幼馴染とアイス
夏休みが始まり1週間、息ができないのではないかと思うくらい暑い外とは違い、クーラーをかけた部屋はひんやりとしていて涼しい。で、そんな涼しい部屋の中でいる俺と結愛はというと。
「あ、待って……!そこ、ダメッ!」
「ダメって言ってもなぁ……」
「待って速すぎるっ!」
言っておくが決していやらしいことをしているわけではない。そもそも俺が結愛のことを好きであっても、結愛の想いも確かめず同意もなしでそんなことするわけがない。ただ単にパズルゲームをしているだけだ。
結愛の速いって言葉もパズルの落ちてくる速度が速いってことだ。
「よし、俺の勝ち〜」
「ちょっとは手加減してよぉ!」
そしてなんで俺達が部屋の中でゲームをしていたのかというと、くだらないことではあるが賭けをしていたからだ。
「んじゃ、アイスゴチになりまーす」
ゲームに負けた方がアイスを奢るという賭けだ。別に俺が仕掛けたわけではない。結愛が仕掛けてきたし、このパズルゲームを選んだのも結愛だ。よって俺は何も悪くない、うん、そう思わないといけない気がする。
「しょうがないか、約束だもんね……でも高いやつは無しだからね!」
「へいへい」
そう言って涼しい部屋から出るとむわっとした蒸し暑さ。一瞬にして立っているだけでも汗がじんわり滲んでくるほどの暑さだ。去年ってこんなに暑かったか?
俺は半袖のTシャツにハーフパンツ。結愛は半袖の膝までのワンピースで、涼しく見える格好ではあるけどやっぱり半袖でも夏は暑いわけで。玄関のドアを開けると更に日差しが照りつけてくる。
「うあ、あっつー……」
結愛がそう言って日傘を取り出す。ちなみに今日いたのは結愛の部屋だ。
「ほら、蓮の方が背ぇ高いんだから持ってよ日傘」
でも自分だけ日差しから守ろうとしないとこはやっぱり優しいんだよなぁ。遠慮なんてしたら「じゃあ私も日傘差さない!」とか言いかねないしな。俺は結愛から日傘を受け取り、2人でコンビニまでの道を歩く。
「でもさ、コンビニでもアイスって種類たくさんあるじゃん?一緒に行って面倒とか思わなかったわけ?」
「でも見て選びたくないか?」
「それは分かんないでもないけど」
食べるアイスは決まっていても、やっぱり見て決めたい。例えばこっちのバニラアイスが好きだけど、今の気分はこっちってことあるし。誰でもそんな経験はあるだろ。コンビニについて店内に入るとクーラーがガンガンにかかってて気持ちいい。なんてことない瞬間だが、こういうときの感覚は至福というか、快感というか……。
「私これにしよっかなー」
結愛が選んだのはアイスバー。たっぷりミルクバー。
濃厚なバニラアイスだ。甘い物好きな奴は好きだろうけど、甘い物苦手な奴は口に合わないアイス。
「俺はこれにしよ」
俺が選んだのはソーダ味のアイスバー、中には小さく砕かれたフルーツが入ってる、みかんやいちごやその他……。
「蓮って本当そのアイス好きだよね」
「結愛こそそのアイス好きだろ」
「まぁね」
アイスやジュースを冒険する人もいれば、しないタイプもいる。冒険した結果失敗するケースもあるからな。中学の頃の友達にチョコミント好きなやつがいて、どんなもんかと思って食ってみれば、全くと言っていいほどチョコの味がしなくてミントというか歯磨き粉の味しかしなかったのはよく覚えてる。あの日以来、金輪際ミント味の食べ物は買わないと決めたくらいだ。ちなみにその話をあの3人にしたら久遠がまさかのチョコミント派だった。まぁ久遠は理解あるやつなので「チョコミントは好き嫌い分かれるからなー」と言っていたから救われた。結愛が会計を済ませて俺に買ったアイスを差し出す。帰って食べたら溶けてそうだしな。
「そういえば蓮はどれくらい宿題進んだ?」
「まだ始まって1週間だろ」
進んだって言ってもまだワークどれも7ページしか進んでねーっつの。高校の宿題は中学よりは大分少ないけどプリントやワークや読書感想文などはあるし。
「えー?私は英語の現代文と古典のワークと読書感想文終わらせたよ?」
早くね?夏休み始まって1週間だぞ?しかも夏休みになっても昼メシに夕飯も作ってんのに。
「結愛、お前何時に寝て起きてんの?」
「え?んー……1時に寝て8時くらいに起きてるかな」
平均的な睡眠時間ではあるけど、平日よりちょっと遅いくらいか。
「てか早く食べないとアイス溶けるよ?」
「おっと……」
溶ける前に食べないとな。アイスを口に入れるとひんやりとしていてソーダの味と口に入ったフルーツの味が広がる。うん、美味い。結愛を横目で見ると自分のお金と言えど好きなアイスを食べていてご機嫌って感じだ。周りにそれほど木はないもののセミの鳴く声が聞こえる。と言ってもアブラゼミの声が多いけど。
ツクツクボウシやミンミンゼミより聴く頻度はそりゃアブラゼミの方が多いよな。
「セミの声すごいな」
「だね、セミの音ならヒグラシの音が好きかな、切ないけど涼しげで暑く感じないし」
ヒグラシが鳴くのはまだ先のほうだけど、夕方の時に鳴くヒグラシは確かに風情がある気がする。そんなことを思いつつアイスを食べながら俺たちは家に帰る。




