THE ACE 0 -Utopia beyond The Cloud- chapter1-旅立ち-
映画誌『週刊 映画観ようぜ』曰く――
多大な予算を掛けながら、稀代の大爆死を遂げた前々作『THE ACE』。
その結果に懲りるどころか、二倍以上の予算を投入して作り上げ、またも大爆死を遂げた前作『THE ACE 2』。
普通ならばもう撤退してもおかしくない…というか撤退しない方がおかしい事業である。
しかしながら不知火慎太郎監督はまったく懲りることなく、さらに続編、前日譚であるこの『THE ACE 0 -Utopia beyond The Cloud-』を公開した。
映画史上でもトップレベルの予算をつぎ込んだ前作よりもさらに予算を増強した今作。
市場や関係者はありがたかっただろうが、オーナー兼監督の不知火慎太郎氏はもはや何を考えていたのか凡人には知りようもないと言っていいだろう。
さて、不知火日本史映画『THE ACE』シリーズ、その完結編を今回は回顧しよう――(ライター 山田山田夫)
……時は平安時代末期。
世に言う『源平合戦』の時代である。
世は、平家と源氏で争いを続けていた。
そしてついには平家の頭領『平清盛』が、宿敵である源氏の頭領『源義朝』を破ったのである。
――これによって、平清盛を頂点とした平家はこの世の実権を握ったのであった。
この隆盛は二十年ほど続いた。
人々は口々に平氏、そして平清盛を称え――。
『平家にあらずんば人にあらず』という言葉さえ生まれるほどであった。
だが――。
平清盛いきなり爆死!!日本中に激震が走る!!
こうして、日本は隆盛を極める平家と、リベンジを狙う源氏の大決戦が勃発した!
それは血で血を洗う、生き残りをかけた源平デスバトルへと進んでいくのである!!
――――――――――
「平家にあらずんば人にあらず!すなわち平家以外は死ね!!人間狩りじゃあああ!!」
そう猛るは清盛爆死の後、平家を継いだ頭領『平宗盛』。
彼は己が編成した、悪逆非道の『人間狩り部隊』によって世を恐怖に陥れていた。
「んだとこのクズが!!思い知らせてくれる!源氏以外は皆殺しじゃあああ!!」
そう血気に逸るは源義朝の息子『源頼朝』。
彼は鎌倉から源氏の大軍を発し、平家へ殺し合いを挑んでいた。
――困ったのは、全国の武将である。
正直どっちにもつきたくないが、この戦乱ではそうもいかない。
『一応ウチは平氏だから平宗盛につく、つきたくないけど』
『源氏だけど源頼朝は嫌だなあ』
『かといって日和見を決め込めば、戦が終わった後に勝った方に滅ぼされるぞ』
などなど、消極的ながらも武将たちはこの大戦乱に加わっていった。
木曽を拠点にする木曽義仲こと『源義仲』もその一人であった。
彼は、己の妻である『巴御前』に、戦乱参加の旨を伝える。
とっても嫌そうに。
「巴ちゃん、うちは源氏だし、嫌だけど頼朝につくしかないかなあ。嫌だけど。マジで嫌だけど」
と、そんなこんなで日本中がサバイバル・バトルをしている中。
――歴史を動かす一人の少年が、ついに立とうとしていた。
――――――――――
ここは鞍馬山、その山奥深く。一見何の変哲もない古い屋敷。
その奥には、杖をついた老人と、一人の少年がいた。
そして老人が巻物を少年に渡し……。
少年は嬉しそうにその巻物を受け取った。
「牛若丸よ。よく厳しい修行に耐えきった。これは免許皆伝の証ぞ」
老人―鬼一法眼―は杖をトントンと床に突き、満足そうに笑う。
牛若丸と呼ばれた少年も、純朴で美しい顔を笑顔で染めた。
「お師匠様、ありがとうございます。この戦乱の世は、必ずや私が止めてみせます」
「うむ。これよりお主の道には苦難が待ち受けておろう。本来ならわしも同行し、お主を守りたいのだが…すでにわしは年老いた身よ。足手まといにしかならぬ」
「何をおっしゃいますか。その言葉だけで十分でございます」
「ふふ、世辞はよい。だがわしも何も考えてなかったわけではないぞ。お主の旅への餞別は、とうに考えておる」
そう言うと、鬼一法眼は……杖に仕込んでいた赤いボタンを押した。
「ポチっとな」
瞬間――
ド ッ ゴ オ ォ ン ! !
という大爆発が起きる。
そして、鬼一法眼の屋敷は木っ端みじんに吹っ飛んだ。
なんとか逃げ出し無事だった牛若丸だが…。
「ゴホッ、ゴホッ…お師匠様、これはいったい…?いつも何を考えているかわからない方でしたが…」
と言いながら前を見る牛若丸だが…。
爆煙の中、目の前には大きな影が見える。
――それは、大きな山だった。
(はて?この辺にこんな山はなかったはずだが…私が方角を間違えたか?)
と、牛若丸はその山を見るが…。
途端に彼はハッと気づく。
(ち、違う!これは山ではない!これは人……しかも、あまりにも巨大な人影だ!)
その山は、確かに人の形をしていた。
しかし、人と呼ぶにはあまりにも大きすぎた。
身の丈およそ7メートル、体重は1トン越え。
両手両足と揃っているが、顔はまるで仁王のごとき憤怒の形相。
そして背中には、999本の刀。
その影――人物は、ピー、ガシャンという機械音を立てて牛若丸を見下ろす。
そして…牛若丸を見て、こう言った。
「……初めまして、御曹司。私の名は弁慶。貴殿の命を守り通す護衛ロボットです。以後、お見知りおきを」
見た目とは違い、非常に恭しく首を垂れる弁慶。
何が何やらわからず戸惑う牛若丸だが……。
どこからともなく、鬼一法眼の声が響いてくる。
「牛若丸よ!その者の名は武蔵坊弁慶!我が最高傑作にして、何があろうともお主の命を最後まで守る、護衛型最終決戦兵器じゃ!きっとお前の役に立つじゃろう!」
ぽかーんとしている牛若丸。
しかし、弁慶は意気揚々と牛若丸に声をかける。
「行きましょう、御曹司!この弁慶、何があろうとも貴殿を護り通しまするぞ!」
「…ははは。ありがとう、弁慶殿。これは、あまりにも心強い餞別だ」
呆れながらも、優しく笑う牛若丸だが…。
その時、遠くの方から二人の元に馬が走って来た。
その馬は、灰色の体に八本の足。
そしてたてがみは燃えるように赤く…というか、実際に燃えていた。
しかし熱くはない。人を焼く炎とは違う、聖なる炎のようだ。
最初は鋭い眼で牛若丸を睨むが――。
彼女(?)はヒヒーンと嘶き、その背に導くように身を沈ませる。
どうやら、乗れということらしい。
「はは、これもお師匠様の餞別かな」
そう言いながら牛若丸は、その八本足の馬を『静』と名付け、その背に跨った。
そして、意気揚々と駆けだしたのである。
「目指すは鎌倉!まずは我が兄『源頼朝』に会う!」
「ははーっ!!」
『静』に乗り、走り出す牛若丸。
時速200㎞以上は出ているようだが、鬼一法眼の修行を積んだ牛若丸には大した問題でもない。
身長7メートルある弁慶も、備え付けの反重力装置を展開し……。
そして、ホバー移動で牛若丸についていく。
こうして――牛若丸こと『源義経』の長い戦いの旅が始まったのである!




