『THE ACE 2~Eternal Sky~』―前編―
映画誌『週刊 映画観ようぜ』曰く――
有り余る予算によって豪華なCGと演技巧者を集めながらも、観客からは酷評や嘲笑を浴びた前作『THE ACE ~Neo Interpretation Of SEKIGAHARA~』。
しかしながら、不知火慎太郎監督は『俺の芸術に観客がついてこれなかっただけ』『次はもう少しわかりやすく作ってやる』と悪びれず言い、続編であるこの『THE ACE 2~Eternal Sky~』を公開した。
前作同様、史実や辻褄を宇宙に放り投げたような内容ではあるが、相変わらずどこから持ってきたのかわからない潤沢な予算や、当時から人気だった俳優を集めた作品となっている。
その点では評価された部分も見受けられたようだ。
今回は、この映画について回顧しよう――(ライター 山田山田夫)
時は戦国末期――。
前作の『NEO関ヶ原の戦い』の後、やはり天下を治めていた徳川家康。
刃向かう者の処分はほぼ終わっていたが…。
彼の怒りと野心は、ついに最後の矛先ヘ向かっていた。
『いよいよ豊臣を潰す時』
そう決心した彼は、日本全国に大々的に檄を飛ばしたのである。
「魔物を出したのは石田三成だが、裏で手を引いていたのは豊臣家だ!」
「もちろん証拠はある!(捏造)」
「豊臣家は魔物を呼び出す!放っておけば皆も食われるぞ!」
「今こそ正義の名のもとに豊臣家を成敗するとき!」
前作の関ヶ原を生き残った戦国武将たちは、ついうっかり、それを信じてしまった。
彼らはその目で魔物を見ているのだし、仕方ないのかもしれない。
民衆も『家康さまが言うならそうなんだろう』と思い込む。
こうして、家康率いる戦国武将たちは大坂城へ向けて出陣を始めた!
――――――――――
一方、こちらは豊臣家。
今の大坂城の主は、秀吉の息子である豊臣秀頼。
しかし、それはすでに単なる名目上の当主だった。
事実上、大坂城の最高権力者は大野治長・治房の兄弟だったのである。
殺る気満々の家康たちが攻めてくることを知り、慌てる兄の大野治長だが…。
弟の大野治房は、驚くどころか猛り狂う。
そして、城内に響くほど大声で叫んだ。
「面白い!逆にぶっ殺してくれるわ!家康も爆死させてくれる、秀吉のようにな!」
なんと、前作で秀吉が爆死したのは、実は大野治房の仕業だった。
彼は秀吉を爆死させ亡き者にした。
そしてその後、息子の秀頼を押込め、権力を掌握していたのだ。
兄の治長は『家康と和解をし、機を伺おう』と説得するが、治房は聞く耳持たない。
いや、それどころか――。
「んだとこのクズが!お前のような腰抜けはもう必要ない!死ね!」
と、兄・治長をなんのためらいもなく斬り伏せてしまった。
恐れおののく城中の者をよそに、治房は兄を斬った刀を放り投げる。
そして杖を取り出し、地面に魔法陣を描き始める。
すると――魔法陣から、また新たな魔界の住人が召喚された!
家康は『豊臣家が魔物を呼び出した』と適当に因縁をつけただけだったのだが…。
それは、実は真実だったのである。
三成も利用されていただけだったのだ。
さあ魔法陣から呼び出される魔物たち!
ガーゴイル!
デュラハン!
ゾンビ集団!
ゴブリンの群れ!
これを気味悪がった大坂城の者たちは、当然のごとく全員が徳川方に降ってしまった。
しかしそんなことは一切気にしない治房。
彼はさらに魔法陣を大量に描き、かつて死した英雄たちもこの世に呼び覚ます!!
それは……。
本能寺にて炎の中に消えたはずの織田信長!
身長7メートル、体重は1トンを超える日本史上最大最強の怪物、武蔵坊弁慶!
『鬼道』という魔術を操り、倭国大乱によって女王となった少女、卑弥呼!
そして、前作にて宇宙で散った魔界鮫!!
「さあ行け、魔界の住人どもよ!今こそこの世を闇に染める時だ!」
治房が号令を飛ばすと、一斉に駆けだす魔物たち。
今ここに、徳川軍と豊臣軍の総力決戦が幕を開けたのである!!
そしてそれは――
後の世において『NEO 大坂の陣』と呼ばれる、戦国時代最後の戦いであった。
――――――――――
さあ、大坂城にて両軍が激突する。
攻防は一進一退のようだ。
「うおおお!!この戦、我が命に懸けてお味方を勝利に導くぞ!」
一跳びで20mは飛びあがり、ガーゴイルと空中戦を繰り広げる本多忠朝!
「なんじゃあこりゃあああ!!!」
『鬼道』卑弥呼の巨大ビームにて一瞬で焼き払われる飯野義正!
「こんなイカレた戦いに敵も味方もあるかァ!俺達の目の前に立つ奴は全員ぶっ飛ばせ!」
敵のゴブリンの群れと、味方の神保隊をまとめて音速で跳ね飛ばす伊達政宗!
またも繰り広げられる理解不能な戦い!
――――――――――
……そんな中、総大将のくせに突撃した命知らずの徳川家康。
彼は、鍛え上げられた鋼の肉体と、自らが調合した薬で半分不死身の命となっていた。
ゾンビの群れを次々と斬り倒し、ついに大坂城前まで到達する家康。
そして彼は――かつての知己…織田信長と向かい合っていた。
「老けたな小童。いや、今は大御所、徳川家康殿か」
「信長公、お久しゅうござるな。恐れ多くもまたお命頂戴いたしまするぞ」
不敵に笑う信長と、真剣な顔で呟く家康。
そう、かつて明智光秀をそそのかし、『本能寺の変』を起こしたのは――家康だったのである。
――――――――――
一方、こちらは大坂城南の戦場!
ここが最大の激戦区となっていた!
戦場に迫り来る、一万を遥かに超えるゾンビ集団!
そこにヘビーマシンガンやロケットランチャーを撃ち込み続ける細川忠興だが……。
――ついに、彼にも最後の時が訪れる。
武器弾薬が底をついてしまったのだ。
ゆっくりと向かい来る、大量のゾンビたち。
忠興やその配下のみで切り抜けるには……。
その数はあまりにも多すぎた。
「おのれ……ここまでか!」
配下はみな倒れ、忠興もゾンビに囲まれる。
悔しそうに顔を伏せる忠興。
彼は『もはやこれまで、せめて一匹でも多く道連れにしてくれる』と決意するが……。
彼の懐から光が放つものがある。
見るとそれは、妻の形見である十字架だった。
キリシタンではない忠興にも、それだけはやはり手放せなかったのだ。
妻の形見の十字架――忠興はそれを天に掲げて叫んだ。
「伴天連の神よ!我が妻を奪った忌々しい貴様に、この俺が初めてすがってやる!いるのならばせいぜい奇跡とやらを見せてみろ!」
すると、途端に十字架が強く光り――。
刹那、天から聖なる光が降り注いだ!
その光は忠興の周囲にいたゾンビを一斉に焼き尽くす!
そしてそれはそのまま彼方まで届き、ゾンビの群れを完全に浄化させた!
呆然とする忠興だが……。
彼はふと、空を仰ぎ見る。
そこには、光の中に、確かに亡き妻ガラシャの面影があった。
そして――彼に微笑みかけていたのである。
『相変わらずね』と言うように。
「……ふん、なにがガラシャだ、と思っていたが……。今回だけは、その名で呼んでやってもいいかもしれんな」
かつて妻が勝手にキリシタンとなった際の、夫婦の大喧嘩。
思い出される、その懐かしき日々。
忠興は…天を仰いで、かすかに笑った。
――だが。
忠興の視界の先に、何か動くものが見える。
『まだ誰か残っていたのか』と彼はそちらを見据えるが……。
「…うっ!」
思わず、忠興が声を上げる。
そう、敵はまだ残っていた。
一体だけ。
だがそれは――明らかな異形の存在であった。
それは、西洋の鎧に身を包んだ騎士。
だが、異様なのはその者の首から上。
彼には首がなかった。
首なしでその者は動いていた。
いや、よく見ると首はあるのだ。
決してあってはいけない場所に、だが。
その者は、己の左手で己の首を持っていた。
まるで、大将首を運ぶように。
右手に巨大な西洋剣。左手には己の首。
ゾンビの集団を率いる、豊臣軍大将の一人。
首なし騎士『デュラハン』――それがその者の名であった。
「馬鹿な…伴天連の光でも、奴は死ななかったというのか…」
しばし呆然とする忠興だが……。
しかし、瞬時に忠興にある感情が沸いてきた。
それはすなわち『怒り』。
あいつがまだ存在するのならば――
なんのために自分は、頼りたくもない神に頼ったのか。
妻を惑わせた神にすがったのか。
そして――なんのために妻は奇跡を起こして己を救ってくれたのか。
抑えきれない怒りを発露し、忠興が天を仰ぐ。
「……妻よ。いや、ガラシャよ。今回だけはそう呼んでやる」
忠興は立ち上がる。デュラハンを見据えながら。
「俺はキリシタンではない、そちらへは逝けん。だが……」
そして、己の最後の『切り札』を用いるべく……。
彼は雄たけびをあげながら、デュラハンに向けて走っていく。
『切り札』……。
それは、彼の師である千利休が、最後に残した最終決戦用奥義。
その名を『命』。
秀吉に逆らい非業の爆死を遂げた彼が、忠興にのみ遺した技なのだ。
忠興はデュラハンに接近し、それを使うべく具足の肩紐に手を掛ける。
デュラハンは右手の西洋剣を振り下ろすが――
それよりわずかに先、忠興の動きが勝った。
「我が名を誇れ!我こそは細川忠興!散るべきは今ぞ!」
具足に仕込まれていた、十数個の特製の火炎手榴弾。
忠興の最後の動きで、一斉にそのピンが外される。
そして、デュラハンの剣が忠興を斬り捨てた後……すぐに大爆発が起こった。
炎は戦場に広がる。
それはしばらく燃え続け、すべてを焼き尽くした後――。
デュラハンも、忠興も……何も残さず消えていった。
――しかし、『NEO 大坂の陣』は……まだ終わらない!




