久遠が美紅を好きになった理由(番外編)
俺、綾音久遠は同じクラスのクラスのマドンナ的存在である初野美紅さんに恋をしている。彼女はクラスのマドンナと言われるだけあり、明るい笑顔が彼女の魅力だ。パーマがかかった髪のツインテールと、水色の瞳も、全てどこか人を惹きつける魅力がある。容姿も性格も好かれる要素しかない彼女だが、俺は外見が優れてなかったとしても初野さんに恋をしていたと断言できる。俺が初野さんを好きになったのは、幼稚園くらいの頃だったから。
「美紅ー、ノート持ってくの手伝おうか?」
「大丈夫、気持ちだけで嬉しいよ」
初野さんと花園さんの会話を聞いて俺は初野さんを追いかけて、半分以上のノートを持つ。
「全員分はさすがに重いでしょ?俺も手伝うよ」
「で、でもっ……」
「遠慮しないで」
俺はそう言って一緒にノートを運ぶ。この調子からして初野さんは覚えてないんだろうな。あの日のこと……。俺は幼稚園の頃綾音という苗字が、女の子の名前みたいだといじめられていた過去がある。その日も「あやねちゃん」と呼ばれていじめられていた。
その時に「いじめなんてやめて!」と俺を助けてくれた女の子がいた。水色の髪と瞳をした、可愛らしくも勇敢で優しい女の子。その頃の俺はすごく口下手で、助けてくれたその子にお礼も言えなかった。でも、その夜、布団の中で明日会えたら「助けてくれてありがとう」とそう言おうと思ってたけど、その翌日、その子は引っ越してしまって会えなくなった。そのことに俺は落胆したけど、同時に決意をしたんだ。またあの子に会えたらちゃんと「ありがとう」と言えるように、今度は悪口を言われても、軽く流せるように強くなろうと、小学生に上がり6年間その子のことだけを思って頑張った。そして中学校でまた出会えた。一目で分かったんだ。あの子だって、面影はちゃんと残っていたから。
「ありがとう、綾音くん……手伝ってくれて」
「気にしなくていいよ、俺がしたくてやったことだし」
そうして頑張ってた結果、なんか知らないけどモテる綾音久遠が今の俺なわけだけど。あの助けてもらった日から俺は、初野美紅さん一筋だ。中学で出会った時、夢見がちな少女みたいだけど運命だと思った。
まぁ初野さんは俺のことを全然覚えてないみたいなんだけど。中学の頃からコツコツアプローチをしてはいるけど。まだ告白をする気はない、それは彼女が俺のことを好きでいてくれるか分からないからじゃない。
思い出してほしいんだ。君が昔助けた男の子は俺だってこと。そりゃあの頃とは容姿も、性格も声も変わったけど……気づいてもらって昔はあんな情けない俺でも、君のおかげで強くなれたんだって伝えるために、そして「あの時言えなかったけど、俺を助けてくれてありがとう」とちゃんと伝えたいから。
「そういえば初野さんって幼稚園とかの思い出ってある?」
「え?唐突だね」
「ちょっと気になったから聴いてみたいなって」
ちょっと踏み込みすぎだろうか。でも聞いてみたかった。あの頃のあの日の話は君の物語に少しでも入っているだろうか。
「……私、幼稚園の頃引っ越したんだけどね、引っ越しする前ずっといじめられてた男の子を助けたことがあるの」
覚えててくれたんだ……。ここで「その助けた男の子俺だよ」と言えたらどんなにいいことだろう。でも
俺は、初野さん自らそのことに気づいてほしい。それが俺のワガママだとしても。
「引っ越し前まで助けられなかったなんて情けないよね」
「そんなことないよ、かっこいいと思う!それにきっと……ううん、絶対その子嬉しかったって思ってるよ!」
実際それ俺だから断言出来る。本当に嬉しかったんだ。初野さんが助けてくれてよかったって。俺が変わるきっかけをくれた。俺は助けてくれた日から君を忘れたことはない。ずっとずっと会いたかったんだ。このことはあの3人にもまだ話してない。それにみんななんでその子のことが好きなのか暗黙の了解のように理由は話してない。まぁ話したところでどうこう変わるわけでもないし。
「みんな何話してるの?」
俺は教室に帰ると蓮と宮と凛斗の話に加わる。
「いーえ?久遠くんは今日もイケメンだと思ってるだけなのでー」
「蓮、その喋り方とその目やめてくれない?」
目から「堂々とアプローチかけられるのが俺には羨ましいよ」と言われてるのが分かる。幼馴染じゃそうもいかないっていいのかな……?
「あーやっべー…黒歴史思い出した……」
そう言って宮が机に突っ伏す。一体月島さんに何を言ったんだろう?宮がこうなるときは大半が月島さん絡みだからな。蓮より想いは強い気がする。
「本当もう早く告白しろよ」
それは無理だって。俺は気づいてもらうまで告白する気はないんだから、でも覚えてることは分かったから、ちょっとずつでも思い出してもらうつもりだ。
俺は、初野さんの外見とかじゃない。優しくて、勇敢で、美しい初野美紅さんを好きになったんだ。だから断言出来る。例え容姿が優れてなかったとしても、俺は初野美紅さんに必ず恋をしていたと。




