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幼馴染と喧嘩するほど

あの日、結愛が抱きついてきたこと以外は特にこれと言ったことはなく、その日の翌日には雨も風も止んでいて、結愛は何事もなく帰って行った。そして月曜の昼休み、飯を食い終わり俺は約束通り、凛斗にジュースを奢っていた。凛斗が選んだのは紅茶で俺たちは話しながら教室に帰る……と。さっきまで俺たち宮といたよな?ズーンと効果音が付いてそうな宮がいる。俺たちがいない数分の間に何があったんだ?


「久遠……宮どうしたんだ?」


「いや……実はさっき月島さんが男子から呼ばれてさ」


なるほどな、宮からしたら気が気ではないよな。まぁ告白するやつも少なからずいるよな、そこの2人が幼馴染ってこと知ってるやつは知ってるし。顔は確かに可愛い方だし、スタイルはよくないと言ってたけど、出るところはそこそこ出ていて引っ込むところはそこそこ引っ込んでるという極端に悪い……というわけでもない。まぁそんなこと口に出せば宮に殴られそうなので言わないけど。


「宮……大丈夫だって……月島がそいつのこと好きでもない限りは……」


とりあえず宮を慰めようと思って、宮に声をかけると宮はピクッと肩が反応する。過剰じゃね?


「いや……おかしいだろ……前に言った通りあいつはスタイルもよくないし、ガサツだし、料理も俺の方が出来るし、泣き虫だし、取り柄と言えば顔が可愛いのと明るいとこくらいしかない」


落ち込んでるのかと思いきや、めちゃくちゃ難癖つけてた……。宮って月島のこと好きだったよな?長年気づいてもらえないせいだろうか……。俺はなんかもう慣れたまであるけど……。


「絶対遊びか罰ゲームにしか思えねぇ……」


月島は確かにモテるとまではいかないけど月島がモテないことを正当化しようとするなよ……。さすがに月島がちょっと可哀想だぞ。


「ちょっと宮そこまで言う?」


話しかけてきたのは話題だった月島。噂をすれば何とやらってやつかな……。


「おかえりなさい、何の用だったの?」


「これ」


久遠が微笑みながら、問いかけピラリと見せてきたのは水色の封筒だった。ラブレター……だろうか?今時直接ラブレターなんて古風というかロマンチックというか……。回りくどいとも言えるか……。


「美紅へのラブレターだよ、渡して来てほしいって」


……なるほど、渡す勇気が出なくて友人である月島が託されてしまったと。


「というわけで、宮が思ってるようなことではないでーす、そこまで言われるとガチ告白の方がよかったけど」


そこまで言うと宮は復活したようで、話しかけてきた月島に反論するように言葉を交わす。


「お前は初野ほど可愛くもないしスタイルもよかねーし、ガサツだし、料理も俺の方が上だし、泣き虫だろうが、んな面倒くせー奴好きになる奴いるかよ」


「酷くない?天に召されろバーカ!!」


「でっ!!」


と脳天にグーパンされて行った。はたから見てて喧嘩に見えるかもしれないけど、放課後にはいつも通りになってるから多分これくらいのことは2人にとっては些細な言い合いなんだろう。入学して友達になりたてだった時、宮と月島の言い合いを見て平気なのかと問いかけた時だって「あれくらい日常だから」と宮はケロッとしていた。宮の言う通り放課後普通に話していたから。月島としてはグーパンでおあいこってとこなんだろうか?


「今のは宮の方が悪いね」


「あれだけの愚痴言われてグーパンで済むなんて優しい方だろ」


「いや…こんなことで喧嘩してたらキリないことわかってるだけだよ、めぐも文句は言うけど、俺の口の悪さなんて知ってることだからな」


久遠と凛斗の言葉に、殴られたところをさすりながら宮は話す。俺が言えたことでもないけど、もう少し月島に優しくしてやれよ、気づかれてない理由も、月島のことスタイルはよくないとか、ガサツだとか、料理も俺の方が上手いとか、泣き虫とか言ってるせいな気がするけどな……。もう少し優しくすればもしかしたら少しくらいは気づいてもらえるんじゃないか?まぁ……今さらそんなことできないかもしれないけどさ。


「でも宮ってさ……」


久遠がそこまで言うと月島の声が耳に届いた。


「ヤバい!シャー芯もうない!後2限あるのに〜!」


そこまで言うと宮が筆箱からシャー芯を持って月島のところに行く。


「だからちゃんとなくなる前に買えっつったろ、ほら俺の貸してやるから放課後買いに行くぞ」


「……月島さんが困ってると誰よりも早く助けに行くよね」


確かに他の人が困っていてもあれだけ早く駆けつけないよな宮って。それでも月島は気づいてないけどな。

まぁあの言い合いは喧嘩するほど仲がいいということなのかもしれない。俺と結愛はあんまり喧嘩はしない方なんだけどな……。そもそも結愛はあんまり細かいことを気にしないタイプだし。宮たちみたいに俺の言うことなんて分かってることだからってのもあるんだろうな。それにしても好きな奴のピンチに真っ先に駆けつけるなんてヒーローみたいだな。


「ねぇ、蓮」


宮と月島を眺めながらそう考えてると、結愛が話しかけてくる。


「結愛?どうした?」


「テスト勉強なんだけどさ、理数系重点的に教えてくれない?」


「ん、分かった」


中間テスト〜期末テストは中学の頃から結愛とやってるからな。俺は理数系が得意だが苦手科目は現代文と英語が苦手だから、そこは結愛に教えてもらっている。   


「蓮も花園さんと本当仲いいね」


「えー?腐れ縁なだけだよ〜」


うん、知ってた。結愛はこういう奴だ。今さら腹立ちもしない。もう怒りを通り越して呆れがやってくる。

宮たちとの決定的な違いはここかもしれない。

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