表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キク -幼少編ー  作者: 麻本
PR
17/24

17

 あたいは、ポン太郎おぢさんの後をついて行った。

しばらくすると、村人の住む長屋に着いた。

「キクちゃん。こっちだポン」

ポン太郎が手招きをする。

「はーい」

「しーっ!静かにこっちへ来るポン」

「・・・」

あたいは、しまったと思い手で口を塞いだ。

 そしてポン太郎の元まで来る。

「ほら。ここから覗いて見るポン」

ポン太郎は、小声でキクに言う。

あたいは、格子越しに中を覗く。

 すると中では男二人が、対面してお互いの腕をつねりあっていた。

「何か、お互いの腕の皮を引っ張り合いながら何か言ってますよ?」

「それを聞いてみるのだポン」

そう言われてあたいは、男二人の方へ耳を傾ける。

「ぬうっくく!これでどないだ?参ったか!」

「お主こそ参ったと・・・言わんか!しぶといのう!」

男二人の顔は、この世のものとは思えない程に引きつっていた。

その形相に、あたいは怖くなって思わず身を引く。

「・・くっ!しぶといな。いい・・か?痛いとか参ったと言えばお主の負けじゃ」

「何のなん・・の」

身を引いたあたいは、ポン太郎おぢさんに質問する。

「あのー。あの人間たち、明らかに痛そうなのに我慢してますよ?何でです?」

「あれはだポン。我慢比べをしているのだポン」

「我慢比べ?」

「そうだポン。特に娯楽もなく、更に話す事が無くなると、我慢比べとかやり出すのだポン。

そして、この行為を人間はいたちごっこと言うらしいポン」

「いたちごっこ・・・変なの」

「そう言っちゃいけないポン。ワシはこういうの見て、娯楽が少ないのを知ったポン」

「じゃあ、それで、夜の悪戯作戦を?」

「そうだポン。多分、刺激が足りてないのだポン。それで思い付いたのだポン。

その証拠に、怖いのを我慢してまで沢山の村人が見に来てるポン」

「人間って、刺激が欲しいんですね」

「そういう事だポン。さて、次に行くポン」

「何処ですか?」

「内緒だポン」

あたいとポン太郎おぢさんは、長屋を後にした。

 そして、次の場所に向かう途中であたいは、ポン太郎おぢさんに、空様の事について質問することにした。

「ねえ。ポン太郎おぢさん」

「今度は何だポン?」

「さっき言ってた空様の秘密を教えて欲しいんですけど」

「空さんの秘密かポン?それは秘密と言っても大した事ではないポン」

「あたいは、秘密っていうから・・・」

「いいかい、キクちゃん。空さんは、退魔師によって、実体化させられてしまったのだポン。

それで、日が照る内は、外に出ると目立つので、迂闊に行動出来ないのだポン」

「それって大した事あるでしょ!」

「ワシはそうは思わないポン。もののけは、普段ひっそりとしていて、でも時々は人間の為に刺激を

与えて、それで生活を少しでも楽しくして貰えればいいのだポン。ただ、空さんは、退魔師に知れ渡る伝説のもののけの一つだから、そうも行かないポン。

尚更の注意が必要なんだポン」

「空様って、過去に何か悪い事をしたの?」

「いや。していないポン。人間が勝手に悪者に仕立てあげたのだポン。長い月日が経つと、人間が勝手に想像して、話に尾ひれが付くと云うあれだポン」

「そんなぁ」

「キクちゃん。落ち込んじゃだめだポン。空さんは大丈夫だポン!」

ポン太郎が、落ち込んだキクを見て励ました。

それから。

今度は他のお寺に着いた。

「さあ、着いた。次に見るのはここでしょう?」

あたいは、お寺の本堂に向かおうと駆け出した所で、ポン太郎おぢさんに呼び止められた。

「そっちの本堂ではないポン。ワシの所に来るポン?」

「えっ?違うの?」

あたいは、ポン太郎おぢさんの元へ足を急ぐ。

すると、ポン太郎おぢさんは、別の建物の前にいた。

「ここは?」

「道場とかって言われているポン。人間の子供たちがここで習い事をしているポン」

「ふーん」

キクがみると、子供たちは何かの絵に夢中になり、言葉を発していた。

「ポン太郎おぢさん。あれが何かは知ってるの?」

「知ってるポン。あれは「判じ絵」というのだポン。文字を知らない子でも、声を発して、覚えられる様にする物なんだポン」

「みんな、楽しそうですねー」

少し、羨ましそうに言うキク。

 そして、キクがその視線を子供に向けていると、ひとりの子供がいきなり振り向き、キクの方へ駆け寄ってきた。

「!?」

「ねーおししょうさまー。ここに見た事無い髪の毛の子がいるー!」

あたいはヤバイと思って咄嗟に身を隠し、更に

「ノーマクサンマンダーキエミソワカ」

と、小声で叫んでこの身を透明にする。

そして、子供の下にお師匠といわれる男が駆け寄った。

「どれ?・・・なんじゃ。おらぬではないか?」

「えー?さっきまでここに居たんだよー」

「何をうつつをぬかしておる。元の所に戻りなさい」

そう言って、お師匠と言われる男は子供の手を引っ張って、元の所へ戻した。

「危ない、危ない。間一髪」

あたいは、胸を撫で下ろした。

「これ以上は、見ないほうがいいポン」

「えーっ!何で?姿を消してるんだし、バレやしませんよぉ。もう少しだけ!」

あたいは、食い下がろうとする。

「駄目だポン。この場を離れるポン」

が、駄目だった。

ポン太郎おぢさんは、あたいの手を掴んで引っ張り、一目散に道場から遠くに離れた。

「はあ、はぁ。ポン太郎おぢさん、足が速いよ!」

あたいはポン太郎おぢさんに、半ば強引に引っ張られ、ついて行くのがやっとで、すっ転びそうになったのだ。

「キクちゃん。そう怒るなポン。あのまま居たら、幾ら姿が消えて居てもバレるのだポン」

「どうして?」

「それはね。子供の純粋さって言うのが計り知れないもので、霊力がある訳でも無いのに、ワシらの姿が見える人間の子供が、結構居るポン」

「それじゃあ、道場に連れて来たのは、あたいの警戒心を養うためなの?」

「それもあるポン。それと、もう幾つか知って欲しい事があるポン」

「知って欲しい事?」

「そうだポン。子供は、子供だけなら、キクちゃんやワシの様なもののけにはまず、警戒しないポン。

むしろ遊び相手として、楽しい位だポン。だけど、歳をとって経験を積むにつれ、人間は純粋さを無くしていくポン。

それ故、ワシ達もののけを見る心に差が生まれるんだポン」

「えっ?それじゃあ、あたいらもののけを受け入れる心があったり無かったりするのは、その人間の経験次第って事なの?」

「そういう事になるポン」

「じゃあ、あの夜の悪戯に、自ら現れて、追いかけられた人間と言うのは、自分の身は安心だろうと思ったからとか?」

「そうなんだポン。しかし、それを人々が襲われて困っていると、勝手に思っているのが退魔師なのだポンよ」

「ええっ!?そんな理不尽な」

「そう。理不尽なのだポン。それ故、退魔師とは、対峙しなきゃいけない時があるポン」

「そんなぁー。あたい、普通に過ごしたいよお」

「うん。普通が一番なんだポン。答えが出た処で、いつもの場所に帰るポン」

「はーい」

あたいとポン太郎おぢさんは、帰路につくのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ