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「いきなりも何もないぞ?キク。お主を連れてから、まだ大した時間は経っておらぬ。
じゃが、わらわがお主をもののけとして復活させ、お主が居た小湊という所では、修行させる条件が整って無かったからのお。
それ故、旅立ったんだよ。それにしても、よもやこんなに早く見つかるとは、思わなんだ」
「空さま。それならあたいにはまだ修行は早い気がします。外界をもっと知りたいです!」
キクは、修行が出来る身でない事を空に強調してみせた。しかし
「んー?その外界を知る為にひとりで行くにはな?キク。まだお主一人じゃ危なっかしいんじゃ」
「それだから、空さまとふたりで・・・」
「だーめ。二人旅で楽しいのも結構なんじゃがな?わらわとだと危険を伴う時だってある。
それ故、もっと力をつけた方が、より安心なのだよ。それに、修行中はしっかりキクの側にいてやるぞ?」
「いいんですか!空さま」
「ああ。いいとも」
「ありがとうございます!」
この様子を見ていた乾坤が言う。
「空様。こいつ、空さまが離れると思ったんじゃねえの?」
「ほお?そうなのか?キクよ?」
「はい」
「はっはっは。離れる訳があるまい。キク、お主が一人前になるまでは、この地でわらわがしっかりと
共に見てやるわい。心配しなさんな」
この言葉に、キクの表情は一気に明るくなった。
「よし。それじゃ早速だが、簡単な術から教えようか?先ずはそうじゃなー。水垢離の術かな?」
「水垢離の術?」
「近くに海もあるし、その水を利用するんじゃ。その前にキクはある程度妖力を溜めないとな?」
「どうやって溜めるんですか?」
キクにそう言われて空は先ず手指をからめる。
「それはな。呪文を唱えるんじゃ。手はこうして組んで、ノーマクサンマンダ―ボダナンメグミソワカとな。やってみい?」
そしてキクも手を組んで真似をする。
「ノーマクサーマンダーボダナンメグミソワカ」
「いい感じだね。それじゃ、妖力を貯めたいと強く念じながら十唱えよ」
「はい。ノーマクサーマンダー・・・」
キクは10回唱えた。
「キクどんな感じじゃ?」
「何だか体が暖かくなりました」
「そうか。いきなり効果が現れてきたねえ。その調子で精神を鍛えんとな」
「体は?鍛えなくていいんですか?」
「もののけに体力はいらぬ。重要なのは精神じゃ。心を安定させ、さっきの様な呪文を唱える事で
妖力は貯まる。それは言霊の力が作用するからじゃ」
「言霊?」
「言霊とはな。声に出した言葉が、現実の事柄に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると悪い事が
起こってしまう。そう作用する物で、霊力を貯めたければそれに準えた言葉を発すれば良い。
特にわらわ達もののけにはそれが顕著に現れるのじゃ。
良いも悪いもちゃんと区別して使わないと、大変な事になるよ?覚えておきなさい」
「はい」
「それじゃ、良い意味の言霊から教えて行くからな。しっかりと覚えるんじゃぞ?」
そうして暫くの時間、キクは空からいろいろと教わったのでした。
それから約1月が経ち、キクが妖力と技を少しつけた所で、ポン太郎、ポン子、空、乾坤、そしてキクに
よる、人間への「悪戯大作戦」が、幕を下ろそうとしていたのです。




