『THE ACE 2~Eternal Sky~』家庭用Blu-ray+DVD
こちらは『THE ACE 2~Eternal Sky~』の家庭用円盤である。
Blu-rayとDVDのセットで発売、しかも販売価格500円という、採算度外視というか売れば売るほど赤字ではないかという、異常極まりない価格で販売された。
その中身の一部を紹介しよう。(ライター 山田山田夫)
―没エンディング その1―
豊臣家を完全に葬り去った徳川軍。
家康は高笑いする。これで天下の趨勢は完全に決まった、と。
どうやらこのエンディングの家康は、秀忠の策略を回避したようである。
さて、戦後の論功行賞だが…。
家康は諸将に力強くこう言った。
「まずは秀忠!次に、豊臣軍から寝返ってきたクズども!貴様らは家族まとめて惨殺してくれる!!一度裏切った奴は何度でも裏切りよるからな!!」
驚く真田信繁や後藤又兵衛と言った元豊臣軍の将。
必死で止める徳川家臣団たち。
いくらなんでもそれはあんまりだ、と。
それに秀忠の家族という事は家康も巻き込むのでは…と。
しかし家康は…。
「なんだあ!?貴様らも逆らうのか!!許さぬ!こうなれば全員まとめてぶっ殺してくれる!!」
驚き逃げる諸将、そして彼らは決意する。
『こうなりゃ今度こそ家康を倒してやる』…と。
――そして狂った不死身の家康VS秀忠率いる戦国後期オールスターズの『江戸の陣』が幕を上げるのであった。
―没エンディング その2―
大坂城は炎に焼かれ落城したが、家康も秀忠の手により命を落としていた。
すべてが終わったかに見えた。
――そして、九州の空。
ガーゴイルの背に乗る、一人の…男性。
彼は大きく息を吸い込み、また吐いた。
「なんという素晴らしい景色だ。空を飛びゆく鳥は、こんなに美しい世界を観ていたのか」
その男――豊臣秀頼は、暖かく優しい風を受けながら、眼下に広がる壮大な眺めを観る。
彼が大坂城に火を付けた後…。
彼は、卑弥呼やガーゴイルとともに、大坂城を脱出していた。
大坂城を、そして豊臣を守れなかったことに負い目はあったが…。
それでも、彼は生きる道を選んだのである。
空からの景色を眺める彼。
その隣に、並ぶように空を飛ぶ影が映る。
――それは、卑弥呼であった。
彼女はガーゴイルの力を借りなくとも、己の力で空を飛べたのだ。
「それじゃあ、秀頼さん。私はこの辺で。せっかくだからこの大和の国を隅々まで見てみたいし。なんだったら、海を越えてみるのも面白いかも!魏とか呉とか、今どうなってるのかなー」
そう言うと、卑弥呼は方向転換し――。
鳥が滑空するように別の方向へと去っていった。
視界の中、どんどん小さくなっていく卑弥呼を見て、秀頼が呟く。
「残念だな。共に来てくれるかと思ったが…」
秀頼を背に乗せていたガーゴイル。
彼はその言葉を聞いて、フンと鼻で笑う。
「あの娘を誰だと思っている。あの若さで、かつてこの国を治めた女王だぞ。傀儡にすぎなかったお前では釣り合わぬ」
「はは、手厳しいな」
笑う秀頼が、ふと前を見る。
――見渡す限りの青い空。そこは、雲一つなく澄み渡っている。
その純粋さ、清廉さは…。
むしろ自分を責めているように、秀頼には感じられた。
「…私は、なんのために生きてきたのか…なんのために生き続けるのか。この蒼天の中に生きる資格があるのだろうか」
何の気なしに言った言葉だったが…。
相変わらず、ガーゴイルがそれを鼻で笑った。
「ごちゃごちゃと下らぬことを。お前は生きると決めたのだろう。嘆いたところで徳川の天下が変わるわけでなし、お前に神通力が手に入るわけでもない。だったら泣く前にせいぜいあがいてみせろ。命ある限りな」
「ふっ、またも手厳しい…だが、まだ泣いてはいないぞ」
そう言いながらも、秀頼は笑う。
そして彼は――また目の前に広がる、青い空を見据えた。
「なってみせるさ。あの卑弥呼という娘のように。そして、父上のように。何年、何十年、何世代かかろうとも」
そして大坂の陣が終わり、秀頼が九州薩摩に逃亡した252年後――。
薩摩藩や長州藩より始まった騒乱により、徳川の治世は終わりを迎える。
世に言う『大政奉還』である。
大坂の陣の後、九州薩摩に豊臣秀頼が落ち延びたという風聞は、当時の庶民も知っていた。
そして何百年もかけて、ついに薩摩に落ち延びた豊臣秀頼公が徳川を倒したと噂したのである。
もちろん、その説に根拠は一切ない。
ただ人々は、勝手な夢物語と思いながらも――。
そこに、ロマンを感じずにはいられなかったのである。
――――――――――
―未公開シーン その1―
「うーん、戦うの飽きちゃった」
そう言いながら、卑弥呼は戦場から大坂城へ帰る。
そして、勝手に大坂城の探索を始めるのだった。
「おおー。こういう像、私の時代にはなかった。こういう鏡も。これ、持って帰ってもいいかな?」
そんな楽し気な彼女に、注意するように呼び掛ける者がいた。
ガーゴイルである。
「どこに持って帰るんだ、どこに」
彼は強敵本多忠朝を倒したものの、傷を負い…。
大坂城で休養していたのである。
卑弥呼は超人的な力を持つ邪馬台国の女王。
とはいえ普段はただの活発な少女、好奇心旺盛である。
貴重な文化財を壊されたらかなわん、と卑弥呼を監視していたガーゴイルだが…。
ふと、彼は上へ向かう隠し階段の様なものを見つける。
(はて?なんだあれは?なぜわざわざ隠す必要がある?)
怪訝そうにそれを見つめるガーゴイルだが……。
卑弥呼もすぐにその階段を見つける。
すると彼女は迷わずそれを上がっていった。
駆け足で。
「ま、待て!もう少し考えろ!」
急いでガーゴイルも後を追う。
二人はその階段を昇って行ったあと――少々開けた場所に出た。
そこは黄金で飾られた部屋。
襖も屏風も天井も小道具も、何もかもが黄金でできている。
――その中に、一人の青年がいた。
彼は、驚いたように卑弥呼たちを見る。
「驚いたな、どうやってここに入って来た?限られた者以外、ここへはそう簡単には入れぬはずだったが…」
「普通に入って来た」
卑弥呼は興味なさそうにそう答え…。
それよりも、と黄金の部屋を興味深そうに見回す。
だがガーゴイルは、瞬時に察知する。
この青年の素性を。
豪勢なこの部屋に、まるで監禁されているようにいる彼の正体を。
それを知ってか知らずか…青年は諦めたように笑う。
「そうか、私は用済みか。さもありなん、ここはすでに魑魅魍魎が跋扈する魔城。もはや私を生かしておく必要もない。……さあ、殺せ」
そう語り、覚悟を決める青年だったが…。
ガーゴイルはこう答えるのだった。
「本当にたまたま来ただけだ。人を勝手に殺し屋扱いするな」
卑弥呼も続けて言う。
「それよりこの黄金の茶碗、もらっていい?」
と。
その、本当に自分に興味ないような返事を返された青年。
彼は呆然とした顔をするが…。
そのあと、はははと笑い、顔を上げた。
「この部屋にあるものは何でも持って行ってくれ。ただ…また来てくれればありがたい。人と話すことなど久しぶりだからな」
その青年――豊臣秀頼は、卑弥呼とガーゴイルを観ながら、そう言ったのである。
―未公開シーン その2―
大坂の陣は、戦国連合軍の勝利で終わった。
さて、戦が終わった後の大坂城前にて、真田信繁が武蔵坊弁慶に語り掛けている。
真田家の復興のために、弁慶の力が欲しいと誘っているようだが――。
弁慶はその誘いを寂しそうに断った。
「信繁殿。私は見ての通り異形の存在です。今の世では、私の存在は恐怖にしかなりません」
「し、しかし…あなたは魔物を率いる豊臣軍を倒し、この日本を救った。あなたがいなければこの世界は……それは民もわかるはず、きっとあなたを迎えてくれるだろう」
「最初はそうでしょう。しかし、いずれそれは恐怖に変わる。『あいつが暴れたら』と人は恐れる。それは、異形の存在である私が一番よく知っています」
「……」
「ご安心めされ。貴方に、そしてこの国に危機が訪れるときは……この弁慶、必ずや駆けつけましょう。貴方の元に。貴方がいなくても、貴方の魂を継ぐ方の元に」
「…わかった。弁慶殿に命ずる。この国を揺るがす事態が起きたら…必ずや、この国を救ってくれ。九郎判官殿と、私からの……決して破られない命令だ」
「はっ!この命に代えましても!」
そして……弁慶は、どこへともなく去っていった。
――――――――――
次回予告
『THE ACE 0 -Utopia beyond The Cloud-』
大量のゾンビの軍勢。7メートルの巨人。海に沈む宝剣。
結局なにがなにやらわからぬままEND。
映画誌『週刊 映画観ようぜ』曰く――
おわかりいただけたであろうか。
興行的に前例がないほどの超絶大失敗した前作『THE ACE』の反省を活かし(?)、前作製作費300億円の2倍以上である総製作費700億円超を注ぎ込み制作された今作。
だが、興行収入は前作よりは奮闘したものの、1000分の1である7000万にも届かない程度だった。
当時の世の人々は、今回の家庭用円盤についても
『700億のゴミ』『逆錬金術の産物』『皇木の無駄遣い』『30円ならカラス避けに買うかギリギリ悩むレベル』
…と散々な評価だった。
しかし不知火慎太郎監督は、というと――。
『やれやれ、今回はシンプル過ぎたか』『やはり世間はまだ俺の美学が伝わっていないようだな』
とまったくノーダメージ(本当にノーダメージ)で言いつつ、次回作『THE ACE 0 -Utopia beyond The Cloud-』の制作に入っていくのである。
なお、現在はこの円盤について
『後の名優の多くが出演している怪作』
であること及び
『監督の登場シーン以外は結構面白いのでは』
『監督の登場シーンも映像だけは凄い』
という再評価によって、価格が数万円レベルで高騰しているようである。(ライター 山田山田夫)




