『THE ACE 2~Eternal Sky~』―後編―
さあ、ここは大坂城前。
身長7メートル、体重1トン超えの弁慶が、そこに立っていた。
彼は大手門を守護するように仁王立ちしている。
筆舌に尽くしがたい弁慶の膂力。
槍の一振りだけで、徳川兵30人ほどが吹き飛ばされていく。
諸将は刀で、槍で、銃で、弓で立ち向かうが……。
弁慶は、一切の攻撃を跳ね返す。
そして、彼は雄叫びをあげるのである。
日本史上最大最強の怪物、武蔵坊弁慶。
まさにその名に偽りなしである。
大坂城の大手門を守護する弁慶。
彼を攻略せねば、大坂城を落とすことはできない。
しかし、その弁慶にすべての攻撃が通用しないのだ。
各地で戦っていた諸将も援軍に駆け付けるが……。
やはり弁慶はものともしない。
刀折れ矢も尽き、全員が『あとはやられるだけ』と諦めかけていたころ。
――奇跡は、起こったのである。
魔物を操る豊臣軍に見切りをつけ、徳川軍に降った真田信繁。
世に言う真田幸村である。
彼が援軍に駆け付け、弁慶の前に立った時…。
弁慶が戸惑いと歓喜の声を上げ…泣きだしたのである。
「お…御曹司!生きておられたのですか!」
戸惑う信繁。
彼には何が何やら、さっぱりわからない。
「御曹司…?何のことか?我が名は真田信繁。私には、なんのことか身に覚えはない」
「お、おお…確かに。御曹司が生きているはずはない…だが…」
戸惑いながら弁慶は言う。
弁慶は、目の前に現れた真田信繁の中にかつての主の影を観た。
それは…そう、源氏の御曹司こと『源義経』のことだと。
争いをやめ涙を流している弁慶に、信繁は問う。
「弁慶殿。なぜ…私を九郎判官(源義経)殿と勘違いなされたのか?見た目が似ているという事か?」
「…あなたは、心に宿る魂がそっくりなのです。いや、瓜二つと言っていい」
「魂が……?」
「その魂が私を呼ぶのです。『弁慶、何をしている。お前が闘うべき敵はそちらではない。我が命を忘れたか』…と」
弁慶は攻撃を止め、さめざめと泣きだしている。
――不意に……信繁は、己の魂が、己に呼びかけていることに気が付いた。
『弁慶を救ってやってくれ』
『彼を正しき道に導いてやってくれ』
『それは、今のあなたにしかできない』
その声の主こそが源義経……。
そう確信した信繁は、凛と声を発する。
「弁慶殿…いや、弁慶!九郎判官殿に代わり、私が貴殿に命ずる!」
「はっ!」
「魑魅魍魎が跋扈する、大坂城をこれより攻める!人の世を人の手に取り返すのだ!!」
「ははーっ!!!この命、御曹司…いや!真田信繁殿とともに!!」
そう発した弁慶は、意気揚々と立ち上がった。
そして、凄まじい勢いで大坂城に向け猛進する。
大坂城の魔物たちは驚き弁慶に攻撃を加えるが…。
やはり彼は一切の攻撃を意に介さない。
そして弁慶はあっさり大坂城の大手門を破壊した。
崩落に巻き込まれるゴブリンたち。
なおも弁慶は大坂城内部に突っ込み、立ちふさがる魔物を圧倒的な膂力で打ち砕いていく。
絶大なる忠誠心を持っていた弁慶にはわかっていたのだ。
源義経と真田信繁こと幸村。
この二人が、相通じるものを持っていたことを。
――それは、後世の我々が彼らに惹きつけられる魅力と同じだったのだろう。
『判官贔屓』という言葉のように。
――――――――――
弁慶の裏切りにより、パニックになる大坂城。
その中で、治房によって天守に監禁されていた豊臣秀頼。
彼はこの惨状の中……静かに笑っていた。
「もはやこれまで……お父上、ふがいない息子で申し訳ありませぬ」
そして、同じく天守にいた卑弥呼に向かい、己の刀を渡す。
そして…まだ幼い彼女にこう言うのだった。
「君が生きていた千年以上前と、今この時。変わったものと変わらないもの。それを見届けて欲しい」
そう言って、秀頼は一緒にいたガーゴイルに卑弥呼を逃がすように頼む。
彼――ガーゴイルはそれを承知するも、秀頼に問いかける。
「今ならお前も逃げられるだろう。逃げないのか?あと一人ぐらいなら運べるぞ」
秀頼は、その言葉にかすかに笑う。
そして、諦めたように答えた。
「逃げてどうする。この争いは私が起こしたようなものだ。父を殺した大野兄弟を恐れ、私はこの天守にずっと引きこもっていた。それでも…太閤豊臣秀吉の息子らしく、最後ぐらいは責任を取らせてくれ」
「……承知した。では、いずれ地獄で会おう」
そう言い残して、ガーゴイルは卑弥呼を連れて大坂城から飛び立ち――。
夕闇迫る雲の上へと、飛んでいった。
そして、それを見届けた後…。
秀頼は、大坂城に火を付ける。
「徳川の治世にも、魔城と化したこの城にも、もはやいっさいの未練なし。いざ逝かん」
そして秀頼は――炎の中に消えていった。
――――――――――
燃え盛る大坂城。
それを包むように信長が掌を差し出し笑う。
「野望潰えし最後の炎はやはり見事よ。…家康よ、うぬにも見せたかったぞ。我を包む本能寺の炎を」
それだけを言い残し…信長は轟炎を上げる大坂城に消えていった。
「信長公…お世話になりもうした」
去り行く信長の背に、頭を下げ続ける家康。
信長を見送るように彼は頭を下げ続けていたが……。
しばらくして、大坂城に目を向ける。
「……残るは秀頼のみ。奴の首を取り、ようやくこの天下はわしのものになるのじゃ!」
そして、目的を果たすべく一歩を踏み出すが――。
「うっ!?」
彼は不意に眩暈を起こし、その場に膝をつく。
いつもの発作か、と己の調合した薬を飲み干すが……。
「うっ、うおお!?な、なんじゃこれは!?」
発作は収まらない。体が動かない。
いや、それどころか体が徐々に崩れ始めていく。
彼自身が調合した薬による、不死身の体――それがどんどん崩れていくのだ。
「バ、バカな!調合を間違ったか!?いや!そんなことがあるわけがない!」
不死身の薬は、調合を間違えれば即座に己の体を滅ぼす諸刃の剣。
それゆえ、何度も確認した絶対の調合の割合によって行われている。
間違えることなどあるはずがない。
であれば、考えられる可能性は――。
――そう、誰かが薬に手を加えたのだ。
自分が知らぬうちに。
(だが、それこそあり得ぬ!この薬はわしのみ知る調合!保管場所も調合の割合も、わししか知らぬはず!であれば、いったい誰が…!?)
「…あ……」
ふと、家康は思い出す。
唯一、自分以外にこの薬の存在を知る人物。
それは……息子の徳川秀忠。
家康は戦前に、自らの手記を後継者である秀忠に渡していた。
すべては徳川家による永遠の支配のために。
そこにはこの不死身の薬の調合の割合も書かれていた。
それを読んでいたのなら、この薬の効能も、副作用も…秀忠は知っているだろう。
それに、後継者である秀忠ならば、薬の保管場所も調べられるはずだ。
そして……その薬の調合の割合を密かに変えることも。
家康は確信する。
『秀忠は、己を殺すため不死身の薬にこっそり細工をくわえたのだ』と。
「ふっ、ふはははは…うつけだとばかり思っていたが…。親殺しをするとは、なかなか肝が据わった奴じゃわい」
どこか頼りなかった息子の秀忠。
しかし、彼は彼で邪魔な親を葬るべく暗躍をしていたのだ。
そしてその計画通り、秀忠の策略で家康はこの世から消える。
その後、消えた家康に代わって秀忠がこの大坂城攻めの指揮を執り……。
最後に、徳川の後継者として日本を統治するのだろう。
厳しき親の目のせいか、いつまで経っても情けないと思っていた息子。
その思わぬ成長と、後継者として文句ないほどの非情さに喜び…。
家康は、最期に一言残して、朽ちて逝った。
「ざっと、済みたり」
――――――――――
さあ燃え盛る大坂城。
敗北必至となった大野治房が、絶叫を上げているが……。
ザパァ…。
不意に治房の後ろから魔界鮫が現れる!!
「な…なんだお前は!?いったい今までどこに…うっ、うわああああああ!!!」
魔界鮫は治房に飛び掛かる!
そして、骨まで食らいつくしてしまった!
そして…ついに『ETERNAL 魔界鮫』へと変貌を遂げたのである!!
だが…霧の中から立つ影が一つ!!
「……フン、この大坂城は死んでいる」
そう、不知火慎太郎である!!
『ETERNAL 魔界鮫』は宇宙空間に転移し、不知火慎太郎を待つ!!
不知火慎太郎も飛び上がり、宇宙空間へ!!
そして彼らは激闘を繰り返し、ビッグバン前の宇宙――。
『旧宇宙』へ移行し戦いを続けた!
そして――ついに不知火慎太郎が勝利!世界は救われたのである!
闇に覆われていた太陽がついに姿を現す……。
そう、不知火慎太郎のおかげでこの世界は救われたのだ!
――――――――――
全てが終わった戦後。
――ここは九州の空。
ガーゴイルが、卑弥呼を背に乗せて飛び回っている。
「この辺は…あっ、あの山!見たことあるかも!」
と言う卑弥呼。
「空から見てわかるのか?」
と返すガーゴイルだが…。
卑弥呼はさも当然のように軽く返す。
「わかるよー。たまに空飛ぶことあったし」
「……それは驚いたな。意外と人間というものも侮れないらしい」
そんな軽口を叩くガーゴイル。
――ふと、卑弥呼が言う。
「この国は、何が変わったの?そして、何が変わってないの?」
「それを知るためにお前は逃がされたんだろう」
その簡単な返事にがっかりする卑弥呼だが……。
ふと、秀頼から託された刀を取り出し、空に掲げる。
「やめろ。さっきも言ったが、私の背で面白半分に刀を振り回すな」
「そうじゃないよ。あの人に見せてあげようと思っただけ。きっとあの人もこうやって、世界を見てみたかったはずだから」
父を殺害され、自らはずっと天守に押し込められた豊臣秀頼。
彼は外の世界を知らなかった。
……思えばきっと、その家柄に似合わぬ、不遇な人生だったのだろう。
ガラにもなくそんなことを考えるガーゴイル。
そして彼は前を見て、卑弥呼に向けて言った。
「まあ、天を、地を、そして人を、ゆっくりと見て行けばいい。時間はいくらでもあるからな」
背に乗る卑弥呼の視界の先に広がるもの――。
それは彼女が生きていた千年以上前と、そして千年先もきっと変わらぬ、澄み渡る蒼い空だった。
映画誌『週刊 映画観ようぜ』曰く――
おわかりいただけたであろうか。
歴史ものとしては闇鍋そのものというか、本来あるべきではない素材が大量に混じっているが、物語としてはそれなりにまとまっている部分もある。
これには、実力派俳優の力による部分も大きいとはいえ、前作よりは脚本・監督が成長した証といえるだろう。
しかしながらこの作品も視聴者からはあまり芳しい評価は得られず、興行収入は制作費用の1000分の1以下になってしまったという。
もっともご存知の通り、それで諦める不知火慎太郎監督ではなく、彼はさらに次回作の制作に入っていくのだが……。
次回は、この作品に出演した主たる出演者のインタビューを回顧させていただきたい。――(ライター 山田山田夫)




