幼馴染は気付く(結愛視点)
あれから私はろくに蓮と話をせず、美紅たちと話してた。でも面倒なことになる。だって、私と蓮は他の人達と降りる駅が違うんだから、私と蓮二人っきりだと無言になる。現に今無言で蓮と歩いてる。今日は私の家にはお母さんがいるけど、蓮の家は相変わらずいないからうちにご飯食べに来ることになってるし。
「海から帰るときはまぁまぁ耐えれたのにやっぱり歩いてると暑いな」
「……うん」
自分だってなんでこんなにイライラしてるのか分からない。紗菜ちゃんと付き合ってるなんて本当に知らなかったし。話してくれてもよかったんじゃない?と思うけど、それとは違うモヤモヤした感じもある。ただ単に話してくれなかったってだけでなら、こんなにモヤモヤすることもないのに。
「お母さんただいま」
「お邪魔します」
「結愛、おかえり!蓮くん、いらっしゃい!」
家に着いて玄関開けるとお母さんが元気に言う。お母さんは、栗色のロングの髪をボリュームがある1つの三つ編みに赤い瞳をしている。私の瞳の色はお父さん譲りだ。
「お夕飯冷麺でいい?」
「嫌って言ったところでメニュー変わらないでしょ、別に冷麺でもいいけど」
そう言いながら私は靴を脱いで部屋に行く。てが今まで夕飯に文句つけたこともないけどさ。食べれればいいっていうか……。自分が作る側になって、初めて有り難みが分かったっていうか……。すると蓮が私の部屋のドアをノックして開ける。
「結愛、俺お前にモバイルバッテリー貸したままなんだけど」
スマホを見て気づいたのか蓮がそう言ってくる。そういえば今朝充電し忘れて蓮にモバイルバッテリー借りてて返すの忘れてた。鞄を開けてモバイルバッテリーを返すと蓮は「まったく俺のだろ」と言いながら鞄に仕舞う。そこで私は気づいた。このモヤモヤの理由の1つ、私は紗菜ちゃんと蓮が付き合っていた事実を知った瞬間、私は確かに紗菜ちゃんに対して思ったことがある。「蓮は私の幼馴染なのに」って。ただ単にそう思ってしまった。これがモヤモヤとイライラの原因の1つなのかもしれない。でもそれだけじゃない気がする、いや……それだけというより、それよりももっと深い……。「私の幼馴染」と思うより、もっと深い何か……簡単に言うと「蓮は私のなのに」そんな感じだ。私のなのにって別に付き合ってるわけでもないのに、こんなんまるで私が蓮のこと好きみたいじゃん。
好き……?私が……蓮を……?そう思っていると妙に腑に落ちてしまう。でもそんなこと……!だって蓮はただの幼馴染で、腐れ縁なだけで……。
「なぁ結愛、俺なんかした?買い出し行った時からお前なんか機嫌悪いだろ」
「別に、そんなこと……」
「嘘つけ」
蓮は目を逸らしてた私の顎を掴んで、無理矢理目を合わせる。
「お前嘘つくと、目線が左下に向く癖がある」
幼馴染ってこういう時に面倒だと思う。自分が気づいてる癖から気づいてない癖まで、全て見抜かれてしまう。体調が悪い時、恥ずかしい時、嘘をつく時、色んな癖を知られて、こういう時すぐ気づかれてしまう。ここまで言われてしまえば、白状するしか道は残されてないから、私はゆっくりと口を開く。
「……なんか、紗菜ちゃんと付き合ってないって聞いてなかったこと許せなかったの、蓮大体のこと私に話してくれるし、なのに夕飯作りに行っても遊びに行ってもなんも言わなかったし」
モヤモヤした、だとか「蓮は私のなのに」とか思ったことはあえて口に出さず、私は素直に許せなかったという事実を口にする。
「あー、そのこと?気づいたら付き合ってたって感じだし、別に好き合って付き合ってたってわけでもないから言わなくてもいいかなって思っただけだったんだよ、そこまで気にするとは思ってなかったんだけど……悪いな言ってなくって」
そんな風に素直に謝られると怒ってた私がバカで子供みたいに思えてくるじゃん。
「まぁ……分かってくれるならいいけど……」
素直に謝られるとそれ以上怒る気にはなれなくて私は許した。でも気づいてしまったことが1つだけある。
「結愛〜、蓮く〜ん、ご飯できたわよ〜」
「あ、はーい!ほら結愛行くぞ」
「うん、先行ってて私も着替えたらすぐ行くから」
私は静かに蓮に返事を返して、部屋に1人になると、服を着替えて下に降りる。そして蓮を見て、自分の気持ちを再確認する。ああ、認めざるを得ない。こんな感情、気づきたくはなかったのに。でも、認めるしかないじゃん。蓮といると安心したりして、他の誰かに取られたくない……。私の側から離れないでほしい。それは幼馴染故の執着とかドロドロした依存とは違う。
人によってはもっと複雑で人によってはとても単純なこと。こんな気持ちは私にとってはきっと初めてのこと、側にいてほしい、一緒にいたい、誰にも取られたくない。『これ』ってこんなに独占欲を持たせるんだね。これの気持ちが、あの感情じゃないというのならなんて呼ぶのが教えてほしいよ。これは紛れもなく……『恋』だ。こんな感情私は『恋』以外に知らない。私、花園結愛は、16年間側にいた幼馴染の、不知火蓮に恋をした。




