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次に来たのは苦しくなる胸の詰まり。
慧は和の考えなんてちっとも分かってあげられていなかった。
まあ、まさか慧の事で思い詰めてたところがあったなんて、まさか過ぎて、当然の態度だったと思う。
「あーもうっ……和のやつ……」
扉を背中にして、やっぱり出るのは和への文句だ。
ただ、感情が籠っていたし、一つだけの感情では無いように聞こえてきたのだった。
「ねぇ、寮長」
「なにかな?」
「慧は怒ってたよね」
美兎は反応に困った。
怒ってた。確かに怒ってはいたけど、最後のあの顔を見たらそうじゃないのは分かる。
けど、それを言ってしまっていいのか。
腕を組んだり頭を掻いたりちょっと時間稼ぎをしてみても、何を言ってもダメな気がして黙ってしまう。
そうすると和が今にも泣きそうになるし、美兎はあやすでもなく、励ますでもなく、オロオロしているだけだった。
「聞いてきたら?ギクシャクして時間を無駄にするなんて勿体ないわよ。ほーら」
舞は見てられないと和の腕を掴んで引き摺って、慧の部屋のドアを開けると真ん前に居た慧諸共部屋に押し込んでしまう。
「わあ!」
「きゃあ!」
可愛らしい悲鳴の後は沈黙。




