くおくん!大丈夫!?」


「だ、大丈夫……ごめんねカッコ悪いとこ見せちゃって……!」


俺は照れながらも立ち上がって再び、花火に目を向ける。俺の願い事、1回で3つも叶っちゃったな。美紅ちゃんといれること、俺のことを思い出してもらうこと、そして……俺の恋が叶うこと。蓮、宮、凛斗ごめんね。俺の恋叶っちゃったや。未だに意識されてなさそうな蓮と宮がすごく同情してしまうけど……今は、この幸せな時間に浸ってても許されるよね?


「美紅ちゃんは?何か願い事ないの?」


「……くおくんのこと……ちゃんと……久遠くんって呼んでもいいですか?」


そんなの花火にじゃなくてもいつでもそう呼んでくれて構わないのに。


「もちろん!」


「じゃあえっと……よろしくお願いします……く、久遠くん」


俺はその言葉を聴くと微笑む。夏休み終わったら噂になっちゃうかもしれないけど、それはそれで仕方ないと思うしかないのかもしれないなぁ。そう思っていると花火が終わり、少し人が少なくなった時にスマホが震える。


「もしもし」


『もしもし久遠!?お前誰といる!?今どこ!?』


宮だ、めちゃくちゃ焦ってる。このあとポロッと俺が美紅ちゃんと言ったことにより、宮に問い詰められて、俺と美紅ちゃんが付き合うことは6人にあっさり知られてしまった。

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