幼馴染と夜
結愛がもう疲れたらしく、部屋で先に寝ると言って部屋に行ったけど、俺も部屋で寝るしかないんだよなぁ。先に寝るならこのままリビングで寝てもいいと思うかもしれないけど、仮にもリビングが寝たのがバレたら怒ると思うし……。とりあえず俺が変な気起こさないためにあいつが寝るまで適当に時間を潰すしかない。寝込みを襲うなんてする気もする勇気も俺にはない。
『……で、俺に電話してきたと?こんな時間に何かと思えば……』
「お前の就寝時間より、俺の理性保つほうが大事だ」
『ひでぇな』
俺が電話をかけた相手は凛斗、健康優良児の久遠は夜10時には寝るような奴だ。もう11時、完全に寝入ってる時間だ。電話かけたとしてもスマホは充電中で、繋がらないだろう。宮は「夜8時以降は電話をかけてくるな」と以前言っていた。まぁ宮には弟と妹もいるし色々事情があるんだろうなと思って、その理由は聞かなかった。なら、消去法でかける相手が凛斗しかいなかった。凛斗は好きな奴とひとつ屋根の下にしてよく平気だな。兄妹といえども義理で本当は他人だぞ?
凛斗にそう伝えると夜だからか控えめに笑いながら応える。
『まぁ慣れりゃ大したことないって』
慣れでどうにかなるものなのかそれは。仮としても兄妹って壁がブレーキを掛けてるとかではないのかよ。
じゃあ一緒に住みたてのときはどうだったんだか……。そんなこと言ってもやっぱ兄妹と幼馴染とは違うのかもしれない。宮に電話できればもう少し違ったのかもしれない。
『諦めて一緒に寝るしかないだろ?』
「あいつ寝るまで電話に付き合ってもらうぞ」
『具体的には何時までだよ?』
そう言われて考える。あいつは久遠ほど早くは寝ないけど、遅すぎるってこともない。翌日が休日の日は少し夜更かしをしているから……。それを踏まえて考えると……。
「……1時くらい?」
『思いっきりド深夜じゃねーか』
ツッコまれるとは思ってたけど、仕方ねーじゃん!
この状況なら少しくらい俺の事情に付き合ってくれてもよくないか?
「お前と違ってこちとら内心バックバクなんだわ」
『だからといって限度ってもんがあんだろ』
そこまで言うと電話の向こうからガチャリという音が聴こえた。
『凛斗くん、あの……あ、お電話中?ごめんね』
『あぁ、いいよいいよ蓮だから、ちょっと蓮待っててくれ』
おい、俺を勝手に放置すんなよ。好きな子優先する気持ちは分からんでもないけど!!少しすると凛斗が戻って来た。
『悪い悪い、恋花が俺が貸した本返しに来たみたいでさ』
本を貸し借りするほどなのか。仲がいいことで親も安心することだろうよ。まぁ2人の性格上不仲になることは考えにくいけどさ。色々と余裕がある凛斗と純粋で素直な鏡恋花。性格は全然違うにしてもだからこそ相性もいいのかもしれない。
「それなりに仲良さそうだな」
『まぁな、たまーに熱中しすぎて飯だって言いに行かないと気づかないときもあるけどな』
へぇ……意外な面もあるんだな。常に人のことを考えてそうな性格してるのに。
「凛斗は告白とかしないのかよ」
『今は多分言っても恋花を困らせるだけかもしれないからな、告白するのは俺のこと好き確定させてからでも遅くはないだろ』
確かに鏡恋花は控え目で謙虚な性格で、可愛いと言われているが犬や猫やうさぎ……小動物系的な意味で可愛いと思う的な感じであまり恋愛対象として見るという話は聴かない。それは多分、純粋すぎるのが原因なんだと思う。対してチャラく見える凛斗はこう見えてすごく一途だ。素直に純粋すぎて兄妹というハードルが地味に高い恋花じゃなくて、普通に恋愛できそうな奴を相手にすれば?と言った時も「俺は恋花がいいから」の一点張り。むしろ俺や宮より厳しい道を選んでると思うけどな。ある意味尊敬してる。
『ところでもう寝ていいか?』
「おいまだ11時半だろ、あと最低1時間は付き合え」
だがそれのこれとは別問題、俺の理性のために今は付き合ってもらう。こちとら今日は理性を保たなきゃいけねぇんだよ!
『そこまで渋るならなんでリビングで寝るって言わなかったんだよ』
「そしたらまたあいつがじゃあやっぱり私がリビングで寝るって言い出すと思ったからだよ」
どっちが折れなければきっと堂々巡りで決着が付かない。と言って結愛が折れるのを待てばいつまで続くか分からないし、むしろ結愛が折れるかも謎だ。結愛は一度こうと決めたら曲げないところもあったりする。
頑固というか、諦めが悪いというか……。たからと言って、俺だって幼馴染といえども女をリビングに寝かせたくはない。今回ばかりは譲るわけにはいない。
そう凛斗に伝えると少し考えるような声を出して、一
息ついてこう言っていた。
『それはどの道一緒に寝るしかなくね?』
……冷静なツッコミをありがとうな!!なんてことを心で言いながら、凛斗をくだらない話を続けた。そうして1時間後、俺の部屋をそっと覗くと電気が消えていた。もう結愛は寝たかとホッと一安心した後にようやく凛斗と電話を切った。ただ遅くまで付き合わせたお詫びとして、月曜ジュースを奢る約束になった。
まぁ俺の理性を比べたら安いもんだよな、とは思いながら俺は静かにベッドに入って結愛に背中を向けた形で眠ろうと思ったが。
「んんっ……」
そう声を漏らして結愛が俺に抱きついてきた。多分俺を抱き枕にしている感覚だ。……眠れねぇ!!結局俺が眠りについたのは1時間ほど後だった。




