第96話 アブソル見てーな女
「さ、最後! さあ出て頂戴、トリはこの子!」
ヒカルさんが使用人を呼ぶように、手をパンパンと叩いたと同時に、強い風が部屋に吹いた。
「なんだ!? 部屋に風が……」
風が止むと僕達の目の前に背の高い女性が立っていた。
彼女は女優顔負けのスタイルを持ち、顔立ちも宝石の様に綺麗な人だ。くせっけ1つない銀色の髪をなびかせる仕草は、芸術作品として完璧だと思ってしまった。1つ気になる点があるとすれば、右の頭にナイフのような角が生えていることだ。何もしなくても一枚の絵画の様に美しい彼女は、ゆっくりと唇を開いた。
「初めまして、 キツメワルワーラ です。日本人とロシア人のハーフです。あ、バーバラじゃないですよ。よく間違えられるのでお先にお伝えしますね」
良かった……まともな人だ!
しかし、僕の思い……いや、僕の願いはこの後、ボロボロに打ち砕かれることになってしまった。
彼女はゆっくりと何故か僕の目の前に来て、舐めまわすように足から頭まで、新鮮な魚かどうか見定めている主婦の目つきで僕のことを見ている。
「あ、あの~」
僕は照れながら彼女に訳を聞こうとした。
ミナさんから殺気が出ていることに気付かない程、僕自身悪くない気分だった。
「ちょっとアナタ! ショウ君に何か用があるのですか? ちょっと長くないですか? 離れてください!」
怒りのこもったミナさんの言葉によって僕は我に返ることが出来た。
「ま、まあ……落ち着こうミナ!」
ハイノメがミナさんを落ち着かせようとする。
「そ、そうですよ! 彼女は特に何もしていないですし」
僕もその波に乗っかろうとする。
「ショウ君は黙ってて!」
「はい……」
「これはすみません。この方の噂はお聞きしていたので……。このお方、物凄い再生能力をお持ち何でしょう? だから私に相応しいかどうか見ていたんです。でも、見ても分からないですね。試しに切っても宜しいでしょうか?」
はい?
僕には彼女の言っていることが全く分からなかった。
初対面の人に対して言うセリフじゃない……
「ああ、興奮してきました♡ 早く二人っきりになりましょう♡ 切って犯して、お互いに愛し合うんです♡ 貴方となら最後までイケそうなんです♡ あ、濡れてきた……」
ヤバい
対策課に入って一番ヤバい奴が来た。
さっきまでムスッと怒っていたミナさんも、ゴミを見る目で彼女の事を見始めた。
「ハア~、もうしょうがないわね……これ使いたくないんだけど……」
「っんお゛っっぎもぢいぃぃ」
ヒカルさんはやれやれと、手に持ったリモコンをポチっと押した。すると興奮している彼女に電撃でも流れたのだろう。彼女の身体は震えてしばらくしたら大人しくなった。とんでもない台詞を放って……。
もしかしてこのチョーカーからでているのか?
ワルワーラの首元に花模様の入ったチョーカーが付けられているのが分かった。彼女がこのように暴れ出した時、止めるための首輪なんだろう。とにかくアオバサユリに似た狂気を感じた。
「ごめんなさいね……彼女、結構問題があってね。ドSでドМなの まあ、手のかかる子達かもしれないけど、皆いい子達だから仲良くして頂戴ね。勿論私の事もね♡」
今回の事で分かったことは1つ、この班異色すぎる。
「いや~ワルワーラさん、やばい人だね! 話には聞いていたけど、見れば見るほどポケモンのアブソルみたいな人だね。この綺麗な銀髪が白だったらアブソルの擬人化だよ!」
キラさんは相変わらずアニメキャラに例えてきた。B班の人たちにとってはいつも通りなのか、特におどろいたり、引いたりする人はいなかった。僕達A班の3人はどうすればいいのか分からず、只々その場に立ち止まるしかなかった。




