第98話 昔を振り返って
頑丈な車に揺らされながら、僕たちは目的の場補まで向かっている。普段なら乗組員三人ぐらいなのだが、今回は特別、僕を含めて戦闘員は5人、そして今回サポートしてくれるカラスマ君の計6人だ。こんなに大人数で向かうのは初めてだ。ただ今回B班の2人は見学扱いなので、実際に動けるのは4人。ゼノが現れた際は、僕達A班の3人で対処しなければならない。カラスマ君含む3人を守りながらの戦闘になるだろうが、僕達3人がいれば何とかなると思っている。
数か月前ならこんな強気になれてなかっただろうな……
「ミナさん達は今回の事件現場に一度行ったことあるんだよね?」
「はい、私とユミさん、カンダさんの3人で向かいました」
「そうそう、だから私たちが選ばれたのもあるんでしょうけど……まさか、B班の2人も同行することになるとはね……、経験させたい気持ちもわかるけど……」
ハイノメは少し心配そうな顔色を浮かべた。そんな彼女の顔を見たエマストロークが、少し不慣れな日本語で申し訳ございませんと謝った。
「あ、ごめんね! エマが謝らなくていいのよ! 問題なのは上の連中だから。全く、犠牲者も出ている危険な案件なのに新人2人も行かせるなんて! まあ、追加のショウも来てくれたわけだし大丈夫でしょう」
「僕は追加かよ! まあ、僕とミナさんが入った時より優しくなったんじゃない? あの頃はいきなり行かされたし、なんかもう訓練とかいいから戦場に行ってこいみたいな状況だったわけだし。入って初っ端仕事だった、隅田川でサメのゼノに襲われて死にかけたのが懐かしい……いや、一度死んだのか?」
僕は自分が初めての仕事を思い出していた。普通の人生ならこんなぶっ飛んだエピソード出てこないが、居酒屋で飲んでいるおじさんが、昔悪いことして刑務所入っていたんだよね~みたいなノリで後輩たちに話した。聞いている2人はというと、引いていた。
「ちょっと! 2人ともドン引きしているじゃない!」
「そうですよ! ショウ君! 安心してください! エマさんもヤタさんも私たちが守ります。」
いつの間にか頼もしくなっていたミナさんの姿を見て、改めてこの3人がいれば大丈夫なんだと確信した。ただ、昔のちょっと心配性で自信なさげな彼女の姿が恋しいと感じる……
「すみません。ワタクシ弱くなってました。このお仕事危険が一杯なのに、覚悟を決めて進んだのに……、先輩方の仕事をみて一杯学びます」
エマストロークは、拳に力を込めて覚悟を決めた様だ。
だがもう一人の彼は……
「そそそ、そんな危険な場所に向かうんですか! まだ、初めてなのに…… ああ、どうか死にませんように…… ああ、書類見たときにもっとちゃんと気付くべきだった。おかしいと思ったんだ……。大丈夫だからって、噓じゃん! 絶対裁判してやる! 訴えてやる! ああ……金に目がくらんだ僕がいけなかったんだ。自業自得か……。」
ヤタ君はもう退職しそう……
「だ、大丈夫だよ! 絶対僕たちが守るから、危険なことはさせないし」
何度声をかけても聞く耳持たずだった。
完全に僕のせいだこれ
「あの~ちなみに俺の事も助けてくださいね」
運転中のカラスマ君が僕たちに問いかけた。それにハイノメが辛口で答える。
「自分の身は自分で守りなさい!」
「アハハ……お厳しい……」
「冗談よ! アンタの事も守ってあげるわ!」
「ハ、ハイノメさん……」
「ちょっと! ちゃんと前向いて運転しなさい!」




